EV(電気自動車)の普及により、自動車市場でも中国メーカーの存在感が高まっています。中国・広州で行われた広州国際モーターショーはそんな中国メーカーの勢いが感じられる展示会でした。日本やヨーロッパのメーカー以上に中国メーカーの出展が多数を占めていたのです。
広州国際モーターショーは自動車の展示会ですが、スマートフォンメーカーの存在も光っていました。たとえばシャオミは今年4月にEV市場に参入しましたが、スポーツカータイプの「SU7 Ultra」も投入して市場拡大を狙います。実際に走行レースに使われたSU7 Ultraのプロトタイプと、市販されるモデルのSU7 Ultraの2車種を展示。ブースは常に入場制限をするほどの人気でした。
突如シャオミのCEOのレイ・ジュン氏が現われ、ブース内がパニックになるほど盛り上がるシーンもありました。自動車の展示会にスマートフォンメーカーが出展し、販売からまだ1年経っていないモデルや新製品を展示、大きな注目を集めるというのも中国EV市場の動きの速さを物語っているようです。
スマートフォンメーカーの自動車参入はシャオミより先にファーウェイが進めています。ファーウェイは自社でEVを作るのではなく自動車メーカーと協業し、EVのプラットフォームや車内システムを提供しています。とくにカーナビや地図検索、動画再生やアプリの利用といったインフォテイメント分野では自社スマートフォンに搭載しているHarmonyOSを自動車にも装備。このOSの採用を他社に広げるためHIMA(Harmony Intelligent Mobility Alliance)を設立し、複数のメーカーが採用するという展開になっています。広州モーターショーでもファーウェイではなくHIMAブースとして出展しました。
自動車がメインですが、ブースの奥にはファーウェイのスマートフォンも。話題の3つ折りスマートフォン「Mate XT Ultimate Design」も展示されており、来場者に人気でした。まさか自動車の展示会で3つ折りスマートフォンを見られるとは多くの人が思っていなかったでしょう。
ファーウェイとSeresの合弁メーカー、AITOのEV車内で実際にHarmonyOSの操作を体験。スマートフォンと変わらないユーザーインターフェースは使いやすく、かかってきたビデオ電話を車内のディスプレイとスマートフォンのディスプレイとの間で表示を切り替えられるなど、シームレスな連携も可能です。
自動車にHarmonyOS搭載のメリットは、同OSで動く家電などもシームレスに接続できること。会場にはHARORIというメーカーが車内の香りをカートリッジ式の芳香剤でコントロールするシステムを展示。HarmonyOSで動作するため、HIMA傘下メーカーの自動車でもそのまま使うことができます。
スマートフォンメーカーの自動車産業での動きはこの2社が活発ですが、他のメーカーも注目です。中国大手自動車メーカーのGeelyはスマートフォンメーカーのMeizuを傘下に収め、MeizuのスマートフォンOSを自動車向けに「Flyme Auto」として採用しています。
Geelyの次世代車内システムはダッシュボードのディスプレイを運転席の前から助手席前まで横に長い1枚のパネルに統合し、3分割にして「運転情報」「ナビ」「エンタメ」として使ったり、あるいは長い1枚の大型パネルとして一体化表示するなど様々な表示に対応する予定です。このようなコントロールを行うとなるとスマートフォンのようなOSの採用が必要になるわけです。
車内にAIアシスタントを搭載し、チャットボットも使えるなどAI機能を充実させたNIOの自動車も展示。
Xiaopengは自社で開発中のAIチップも展示。モーターショーというと華やかな新車を綺麗なコンパニオンの女性が紹介するというイメージがありますが、広州ではそこまで派手な演出は無く、着々と進むEVのスマート化が目立っていました。
最後にオマケを。中国も製品のマーケティングにはインフルエンサーを起用しますが、その手法はライブ配信です。日本や他国のようにYouTuberやインスタを使った動画ではなく、その場で視聴者と対話しながら動画を流すライブ配信が主流です。見ているとメーカーのスタッフも公式のライブ配信を行っており、視聴者からの「その車の座席をもっと見せてほしい」といったリクエストに応えていました。このような様子を見られるのも海外の展示会の面白いところですね。