SNSといえば「映える」場所での写真や、「盛れている」自撮りを投稿するもの――そんな印象がいよいよ覆りそうなSNSが登場しました。「BeReal(ビリール)」です。
BeRealはフランスで開発され、2020年にリリースしたアプリです。公式アナウンスでは、2022年にはデイリーアクティブユーザーが2,000万を超えたと発表されています。フランスやアメリカの大学生を中心に人気に火が付き、世界でも若者から注目を集めているSNSです。
日本では、App Storeのソーシャルネットワーキングカテゴリーの無料ランキングで第1位(11月8日時点)という人気ぶり。また、LINEリサーチが2023年10月26日に発表した若年流行調査によると、「今後(いまよりも)流行りそうなSNS」の4位にBeRealがランクインしています。1位~3位が主要SNSというランキングで大健闘です。
BeRealの公式サイトには、「あなたは世界で一番リアルな人間ですか」と書かれています。若者に人気のBeRealとは、いったいどんなアプリなのでしょうか。
通知が来たら2分以内に前後カメラの同時撮影で投稿
BeRealのコンセプトは、その名の通りリアルを共有すること。真実の姿だけが投稿されるように、様々な制限があります。BeRealへの投稿は一般的なSNSと異なり、1日1回だけ。しかも、通知が来たときに行います。通知が来る時間はランダムで、早朝のときもあれば、夕方のときもあります。
ユーザーは通知が来ると、2分以内にスマホのカメラで撮影しなければなりません。投稿するまで「友達」の投稿は見られません。2分を過ぎても投稿はできますが、2分以内に投稿すると複数の画像を投稿できるようになります。通知から遅れた時間や投稿後の撮り直し(1回のみ)も投稿に明示されます。
投稿できるのは、アプリのカメラで撮影した画像のみ。写真補正アプリで美化した写真など、スマホに保存している写真は投稿できません。そして特徴的なのは、前後カメラで同時撮影した画像であることです。自分の自撮りと自分の目の前にある風景を1枚の画像に収めます。
いつ通知が来るのかわからない、通知が来たら2分以内、そして前後カメラで撮影するため自分も背景も盛れない――。この制限がゲーミフィケーションとなり、BeRealの面白さを生み出しているのです。
若者がBeRealに夢中になる理由
BeRealは、自分の好きな時間に投稿できない仕様ということもあって、時間に融通がきいて多くスマホを使いやすい大学生に使われ始めました。現在は中高生にも人気が広がっています。
その理由は、前述したゲーミフィケーション性の高さ、そして盛ることに飽きた若者の気持ちをつかんだことではないでしょうか。
ある大学生は、「通知が来ると、周囲が一斉にざわつく」と話してくれました。BeRealをしている人たち全員が、2分以内に撮影を始めます。ある人はトイレの天井と床、ある人はベッドの中など、通常ならSNSには投稿しない画像がシェアされていきます。自宅の様子やバイト先の控え室など、相手が普段過ごしている場所も。誰も加工できないため、ありのままを共有するしかなく、「BeRealだからいいよね」と気楽に向き合えます。
とはいえ、本当に見せたくない状況のときもあるでしょう。早朝のBeRealでは、天井と床を投稿する人が多いそうです。とりあえず2分以内に投稿すれば、ほかのユーザーの投稿は見られますし、後で追加投稿する権利をもらえます。
たとえば今日はテーマパークへ行く予定があるのに、早朝に通知が来てしまうときもあります。テーマパークの写真をBeRealに投稿したいと思っていても、これでは投稿できません。そんなときも通知から2分以内に取り急ぎ何かを投稿し、とっておきの瞬間も投稿できるようにしておくのです。通知が夜中に来た、もしくは事情があって2分以内に投稿できなかったら、悔しくてもあきらめるしかありません。また明日チャレンジです。
誰かの投稿をスクショ(スクリーンショット)すると、スクショされた回数が表示され、誰がスクショしたのかも本人にわかります。SNSでは、誰かの投稿をスクショして他のSNSに拡散したり、スクショを見て陰口を言ったりしがちですが、それもできません。お互いに信頼し合った「友達」とだけ投稿を共有できます。「友達の友達」にも公開範囲を広げられるようになりましたが、親しい友人以外とBeRealを楽しみたい人はそれほど多くないかもしれません。
「RealMoji」という、顔写真でスタンプを作る機能も人気です。一般的なSNSにあるように、BeRealにも「いいね」「すごいね」などを表現するスタンプが用意されていて、友達の投稿にリアクションできます。
でも、スタンプはイラストなどではなく、自分で撮影して作ります。自撮りで「いいね」という顔をしたり、驚きなどを表現したりする写真を撮影してスタンプを作成し、相手の投稿に付けるのです。これも抵抗を感じるかもしれませんが、送られたほうはうれしいもの。本当に相対しているような気持ちになれます。RealMojiには、「Instant RealMoji」という機能もあり、これはその投稿のためだけに作られるスタンプです。「自分のためだけに作ってくれた」というのもうれしいですよね。
BeRealで注意したいのは?
リアルを共有するとなると、プライバシーの面で心配する人もいるでしょう。確かに、普段は撮らない自宅を撮影したり、映ってはいけない個人情報が映り込んだりする可能性があります。また、位置情報を設定できるので、居場所を知られるかもしれません。
そこで、BeRealを使う際の注意点をまとめます。
- 親しい友人とだけつながる(「友達の友達」は使わない)
- 個人情報が映り込んでいないか確認する(インカメラで撮影した画像をタップするとアウトカメラで撮影した画像と入れ替わるので、投稿前に画像を拡大して確認できます)
- 位置情報をオフにする(投稿画面でオフにできます)
- RealMojiに個人情報を入れない(友達以外のユーザーからも見られるため)
もしお子さんがBeRealを使いたいと言ったときは、上記の項目を約束しておくといいでしょう。
従来のSNSにはなかった楽しみ方ができる「BeReal」、大人にはハードルが高く感じられますが、ごく親しい人とだけ試してみるとより親密になれるかも。「今日は何時に(通知が)来るんだろう」というドキドキ感も楽しいもの。毎日に刺激が欲しい人にもおすすめです。