飛行機に搭乗した際に、電子機器の利用に制約があるのはすでに広く知られている話だろう。それでも、機内で電子機器を利用していて客室乗務員に注意される人を散見するが、それはともかく。実は、2011年4月からこの件に関するルールが変わったのだが、御存じだろうか。

2011年4月から電子機器を利用可能な時間が増えた

もともと、離陸してベルト着用サインが消えたタイミングから、着陸前に再点灯するタイミングまでの巡航中は、電波を発しないモノに限って電子機器の利用が可能である。しかし従来は、「巡航中以外は使用できない」という規定になっていた。

ところが、「時間が増えた」という書き方が適切かどうかわからないが、機体が地上にある時でも、電子機器の利用が可能なタイミングができた。これは航空法の改正によって実現したものだ。利用の可否を分けるのは、搭乗・降機に使用するドアの開閉である。

まず、離陸前でもドアクローズまでは電子機器を利用できるようになった。一方、着陸後はドアオープン後に電子機器の利用が可能になった。ただし実際には、ドアの開閉をいちいちアナウンスするわけではないので、機内放送で「ここからは電子機器の利用をお控えください」「ここからは電子機器の利用が可能です」と知らせるのが目印である。

機内における電子機器等の取り扱いの変更について(日本航空Webサイト)

搭乗・降機に使用するドアが開いている間は、電波を発しないものであれば、電子機器の利用が可能になった(写真は日本航空のボーイング787)

ただし、離着陸時にすべての電子機器を利用できないのは、法改正前と変わらない。また、巡航中でも電波を出す機器を使用できない点も変わらない。つまり、電波を出さない機器に限って利用可能な時間が増えたという話である。

さすがに、携帯電話は電波を出すと明確に認識できるから、大抵の人がちゃんと電源のオン/オフを意識するだろう。だから、携帯電話が問題になることは、確信犯的に電源をオンにしている場合を除いては、問題にならないと考えられる。

ところが、「意識しないけれども、実は電波を出してます」という機器は意外なほど存在する。だから、機内に持ち込んで使用するつもりの電子機器について、電波を出す仕組みがあるかどうか、ある場合には電波の発信を切れるかどうかを確認しておくようにしたい。

ノートPCが無線LAN・WiMAX・Bluetoothのアダプタを内蔵するのは一般的だが、これはハード的あるいはソフト的なスイッチを備えていて、電波の発信を切れるようになっているのが普通だ。自分が使用しているノートPCで、どうやったら電波の発信を切れるかどうか、事前に確認しておこう。

スマートフォンは、航空機の機内での利用を想定して電波の発信を止めるモードを備えている製品があると聞く(筆者はスマートフォンを使用していないので、これは伝聞情報だが)。ただし、機体が空に舞い上がってからモードを変更すると、変更結果が反映されるまでの間は電波が出てしまう。モードの切り替えは搭乗前・降機後に行うようにする必要がある。

意外と見落としやすいのが、ワイヤレスマウスやBluetooth機器だ。ノートPCに限らず、携帯音楽プレーヤーやゲーム機も対象に含まれるので、これらのデバイスを常用している人は要注意である。例えば、携帯音楽プレーヤー用のヘッドセットでもBluetoothを使用するものは少なくないだろう。

無線の存在を意識しないといえば、デジカメにEye-Fiのような無線LAN機能付きメモリカードを取り付けている人も要注意である。安全策をとって、航空機に搭乗する際にはこの種のメモリカードを外して、通常型のメモリカードに替えておくのが確実だろう。

機内の電源事情いろいろ

一方、筆者がお得意の話題である(?)「電源は」どうか。

本連載の第1回と前回に取り上げたように、鉄道業界では普通車であっても、座席に電源コンセントを設ける事例が増えてきている。しかし飛行機では事情が異なり、上級クラスでなければ使えないと考えた方が良さそうだ。

最近の機材で、かつ上級クラスであれば、電源付きの座席が増えてきた(写真は日本航空のボーイング787、ビジネスクラス)

また、上級クラスなら必ず電源を使えるというものでもなく、機種にもよる。鉄道業界では「2000年以降の新型車両」という1つの目安があるが、航空業界でも同様に、比較的最近になって登場した機材でなければ望み薄だ。

しかも、運航時間が短い国内線ではさらに可能性が低く、ごく限られたケースということになる。その点、運航時間が長い国際線のほうがまだしも期待が持てる。

JAL国際線 - JAL SHELL FLAT NEO(エグゼクティブクラス)
http://www.jal.co.jp/inflight/inter/executive/c_seat/

シート電源のご利用方法│海外航空券│ANA国際線
http://www.ana.co.jp/int/inflight/battery/howto/

BUSINESS CLASS│国際線サービス│海外航空券│ANA国際線
http://www.ana.co.jp/int/inflight/guide/c/

PREMIUM ECONOMY│国際線サービス│海外航空券│ANA国際線
http://www.ana.co.jp/int/inflight/guide/py/

以下のリンクにある全日空の国内線プレミアムクラスの場合、機種によっては電源が付いているが、ボーイング767やボーイング747は全滅で、新しめの機材に限られる様子がわかる。全日空の場合、国際線ではビジネスクラスやプレミアムエコノミーでも電源付きのケースがある分だけ恵まれているが。

座席/プレミアムクラス│航空券│ANA国内線
http://www.ana.co.jp/dom/inflight/premiumclass/seat/

そうしたなかで、「全席電源付き」をアピールしているのがスターフライヤーだった。「もしや」と思って調べてみたら的中である。

航空会社スターフライヤー(SFJ)公式サイト/機内シートのご案内
http://www.starflyer.jp/inboard/seat.html

日本の国内線では、バッテリの持続時間が深刻な問題になるほどの長時間フライトがないのだから、わざわざコストと重量を費やして電源を設けるケースが少ないのは仕方がないと言える。搭載能力と経済性の見地から、飛行機はグラム単位で重量削減に努力しているものだから。

幸い、どのフライトにどの機材が割り当てられるかは時刻表で確認できるから、電源の有無がフライト選びの1つの目安になることもあるかもしれない。また、機材繰りの都合などから国際線用の機材が国内線に持ち込まれることがあるので、たまたまそういうフライトを引き当てることができればラッキーである。