オートデスクは7月6日、建設業向け特別Webセミナー「『業績回復への道:デジタル技術でCOVID-19の影響を克服するための建設業の取り組み』に関するIDCレポートから読み解くアジア太平洋地域の現状」を開催した。

本稿では、オートデスクとIDCの共同調査「業績回復への道:デジタル技術でCOVID-19の影響を克服するための建設業の取り組み」の結果を基に、IDC Japan ITスペンディングリサーチマネージャー 敷田康氏がアジア太平洋地域の建設業界におけるCOVID-19の影響や対処、DXおよびテクノロジーの採用状況などについて解説した講演の模様をレポートする。

コロナ禍におけるAPIJの建設業の対応

オートデスクとIDCの共同調査「業績回復への道:デジタル技術でCOVID-19の影響を克服するための建設業の取り組み」は、日本を含むアジア太平洋地域(APIJ)5カ国の建設業283社(オーストラリア/ニュージーランド41社、インド150社、シンガポール42社、日本50社)を対象に、2020年7月から10月にかけてCOVID-19の影響とその回復状況についてアンケート調査を行ったもの。講演では調査結果を基に、コロナ禍によって建設業界がどのような影響を受けたか、業績回復に向け、どのようなアクションをとっていくべきかについて語られた。

調査対象となった企業はいずれも従業員数100人以上。回答者の職務分野はIT関連部門が約4割、事業関連部門が約6割で、9割以上が何らかのかたちでデジタルソリューションの導入に関する意思決定に携わる。

調査概要

DXへの取り組みに対するアプローチを5段階に分けて尋ねたところ、日本は「長期的なアプローチ」にあたる回答が、他国を大きく上回る約4割に達した。

調査結果

一般に、DXの取り組みに関して日本はやや後進国だとされる向きが強い。だが、「建設業界に限ってはむしろ日本が進んでいるという見方がされている」と敷田氏は語る。

「日本はさまざまな自然災害が多いため、それらを乗り越えるためにテクノロジーを活用しようとか、大変厳しい規制のなかで建築/建設設計を行うために、テクノロジーでサポートしていこうという考えが土壌にあります。その結果、テクノロジードリブンなところが多いと考えられています」(敷田氏)

IDC Japan ITスペンディングリサーチマネージャー 敷田康氏

IDC Japan ITスペンディングリサーチマネージャー 敷田康氏

では、コロナ禍においてAPIJの建設業はどのような対処をしていたのか。敷田氏は、「レスポンシブルな反応だったと思う」と見解を示す。

「まずはとにかく事業継続させることに注力せざるを得ず、やがて景気の減速に伴ってコストの最適化を実施する企業が多くありました。そして景気が後退しかねないとき、いち早く回復するための計画や投資を考える企業が出てきました」

調査結果

成長へ回帰するための投資領域を明確にしていくにあたっては、コロナ禍に限らず、今後も想定外の変化が起きる可能性が多分にある”ネクストノーマル”な環境を想定する必要があるという。

「ネクストノーマルな環境に対し、柔軟な体制をとれるようにテクノロジー投資を行えるのが『Future Enterprise(未来の企業)』だと考えています。(Future Enterpriseとは)外部環境に迅速に対応して新たな成長を実現し、データやデジタル技術を使って組織のあらゆる側面を未来へとシフトする能力を備えた企業です。これが、今後も対処療法的にしか対応できない企業になるか、柔軟に対応できる企業になるかの分かれ目になると思います」(敷田氏)