ビッグデータを活用したビジネスが急拡大するなか、とりわけ個人データの取り扱いに関してはプライバシーやセキュリティ面での課題が数多く残されている。ここに目を付けたのが、ベクトルとインティメート・マージャーの出資により2020年3月に設立されたPriv Tech(プライブテック)だ。社名からわかるように、プライバシー(privacy)保護に関するテクノロジーを軸としたプライバシーテック事業を展開し、新たな市場の開拓を目指す。Priv Techが開発を進めるサービスの詳細や今後の展望について、同社代表取締役の中道大輔氏に話を聞いた。

Priv Tech 代表取締役 中道大輔氏(取材はオンラインで実施、写真は全て別日にPrivTechが撮影)

世界各国で加速するプライバシー保護の動き

個人データ保護を規定する法として、2018年5月にGDPR(General Data Protection Regulation: 一般データ保護規則)、2020年1月にCCPA(California Consumer Privacy Act: カリフォルニア州消費者プライバシー法)が施行された。こうした動きに追随するかたちで世界各国/地域でプライバシー保護の動きが加速している。日本においても、2020年3月に個人情報保護法の改正案が閣議決定されたところだ。

特に注目すべきは、Cookieに関する規制だ。GDPRを補完するものとして提案されているeプライバシー規則においては、Webサイトの運営事業者がユーザーの閲覧履歴などのCookieデータを活用する場合、利用者本人の明示的な同意を得る必要がある。現在も類似の規制であるeプライバシー指令が存在しているが、eプライバシー規則が施行されると、Cookieの取り扱いはより厳格化されることとなる。

こうしたなか企業には、Cookieをはじめとする個人データやプライバシー遵守のあり方、取り扱いに対する仕組みを構築することが求められているが、国や地域によって方針が異なり、ルールが統一されていない部分も多く、対応が後手に回ってしまっているケースも多い。

そこでPriv Techが提供するのが、個人データ等の利用同意管理プラットフォーム「Trust 360」だ。Cookieやタグ単位でユーザーから同意を取得/管理し、ユーザーの同意に基づいてCDPやインターネット広告など各種デジタルマーケティングツールと連携/活用することができる。

Trust 360の競合製品に米国発の「OneTrust」がある。同製品を提供するOneTrust社は、2016年に設立。2020年2月にはシリーズBで2億1000万ドルの資金調達を実施するなど急成長中のスタートアップだ。同社との差別化戦略について中道氏は、「GDPRやCCPAと比べて日本の個人情報保護法は緩く、OneTrustは日本企業にとって機能が過剰であると言えます。Trust 360は、Cookie自体は保護情報に当たらないとする日本の個人情報保護法に沿ったものとして作っています」と説明する。中小企業でも導入しやすいよう月額5万円という低価格で提供しており、初年度で260社への導入を目指す。

ただしPriv Techとしては、Trust 360の利用料のみで収益を上げようとは考えていない。「将来的にはサードパーティCookieを利用してビジネスをしていた人たちをプラットフォーム上に集めて、そこでビジネスをしてもらえるようになることを目指す」と、中道氏は展望を語る。