常に自分の位置情報を誰かが見ている――そんなアプリが今、高校生の間で流行っています。アプリの名前は「Zenly(ゼンリー)」。フランスのZenly社が2015年に開発したアプリで、「JC・JK流行語大賞2018」(株式会社AMF)では、アプリ部門の第3位に「Zenly」がランクイン。執筆時点ではApp Storeの無料ランキングで19位に入っている人気アプリです。
Zenlyのおもな機能は、つながっている人と常に位置情報を共有し合うことです。アプリを開くと友人の現在位置が地図上に表示され、どこに何時間いるのかわかるのです。「〇〇は今バイト中なんだ」「〇〇と〇〇は2時間前からカラオケしてる」といったことが公開され続けています。
自分の居場所も常に公開されます。スマホの電池残量、移動速度もわかるため、「スマホのバッテリーが切れちゃった」「電車乗ってて電話出られなかった」などという言い訳もできません。たかが現在地の共有と思うなかれ、居場所や滞在時間によりお互いの生活が丸見えになってしまうのです。
Zenlyが使われ始めたころ、さすがにこれは一部の流行に留まるのではないかと思ったのですが、それは私の見込み違いでした。流行は高校生を中心に広がり続けています。高校生は地元が一緒でも別の高校に通っているケースが多いため、「Zenly見たら同じくらいに駅に着きそうだったからお茶したよ」というエピソードも聞かれました。
また、「みんなで遊んで解散した後、AくんとBちゃんはまだ一緒にいたんだよね。あれは付き合ってるよね」なんて、恋愛がバレてしまった話も。Zenlyは居場所を隠すこともできるのですが、隠していることが周囲に知られる仕組みになっています。友人とつながったが最後、ずっとお互いを監視し合えるアプリといっても過言ではないのです。
なぜ高校生は、Zenlyでつながることに抵抗を感じないのでしょうか。彼ら彼女らはすでに、常につながり合っているからです。
LINE、Twitter、Instagramでお互いの動向を常にシェアしている高校生は、今さらZenlyで位置情報を共有したところで、それほど大きな違いはありません。むしろ、「今どこにいるの?」と尋ねる必要もなくなります。「家にいるみたいだから、LINE通話できるかな。聞いてみよう」という使い方もできます。
スマホの普及でしっかりと時間や場所を決めて待ち合わせする人が減りましたが、Zenlyならさらに調整する必要もありません。特に文章で連絡し合わなくても、正確にお互いの居場所を共有できるからです。
もちろん、「Zenly入れる人の気がしれない」と考える高校生も数多くいます。自分のプライベートを大切にしたい、つながりっぱなしは疲れるなどの理由です。大人なら、こちら側の意見はよくわかりますよね。むしろ、ストーキングの心配やいじめに利用されるなど、リスクが頭に浮かぶ人も多いかと思います。
高校生は友達限定だからと安心しているのかもしれませんが、人間関係は変化するもの。もしかすると、これからトラブル事例が増えていくのかもしれません。保護者の方は、位置情報を公開するリスクについて話してあげてくださいね。
著者プロフィール
鈴木朋子
ITライター・スマホ安全アドバイザー。SNSやスマホなど、身近なITに関する記事を執筆。10代のスマホカルチャーに詳しく、女子高生とプリクラにも出かける。趣味はへんてこかわいいiPhoneケース集め。著書は「親子で学ぶスマホとネットを安心に使う本」(技術評論社)など20冊を超える。