海外旅行時の一番の問題は現地での意思疎通。台北やソウルのように日本語が通じるお店が多くある都市は稀ですし、ローカルな商店へ行った時は現地語や英語を話す必要があります。海外に行くことは無いから外国語は関係ないと思っていても、2020年には東京五輪が開催され世界中から多くの観光客がやってきます。LCCの普及でアジア内の移動も国内感覚となった今、外国語を操る必要は年々増しています。
しかし外国語の問題に悩んでいるのは日本人だけではありません。ということで中国では今、電子翻訳機が次々と登場しています。翻訳言語は英語はもちろんのこと、ほとんどの製品が日本語にも対応しています。日本に訪れる観光客の数を見ると、2018年5月は中国からが66万8,600人でトップ。日本へ旅行に行く中国人が増えれば増えるほど、翻訳機の需要も高まります。中国の空港の書店やIT製品売り場ではいまでは必ず翻訳機が販売されています。
2018年6月に上海で開催されたCES ASIA2018でも、電子翻訳機を展示するメーカーが数多くありました。スティックタイプで手軽に持ち運べるものから、翻訳文章がディスプレイに表示される高性能モデルまで10種類前後の製品を見られきました。しかもいずれも翻訳精度は高く、十分実用性のある製品と感じられました。
中国の検索サイト大手のSogou(捜狗)が出展した「録音翻訳ペン」は高精度なマイクを内蔵したレコーダー兼テキスト化端末です。スマートフォンのマイクよりも音が良く、内蔵の音声認識エンジンにより音声を録音しながら文字に変換してくれます。変換された文字はスマートフォンのアプリの上に表示されるので、そのままコピーすることも可能です。さらには翻訳機能も備えているのです。日本語を含む18カ国語に対応しています。
翻訳はペンに話しかけるだけ。3秒ほどで音声で翻訳された言葉を聞けます。単体で利用するため辞書の容量には制限がありますから、翻訳精度は90%程度とのこと。簡単なあいさつや会話程度ならそれなりの精度で翻訳してくれます。またスマートフォンアプリを使うと、入力した音声と翻訳した文章をテキスト表示してくれます。現時点では英語中国語にしか対応しませんが、今後日本語などにも対応させるそうです。価格は399元(約6,700円)。
一方、AI機能を取り入れるなど最強ともいえる機能を搭載しているのがBabel Technology(分音塔科技)の「AIcorrect Go」。展示されていたのは試作モデルでしたが、翻訳精度も非常に高くカメラを備えるなどまるでスマートフォンのような製品。おそらく中身はAndroidなどスマートフォンOSが動いていると思われます。
対応言語は39カ国語で、本体は基本的にインターネットへ接続されてクラウドのデータを使い電子翻訳を行います。カメラで撮影したメニューの翻訳などもできるそうですが、今回はマイクを使った音声翻訳のみをデモ。実際に展示会場の騒音の大きい場所で1分程度の長文を話してみたところ、かなり精度高く翻訳を行ってくれました。体感的には90-95%の精度で、挨拶だけではなく簡単な商談レベルでも使えそうです。
他にも現地の天気予報やレストラン案内、さらにレストランの評価も教えてくれるなど、翻訳機というよりも海外旅行アシスタントと呼べる製品です。発売時期と価格は未定ですが、ざっくり値段を聞いたところ日本円で3万円から4万円あたりになりそうとのこと。電池の持ちは96時間、連続2.5時間の利用が可能。日本でも販売してほしいものです。
翻訳機の展示ブースを回っていると、スタッフが「試してみませんか」と必ず声をかけてきます。こちらが日本人と伝えるとすぐに中国語・日本語モードに変更して翻訳デモを見せてくれました。翻訳機の使い勝手や制度は実際に利用してみないとわからない部分が多いのですが、どの製品も簡単な会話は十分翻訳できていました。発売前の製品も多く、翻訳機市場へ次々と参入する会社が増えているということなのです。
電子翻訳機がこれから中国で流行になることは、あのシャオミが製品を販売していることからもわかります。シャオミのスマートホーム向けブランド「MiJia(米家)」が5月に発売を開始した翻訳機は価格がわずか249元(約4,200円)。対応言語は14カ国と少なめですが、日本語や韓国語にも対応するので主要な国の訪問には困らないでしょう。スマートフォンの価格破壊を起こしたシャオミが、翻訳機の市場でも低価格機で早くも勝負を挑みます。
これくらい安ければ、お試しで買ってもいいかなと思えますよね。精度が気になるところですが、値段を聞くなど簡単な会話ができれば十分使い物になりそう。1年後には日本を訪れる中国人観光客がみな翻訳機を持っている、なんて時代になっているかもしれません。