7月23日、香港でもAppleのiPadの販売がはじまった。香港で販売される携帯電話はSIMロックフリーだが、iPadも同様にSIMロックが無く、また一般家電店で単体販売されるのが特徴だ。
家電量販店で単体購入が可能
香港で発売がはじまったiPadは日本や他国同様、Wi-Fi版とWi-Fi+3G版の2種類で、SIMロックは無く単体販売となった。販路はAppleの正規代理店で、これには市中に多数店舗を構えている大手家電量販店も含まれている。また香港には実店舗としてのAppleストアは無いものの、Apple製品を取り扱う「Apple専門代理店」が多数存在しておりそちらでの購入も可能だ。一方これまでiPhoneを扱ってきた通信事業者の店舗ではiPadの販売は行わない。すなわち香港で販売されるiPadは単体で購入できる「一般家電製品」として取り扱われているのだ。日本では通信機能を内蔵したiPadは「携帯電話と同じカテゴリの製品」という位置づけだが、香港ではノートPCやネットブックのような「情報家電製品」として販売されているのである。
香港版iPadの価格は16GBのWi-Fi版 HK$3888(約43800円)から64GBのWi-Fi+3G版のHK$6488(約73000円)まで6タイプ、これはアメリカでの単体価格とほぼ同等である。だが香港でのiPad販売方法の最大の特徴は3G版の製品であっても利用する通信事業者は自由であることだ。例えばアメリカのAppleストアオンラインではAT&Tの料金プランが提示されているが、香港のAppleストアオンラインでも同様に通信事業者2社のiPad料金プランWebページへのリンクが張られている。だが香港では他の通信事業者もiPad向けのマイクロSIMカードと料金プランを出しており、特定の通信事業者以外での利用も当然可能なのである。
もちろん香港で外国人がiPadを購入し、香港以外のSIMカードを利用することもできる。購入時に通信事業者との契約や身分証明書の提示などの手続きは一切不要であり、日本人が香港へ海外旅行や出張で立ち寄ったついでに購入することも可能だ。ただし発売日は香港の各販売店舗でも即日完売するほどの人気商品となっており、夏休みの香港旅行中に香港版iPadの購入買ってみようか、と考えている方は販売店舗での在庫には気をつけて欲しい。
iPhoneの販売方式にも影響を与えるか
このように単体で販売される香港のiPadは、メーカーが直接販売するSIMロックフリーの携帯電話と全く同じ扱いをされている。香港ではNokia、Samsung、LG、HTCなど携帯電話メーカーは通信事業者経由だけではなく、家電量販店でも端末を単体で販売している。通信事業者での購入と家電店での購入の差は、通信事業者で契約と同時に購入した際は端末の割引が受けられることのみだ。しかも通信事業者と契約と同時に購入したとしても端末にSIMロックはかけられていない。そのため通信事業者は固定契約期間中の途中解約違約金を端末の定価相当とすることなどで、安価に購入して即解約して転売されることを防止する対策を採っている。
通信事業者がSIMロックフリーのメーカー端末をそのまま販売するのは、通信事業者のサービスと端末のハードウェアが分離されているからである。香港やアジア、ヨーロッパなど海外ほぼ全てのGSM/W-CDMA採用通信事業者はメーカー端末に自社サービスをソフトウェアで搭載して提供している。特定の通信事業者でしか利用できない「専用端末」はわずかしか存在しないのだ。ましてやiPad、そしてiPhoneは通信事業者向けの製品ではなく、むしろAppleのサービスを十二分に活用するための端末である。そのためiPad、iPhoneは本来、どの通信事業者であっても自由に利用できる製品なのだ。
イギリスでは全通信事業者がiPad対応のマイクロSIMカードとデータプランを提供しているように、iPadはもはや「特定の通信事業者が販売する端末」として販売する意味は薄くなっている。今後この販売形態がiPhoneにも広がり、SIMロックフリーのiPhoneがAppleからダイレクトに購入できるようになるのだろうか? iPadの売れ行きが次のiPhoneの販売方法に影響を与える可能性は十分あるだろう。