海外の市場調査会社Gartnerが発表した2011年1月から3月(第1四半期)の端末メーカーの販売台数の結果は、業界の勢力が大きく変わったことを感じさせるものだった。スマートフォンブーム、新興勢力の台頭など各社の現状をその調査結果から見てみよう。
Nokia、ついにシェア3割を切る
世界のトップシェアメーカーとして長らく君臨していたNokiaだが、今年第1四半期の販売結果は散々なものとなってしまった。販売台数は前年同期比でマイナス、マーケットシェアは実に1997年以来最低となる25.1%にまで落ち込んだ。年間販売台数が4億台を超えるNokiaにとって、このシェアの下落は大きな意味となる。時にはシェア40%近くまで市場を独占していたNokiaは今、大きな危機を迎えている。
シェア2位で追いかけるSamsungは前年同期の18%から16.1%にシェアを下落させたものの、販売台数は388万台の増加。Samsungは昨年後半からスマートフォンを強化しており、さらにはデュアルSIM端末や独自OSのWaveなど自社の特徴を生かした製品が増えているのも強い。Nokiaとのマーケットシェアの差は10%を切ったものの、販売台数の差は未だに約4000万台。SamsungがNokiaを抜くにはまだ時間がかかりそうだが、業界の勢力図は「Nokiaのダントツ1位」から「Nokia、Samsungのトップ2社グループ」へと変わりつつある。
Apple倍増、HTCは3倍に
スマートフォンは日本でもようやく本格的に製品の数が増えてきたが、海外市場では今や毎月複数機種が各メーカーから登場するほどの一大ブームになっている。Appleは販売台数1688万台で前年同期から倍増、シェアも4位にまで上り詰めた。またライバルが多数存在し、Appleのように通信事業者との密接な販売スタイルを確立していないHTCが931万台を販売、前年同期から2.7倍も数を増やしたことも大きなトピックだ。HTCのシェアはついにMotorola、Sony Ericssonを抜いて6位。スマートフォンだけでここまでシェアを伸ばした両社の動きは、世界中の消費者がスマートフォンへの乗換えを着々と進めている現れそのものなのだ。
一方でLG、Motorola、Sony Ericssonは前年同期比でマイナス成長となったものの、各社はスマートフォンのラインナップを強化しており、販売台数という数字よりも利益率の向上へと今後視野を向けていくだろう。LGはまだシェア3位の位置を維持しているものの、2位のSamsungとの差は開く一方、4位のAppleとの差は急激に縮まりつつある。だがLGにしろAppleにしろ、各社が恐れなくてはならないのはNokiaやSamsungといった上位メーカーではないのである。
中国勢の躍進は止まらない
シェア10以内の企業の顔ぶれは、多少の順位の変動があれどここのところほぼ固定となっている。そして気がつけばZTEとHuaweiの中国勢はもはや10位以内の常連組だ。この2社を合わせれば第1四半期の販売台数は1683万台でほぼAppleに肩を並べる。両社はこれまでデータ通信モデムや新興市場向けのエントリーモデルを得意としていたが、これからはスマートフォンにも注力するとアナウンスしており、特に低価格スマートフォンは両社の得意分野だ。
また「その他大勢」の販売台数がNokiaを抜き去り、マーケットシェアも36%となったが、この中にはG'Fiveなど新興市場向けの製品を得意とする中国系メーカーも多い。中国は今、国内メーカー乱立により海外進出を本格化する中小メーカーが増えている。また製品の低価格化も限界まで近づいていることから各社はスマートフォンの開発を急いでいる。中国のメーカーがこぞってスマートフォンに注力をはじめたことは、大手メーカーの今の勢いに少なからず影響を与える存在にもなっていくはずだ。
日本メーカーが戦える土壌に
このようにNokiaの独擅場とも言えた市場構造が大きく変わったことで、新規参入メーカーの製品も消費者に受け入れられやすい状況になってきている。例えばDELLやAcerは以前まではパソコンメーカーとしてしか知られていなかったが、今では両社のスマートフォンも人気の製品になっている。
日本メーカーの携帯電話も海外市場では製品そのもの出来以前にブランド力が無いことから苦戦を強いられてきた。だが多数のメーカーが乱立する時代になれば、消費者はメーカー名の先入観無しにデザインや機能など製品本来の魅力を購入時の判断基準にしてくだろう。日本メーカーの海外再進出は、今こそがいいタイミングと言えるかもしれない。