携帯各社が5G用の電波免許割り当てを受け、2020年春の商用サービス開始に向けて準備を進めています。しかし、各社が発表した内容を見ると、割り当てられた周波数帯やその数の違いから、戦略にも違いが出てきているようです。楽天モバイルを含めた携帯大手4社は、5Gで何を狙おうとしているのでしょうか。

→過去の回はこちらを参照。

王道のドコモ、地方を狙うKDDI

2019年4月に総務省が5Gの電波免許を携帯電話4社に割り当てを実施し、同年夏から秋にかけて各社が5Gのプレサービスを実施するなど、日本でも2020年春の商用サービス開始に向けた準備は着実に進められています。ですが各社のこれまでの動向を見ると、5Gを活用した戦略にはそれぞれ、各社を取り巻く環境と思惑の違いによって、いくつかの違いも見られるようになってきました。

そうした中でも“王道”というべき戦略を取っているのがNTTドコモです。同社は世界的にも5Gに力を入れてきた企業の1つであり、早い段階から5Gの商用サービス化に向けたサービス開発を進めてきたことから、コンシューマー向けと法人向けの双方をにらんだサービス展開を積極化しています。

特にコンシューマーに向けた、5Gを活用した取り組みとなるのが「マイネットワーク構想」です。これは5Gのスマートフォンをハブとして、ウェアラブルデバイスやxRゴーグル、360度カメラなどといったデバイスをネットワークに接続し、最先端のサービスを提供するというもの。

その取り組みの一環として、NTTドコモは今年4月に、MR(複合現実)技術を手掛けるMagic Leap社と提携し、同社とMRに関するサービス開発を共同で進めるほか、同社のMRゴーグルを日本で提供することも明らかにしています。

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    総務省「地域力強化プラン」より。5Gのほか、AIやIoT技術などを活用したデジタル化によって「Society 5.0」を実現することにより、少子高齢化の加速で地方が抱える社会課題の解決につなげようとしている

また、法人向けに関しては「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」を展開して1000を超えるパートナー企業と5Gのサービス開発を進めており、そうした中から5Gを活用した新しいサービスやソリューション展開を推し進めようとしています。今年9月の5Gプレサービス開始以降、建設や医療などさまざまな分野で、パートナー企業とのサービス展開に向けた準備を進めているようです。

一方、5Gで特徴的な戦略を打ち出しているのがKDDIです。同社は5Gの電波免許獲得に際し、海外と共通性のある有利な周波数帯を多く獲得するべく、免許申請時に5Gの基盤展開率や特定基地局の設置数などで意欲的な計画を申請。その甲斐あって、同社はNTTドコモに並ぶ3つの周波数帯を獲得するに至っています。

意欲的な5Gのエリア整備によって、力を入れようとしているのが地方創生です。同社はすでに63の地方自治体と協定を締結し、5Gを活用した地方の課題解決に向けた取り組みを進めています。優位性のある周波数帯を獲得し、広いエリアでの展開を重視することで、ネットワークインフラで不利な立場に立たされやすい地方での5G活用を推し進め、自治体向けのビジネスに力を入れようとしているのです。

そうした取り組みの1つとしてKDDIは今年11月、シャープなどと共同で北海道新冠郡にてドローンと8Kのライブ映像を活用した、5Gによる軽種馬の育成支援に関する実証実験を実施しています。この実証実験では厩舎に設置した4Kカメラや、ドローンに搭載した8Kカメラなどで仔馬の様子を撮影し、それを5Gで伝送することで、遠方の馬主が仔馬の生育状況をリアルタイム、かつ8Kで細部に至るまで確認できる様子を示していました。

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    KDDIらが北海道新冠郡で実施した、ドローンや8Kカメラ、5Gなどを活用した軽種馬の育成支援に関する実証実験より。5Gの電波で優位性を得たKDDIは、地方創生でのビジネス拡大を重視しているようだ

周波数帯で不利のソフトバンクは大都市を狙う

KDDIと同様、5Gの電波免許が戦略に影響を与えているのがソフトバンクです。同社は免許申請時の5G基盤展開率が、NTTドコモやKDDIより低かったことなどが響いて、希望していた3つの帯域割り当てを受けることができず、2枠の割り当てにとどまっています。

そうしたこともあってか同社は、5Gでも基盤展開率ではなく、従来の「人口カバー率」を重視したインフラ整備を進める方針を示しています。そして大都市圏を中心に人口の多い場所の5Gインフラ充実を図ることによって、力を入れようとしているのは大企業向けの法人ビジネスです。

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    ソフトバンクは5Gで、早期に人口カバー率90%を実現するとしており、都市部を中心とした大企業とのビジネスに主軸を置く方針を示している

ソフトバンクはここ最近、法人向けのソリューションビジネスなどを今後の成長領域として強化を図っており、5Gの導入によって都市や交通などのインフラ関連を中心に、IoTを活用した法人向けソリューションをパートナー企業と進めていく方針を示しています。広いエリアで地方自治体を狙うKDDIとは対照的な戦略といえるでしょう。

では新規参入の楽天モバイルは、5Gでどのような戦略を取ろうとしているのでしょうか。同社は商用サービスを開始したばかりであるものの、インフラ整備の遅れからサービス内容が試験的なものにとどまるなど苦戦が続いており、まだ5Gに関する明確な戦略を打ち出せてはいない状況です。

しかしながら同社は、ネットワーク仮想化やモバイルエッジコンピューティングなど、5Gを意識し当初から新しい技術を導入できることが強みとなっています。楽天モバイルではそうした技術の優位性を生かして、5Gの特徴がより生かせるサービス展開を考えているようで、特に自動運転の実現などには強い意欲を見せています。

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    新規参入の楽天モバイルは、ネットワークに最新技術をいち早く取り入れられることを武器に、低遅延など5Gの特徴を生かしたサービスを重視するものと見られる

同社は当面、大手3社に対抗できるインフラの整備を重視する必要があることから、5Gに関してはその整備が落ち着いたもう少し先の状況を見据えた計画を進めているといえそうです。