今年も品切れが相次ぎ出だし好調のiPhone 15ですが、中国ではそれを上回る人気のスマートフォンがあるといいます。ファーウェイが8月末から順次販売を開始したMate 60です。一番売れているモデルはiPhone以上の販売数で、中国国内でも予約を受け付けられないほど人気になっているとのこと。実際に中国・深センのファーウェイのフラッグシップストアでその人気ぶりを見てきました。

  • 深センにあるファーウェイのフラッグシップストア

2023年10月某日、平日昼間にファーウェイストアを訪れましたが来客数は結構多く、店内はMate 60シリーズ全機種を大々的に並べて自由に触れるように展示されていました。来客者もほとんどがMate 60を触っており、確かに注目の製品になっているようです。ちなみに、店の入り口には確かに「Mate 60は予約受付を行っていません」との貼り紙が。

  • Mate 60シリーズを大量に展示。来客も多い

Mate 60シリーズは「Mate 60」「Mate 60 Pro」「Mate 60 Pro+」「Mate 60 RS ULTIMATE DESIGN」の4モデルが販売されています。全モデル共通なのはスマートフォンの心臓かつ頭脳であるチップセットにファーウェイ子会社製のKirinチップを使っていること。ちなみにチップセットのモデル名は非公開です。さらに通信方式も非公開。アメリカ政府による制裁の影響なのでしょうが、車でいえば「エンジンも最高速度も燃費もわからない」状態で販売されているのです。それにも関わらず人気なのは、リークされたチップセット情報によると5Gに対応したハイエンドモデルであり、そして搭載されているカメラも高性能だからでしょう。

  • Mate 60、Mate 60 Pro、Mate 60 Pro+の3モデル

そもそもファーウェイのスマートフォンは日本でも人気でしたし、2019年にはAppleを抜いて出荷台数で世界2位でした。ここ数年ファーウェイのスマートフォンがすっかり影を潜めてしまったのは製品品質に問題があったわけではなく。アメリカの制裁により自由に製品を製造できなくなったからです。そんな状況下で高性能高品質であるファーウェイのフラッグシップクラスのスマートフォンが市場に出てきたのですから、それ飛びつくのは当然のことでしょう。

  • 予約受付も中止となるほど人気が高い

Mate 60シリーズの中でもProモデルはフロントカメラをデュアル仕上げとし、センサーを含めた3つのパンチホールを並べています。iPhoneのように横長の穴にしなかったのはディスプレイの非表示エリアを最小限にするため。iPhoneのダイナミックアイランドは確かに通知時などは便利な機能ですが、普段スマートフォンの画面を見ている分にはむしろ不要なエリアです。3つの孔が並ぶデザインがいいかどうかはさておき、このあたりもMate 60シリーズの一つの特徴になっています。

  • Proモデルはフロントに3つのパンチホール

またMate 60 RS ULTIMATE DESIGNは元々はポルシェデザインとコラボレーションしていた製品の進化モデルです。両者の協業は2022年で終わったようで、最後のコラボモデルは2022年発売の「PORSCHE DESIGN HUAWEI Mate 50 RS」でした。Mate 60でもポルシェデザインの颯爽としたイメージを連想させる、空気が流れるようなデザインは健在で、定価11,999元(約24万6,000円)ながら入荷するや即完売しているそうです。ちなみに海外通販サイトでは3倍の値段で販売しているところもあるそうです。

  • プレミアムモデルのMate 60 RS ULTIMATE DESIGN

実際にMate 60シリーズを触ってみるとカメラの性能は申し分ありません。Mate 60 Pro+は4,800万画素カメラ2つに4,000万画素カメラというぜいたくな仕上げです。そして本体のパフォーマンスも全く不満なくサクサクと動いてくれます。中国国内ですが衛星通信にも対応、バッテリーはProとRSモデルで88Wの急速充電、50Wの無線急速充電にも対応します。5G通信への対応は非公開ですが、おそらく電波の掴みもいいでしょう。

  • 四段階の可変絞りもあるMate 60のカメラ

このMate 60シリーズの人気を見るとファーウェイのスマートフォンも復活したかのように見えますが、搭載されているチップセットは最新技術を使った国産品です。アメリカの制裁を受けてから中国国内のチップセットメーカーが技術を高めたとはいえ、不良品発生率を減らしどれだけ生産数を確保できるかによって、Mate 60シリーズの供給量も決まってきます。現在品薄なのも、人気が高いだけではなくMate 60シリーズの生産量が追いついていないという可能性もあります。

  • 人気に応えられるだけ製品供給できるかが課題だ

また制裁の影響でグローバルモデルにもGoogleサービスの搭載ができず、ファーウェイのスマートフォンは現在は独自開発した「HarmonyOS」を搭載しています。一部のアプリは同OSに対応しているほか、Googleサービスを入れる方法もあるにはあるのですが、iPhoneやAndroidスマートフォンと全く同等にアプリやサービスを使える状況にはなっていません。今後自社開発チップセットの生産に目途が付いたとしても、グローバルで売り込むにはメジャーなSNSやサービスに対応していく必要があるでしょう。まずは中国国内でどこまで成功を収めるか、Mate 60シリーズの販売動向がファーウェイのスマートフォンの今後の鍵を握っていると言えそうです。

  • 独自開発のHarmonyOSを搭載、グローバルでどこまで受け入れられるかが課題