2020年にリモートワークなどの行動変化へと踏み切った企業は多く、またこれを機に社会システムや人の価値観が大きく変わっていくと考えられる。そうしたなか、社員の働きがいを向上し成果が出しやすい環境を創出すべく、改革を進めているリーダーたちに取り組み事例を紹介してもらうオンラインセミナー「マイナビニュースフォーラム働き方改革Day 2020 Nov.」が11月26日に開催された。

セミナーの幕を切った基調対談では、クロスリバー 代表/キャスター Caster Anywhere事業責任者の越川慎司氏と、青山学院大学 地球社会共生学部 教授/アバナード デジタル最高顧問/音楽家の松永エリック・匡史氏が、「変化に対応して成果を出し続ける組織とは?」をテーマに熱いトークを繰り広げた。

越川氏 松永氏

(写真左から)越川慎司氏、松永エリック・匡史氏

在宅勤務でサボる人はオフィスでもサボる!?

越川氏:リモートであっても出勤していても、また東京でも、東京ではなくても、成果を出すことのできるチームをどうすればつくることができるのかについて、ぜひ意見を聞かせてください。

まずは、ここで衝撃的なデータをお見せすると、従業員が仕事で用いるPCのログを分析したところ、在宅勤務でサボる人の実に94%が、オフィスでも同じくサボるという事実が判明しました。在宅勤務中に仕事用であるはずのPC上で、ゲームをしたりECサイトを閲覧したりしていた人は、実は出勤していてもサボっていたということが明らかになったのです。つまり、サボる人は在宅でも出勤でもサボるというわけですが、このデータを見てどう思いますか。

越川氏

松永氏:正直、これぐらいしかサボっている人はいないのかと意外でした。もっといてもいいのではないかと。私は外資系企業にずっといましたが、そこではできる人はサボっているものなんですね。なぜならば、自分がやるべきことがわかっているからです。逆に本当に問題なのは、出社してさえいれば、もしくは書類作成してさえいれば、それはさぼってないという考え方ではないでしょうか。

そもそも同じ時間でも”深さ”に違いがあるはずです。例えば、ある顧客に会うために、大勢で何時間もミーティングをしてどうやって会うのか考えるのと、誰かがぱっと電話してアポをとってしまうのと、果たしてどちらがいいのかという話です。

越川氏:今までは長く仕事することが美徳だったのが、松永さんが言うように、電話1本で解決できるほうが成果を上げているという考え方へとシフトしつつあるのが「今」ではないでしょうか。やはり、外資系企業は元々そういうスタンスですよね。

松永氏:はい、そもそもさぼらないとやりこなせないほどの仕事が降ってきますから(笑)。これは言い換えれば、仕事のパフォーマンスとプライオリティをしっかり把握していなければ、とても終えられないということです。

松永エリック氏

越川氏:そもそも、24時間では到底終えることのできないような仕事を、終わらせなければならないので、徹底的に無駄をなくすことが求められるのですよね。これに加えて、活躍しているコンサルタントというのは市場価値のあるコンサルタントとイコールであり、そこでは内発的動機がとても重要だなと感じました。

松永氏:そうですね、仕事の満足度が上がると仕事の中身も凄く良い方向へと変わるので、つまりモチベーションが大事だと実感できますよね。

越川氏:実際、「あなたの働きがいアンケート」に寄せられた声には、「内発的動機を獲得するために自分の働き方を変えたい」といったものが多かったです。

ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッドで日本型雇用形態を

越川氏:組織の雇用形態として大きくジョブ型とメンバーシップ型があって、このうち成果主義で評価するジョブ型はテレワークとの相性が良いと言えます。対してメンバーシップ型は、基本的に給料が下がることがなく、プロセスと成果で評価する雇用形態で日本企業はこちらが主流です。こうした状況についてどう考えますか。

松永氏:日本企業はまずジョブディスクリプションについてしっかりと規定しないといけないでしょう。海外ではいわゆる「あうんの呼吸」が通用しないので、ジョブディスクリプションが非常に細かく規定されており、そして従業員はジョブディスクリプションで定められている自分の仕事以外は全くやりません。

対してメンバーシップ型の日本では、”自分の仕事はここまで”と認識してはいながらも、それ以上の仕事もやってしまいがちですが、実はこれは日本の良いところだと考えています。

越川氏:まさにそうですね。ある企業で「助け合い評価」という、自身の職務責任から離れた領域で誰かを助けたら評価する指標を取り入れたところ、皆が助け合うようになりました。

松永氏:ジョブディスクリプションが決まっていれば、それ以外の行いも見えてくるので、そこをしっかりと評価してあげるというのが、日本流のジョブディスクリプションの活用方法としてふさわしいのではないでしょうか。ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッドな、まさしく”日本型”の雇用形態をつくってしまえば良いと思います。