中国聯通(チャイナ・ユニコム)は3月18日にLTEサービスを開始した。これで中国では2013年12月にサービスを始めた中国移動(チャイナ・モバイル)、そして中国電信(チャイナ・テレコム)と合わせて3つの全通信事業者がLTEサービスで競争を行う「4G時代」を迎えたことになる。
TD-LTEとFDD-LTEのはざまに揺れる中国聯通
中国聯通のLTEサービスは「4G・Wo」のブランドで展開される。「Wo」は同社の3Gサービスのブランド名で、LTEサービスはそれに4Gの名を付与したものとなった。通信方式はTD-LTEで、国内25都市での先行サービスとなる。端末はスマートフォン4機種とデータ端末(USBモデム、WiFiルーター)2機種。スマートフォンはSonyのXperia Z1やSamsungのGALAXY S4/同Note 3そしてHTC Oneと、ハイエンド製品が揃っている。中国でここ数年流行りの低価格な「1000元スマートフォン」と呼ばれる2万円台のミッドレンジ製品の投入はサービス開始当初は見送られた。
中国では国策から4Gの免許は3社にまずTD-LTE方式が交付された。だが3Gで国際標準ともいえるW-CDMA方式を提供する中国聯通と、同じくCDMA2000方式を提供する中国電信は海外でも広く普及が進むFDD-LTE方式を4Gの主力方式として国内で展開する目論見だった。いずれは中国政府もFDD-LTE方式の免許を追って交付すると言われているが、この両者はまずはTD-LTEでの全国展開を図ることになった。
中国聯通は5月17日の「世界電信の日」までには56都市へ、今年年末には300都市へとLTEのサービスエリアを広げる予定だが、LTEの通信方式については言及していない。同社の上層部の関係者も「主力方式はFDD-LTE」と公言しており、ネットワークはTD-LTE/FDD-LTEデュアル対応のものを導入することでFDD-LTE免許交付に備えると見られている。
もう1社のFDD-LTE推進派の中国電信はTD-LTEを限定的なサービスとして展開している。今年2014年2月15日にTD-LTEを開始した同社は端末としてUSBモデムとWiFiルーターのみを販売している。同社はTD-LTEをモバイルブロードバンド回線として提供しており、スマートフォンはFDD-LTEの免許交付後に本格投入する予定だ。
FDD-LTEとCDMA2000に対応したスマートフォンは韓国やアメリカで多数販売されていることから導入がしやすいが、TD-LTEとCDMA2000対応のものは数が少ない。TD-LTEは国策に従い導入したに過ぎず、LTEの本格展開はFDD-LTEの免許が下りてからという考えなのである。とはいえ同じ考えと見られていた中国聯通が、TD-LTEのサービス開始と同時にスマートフォンも投入したことから中国電信もTD-LTEスマートフォンを早い時期に投入する可能性も出てきている。
中国移動は2Gから4Gへの移転を見込む
3GとLTEの融合を考えるこれら2社に対し、世界最大の契約数を誇る中国最大の通信事業者、中国移動は国策をバックにTD-LTEを大きく推進している。3G方式では中国独自のTD-SCDMAの普及を図り、国内では一定の加入者数を獲得するも国外への展開は失敗に終わっただけに、TD-LTEサービスでは海外との互換性を重視した戦略をとっている。同社の端末は上位モデルを中心にTD-LTEに加えFDD-LTEにも対応、さらにはTD-SCDMA、W-CDMA、GSMと5つのモードに対応し海外でのローミング利用も可能だ。
そしてスマートフォンのラインナップもiPhoneを初めとするハイエンド品だけではなく、1000元台(約1万7000円)の低価格なものもサービス開始当初から用意している。珍しいところではディズニーとコラボしたディズニーモバイル端末も投入しており、LTEサービスのターゲット層を広げている。中国移動の総加入者数は2013年末時点で7憶6720万に達しているが、そのうち3G加入者数は1憶9120万と全体の1/4に過ぎない。豊富な4G端末を投入することで、2Gの利用者が3Gを飛び越え一気に4Gへと移行することを同社は目論んでいるのである。
中国移動が豊富な加入者数を武器にLTE加入者数を増やしていくのか、あるいはFDD-LTE免許交付後に中国聯通と中国電信がグローバルモデルの投入で一気に攻勢をかけていくのか。2014年は中国3事業者のLTE加入者獲得競争が過熱化する1年になりそうだ。