前回は地デジ録画PCの組み立てに使用するPCケースを決定したが、今回は実践編となる。そのほかのパーツ構成、そして組み立ての手順をじっくりと紹介していきたい。組み立ては面倒で大変そうだが、それほど難しくはないので、ぜひとも積極的にチャレンジしてほしい。

地デジ録画PCを7万円以下で実現する

今回は実際に地デジ録画PCを組み立てていくが、一番のポイントになるのがパーツの構成だ。徹底して低価格を目指す方法もあるが、せっかく自作するのであれば、リビングのHDDレコーダーとしても快適に利用でき、長く快適に使えるPCに仕上げたいもの。とはいえ、数十万円のパーツ構成は現実的ではない。それなら高性能なレコーダーを導入したほうが……という考えも出てくるだろう。やはり自作の醍醐味は、自由にパーツをチョイスできるため、「低価格でも高性能」を狙えること。今回はOSを別として10万円を大きく下回る「7万円」という予算を設定。これで、できる限り快適な録画PCのプランを考えていく。

自作のプランを考える上で、最初に決めるべきはCPUだ。CPUが決まれば、それを利用できるマザーボードとメモリが必然的に絞られるからだ。ベースとなるPCケースは前回でチョイス済みなので、あとは予算や目的にマッチするHDDや光学ドライブを選んでいけばいい。

パーツ名 メーカー名 製品名 実勢価格
CPU Intel Core i5-650 18,000円
メモリ CFD W3U1333Q-1G 6,000円
マザーボード GIGABYTE GA-H55M-S2H(H55) 9,000円
光学ドライブ バッファロー DVSM-24AS/V-BK(DVDスーパーマルチ) 3,500円
HD シーゲイト ST31000528AS(1TB) 6,500円
PCケース タオエンタープライズ SHADOW f 9,000円
地デジチューナー アイ・オー・データ機器 GV-MVP/HS3 10,000円
電源 タオエンタープライズ Silent Cool 630 8,000円
合計 70,000円
今回の組み立てプラン。PCケースはリビングでも利用できる小型サイズという前提で、自作ならではの拡張性のメリットも活かせる「SHADOW f」。それを軸に、内部は視聴や録画した番組の編集を快適にするため、CPUに予算を割いている

今回選んだCPUは、デュアルコアの「Core i5-650」。3.20GHzという高い動作クロックを持ち、グラフィック機能を内蔵しているため、別途グラフィックスカードを用意しなくていいのが魅力。それに、CPUの負荷や発熱の状況に合わせて動作コア数や動作クロックを自動的に変化させる「TurboBoost」を備え、最大3.46GHzまでアップする。クアッドコアほど並列処理には強くはないが、多くのアプリケーションを快適に動かせるのは間違いない。なお、CPUはもっと低価格なモノもあるが、地デジの視聴、録画した番組の編集にはCPUパワーが必要となる。「快適さ」を考えるなら、CPUには予算をかけたいところだ。

マザーボードは、Core i5-650を使用できるH55 Expressチップセットを搭載するモデルから選ぶことになる。今回はPCケースがマイクロATXサイズなので、マザーボードも当然マイクロATX対応するGIGABYTEの「GA-H55M-S2H」をチョイスした。メモリは同じくCore i5-650で使用できるDDR3から、1GB×2枚のセットモデルを選択した。これは、2枚1組でメモリを動作させることでデータ転送速度をアップするデュアルチャンネルを利用するため。今回は予算の都合から2GBとしたが、メモリの容量はOSの快適度を左右する。余裕があれば2GB×2枚のセットを選びたい。

このほか、HDDは1TBとしているが、最近では2TBの価格が急激に下がってきており、1万円以下も珍しくない。予算に余裕があり、録画時間を延ばしたいなら、2TBのHDDを選ぶのもいいだろう。電源ユニットには、高い静音性と低発熱で長寿命なのが魅力となっているタオエンタープライズの「Silent Cool 630」を選択した。定格550W/最大630Wと今回のプランでは、そこまでの出力は必要ないが、組み立てに使用するPCケース「SHADOW f」は大型の高性能グラフィックスカードを搭載できるだけに、将来的な拡張も意識して出力に余裕を持たせている。

地デジ録画の心臓部といえるTVチューナーには、アイ・オー・データ機器の「GV-MVP/HS3」をチョイス。価格がそれほど高くない上に、録画した番組をPSPやiPhoneなど携帯機器にダビングして再生が可能など高性能となっているのが魅力。録画した番組の編集やBD-DVDへのムーブ、ダビング10にも対応している。なお、チューナーの活用方法については次回詳しく紹介していく。興味がある人は、ぜひチェックしてほしい。

では、さっそくこのパーツ構成による組み立て手順を紹介していこう。

CPUの取り付けからスタートするのが自作のセオリー。まずは、マザーボードのCPUソケットにある金属カバーのレバーを横にズラして上に上げ、カバー全体を開く

続いてCPUのくぼみとCPUソケットの出っ張りの位置を合わせて、CPUをソケットの上に載せる。なお、CPU底面の端子は汚れや油に弱い。CPUの側面を指でつまむようにして持ち、ソケットにそっと置くのがコツだ

CPUの設置後は金属カバーを再び閉じる。なお、カバーは、二股に分かれた先端部分をストッパーの役目を持つ丸いネジに挟み込ませるようにしないと正しく閉じないので注意しよう

続いてはCPUクーラーの取り付け。CPUソケットの周囲にある4つの穴に、CPUに付属するCPUクーラーの4つの脚を合わせて置く。なお、CPUクーラーの向きに決まりはない。電源ケーブルがマザーボード側の「CPU_FAN」コネクタに届く範囲ならば、どの向きに設置してもOKだ。なお、脚には向きがある。固定する場合はくぼみが内側、矢印が外側になっている必要がある。忘れずに確認しておこう

脚の向きを確認したら、それぞれ垂直にグッと押し込む。「カチリ」と音が鳴ったら固定された証拠。4つの脚をしっかりと固定しよう

固定完了後は、ファンから出ている電源ケーブルをマザーボードの「CPU_FAN」と印字された4ピンのコネクタに挿し込む。凹凸があるので、向きを合わせて接続しよう

コラム - 大型のCPUクーラーで静音化

CPUにはCPUクーラーが同梱されているので、冷却には基本的に困らないが、冷却力や静音性を追求する場合は別途、高性能なCPUクーラーを導入するのもアリだ。タオエンタープライズの「HPFI57-10025EP」は、ヒートパイプによる高い冷却力に加え、大型ファンの採用で高い静音性も実現。インテルからもCore i5用クーラーとして推奨されると、その性能の高さは折り紙付き。ただし、大型のクーラーはPCケースによっては入らない場合があるので、事前にサイズを確認しておこう

続いてメモリの装着となる。データ転送を高速化するデュアルチャンネルで動作させるために2枚1組みで取り付ける。作業の手順は、メモリのくぼみとスロットの仕切りの位置を合わせて垂直に挿し込めばOKだ

メモリはスロットの両脇にあるフックがメモリにガッチリひっかかれば固定完了となる。両方のフックがかかっているか確認するクセをつけよう

同じ手順でもう1枚も固定する。今回のマザーボードでは、スロットが2本だけなので、位置に悩まないで済むが、4本以上の場合はデュアルチャンネル動作させるための取り付け位置にルールがある。マニュアルなどで必ず確認して作業しよう

ここからはPCケースにマザーボードを組み込む作業となる。まずは、PCケースの背面にある左側面を固定するネジをはずし、後ろに引く。これで簡単に外れる。同じく右側面もはずしておこう

次にHDDを取り付けるための「ツイン・シャドーフレームベイ」をPCケースから分離する。3カ所あるネジをはずし、スライド式のストッパーを左にずらす。そして手前に引けば外れる仕組みだ。もう1つも同じ手順で外しておこう

続いてフロントパネルをPCケースから取り外す。これは、4カ所あるプラスチックのツメが引っかかっているだけ。手前に引くだけ簡単に外れる

ここでは電源ユニットを取り付けていく。まずは、取り付けにジャマな「支柱」を固定する両側面のネジを取る。ネジを外して、フロントパネル側に引けば取れる仕組みだ

次は電源ユニットを底面側から入れ、背面に押し出すようにする。内部が狭く電源が入りにくいので、角度を調節しながら慎重に作業しよう

電源ユニットに付属するインチネジで固定していく。背面にある4カ所のネジ穴にそれぞれ取り付ければ完了だ

マザーボードに付属するバックパネルカバーを取り付ける。内側から背面に押し出すように力を入れると、カバーの周囲にある出っ張りがPCケース側にはまって固定される。カバーの取り付けは忘れやすいので、必ずチェック

続いてマザーボードをPCケースの内部に置いて、取り付けるネジ穴の位置を確かめる。油性ペンなどで印をつけておくと作業しやすい

次はPCケースに付属する六角形の「スペーサー」をマザーボードの仮置きで確かめたネジ穴に取り付ける。今回のPCケースは、ほとんどの位置にあらかじめスペーサーがあるので1カ所だけの取り付けだが、PCケースによってはもっと数が多い。ちなみに、スペーサーはマザーボードとPCケースに空間を作って回路のショートを防ぐ大事な役割がある

スペーサーの取り付けが終わったら、マザーボード付属のインチネジでPCケースに固定していく。なお、PCケースによって固定に使うネジは異なる。マニュアルなどで確かめておこう。ちなみに、ネジ山の間隔が広いのが「インチネジ」。間隔が狭いのが「ミリネジ」となる。自作ではほとんど、この2種類しか使わない

ここからはTVチューナーカードの固定となる。まず、今回のチューナー「GV-MVP/HS3」を取り出し、付属するminiB-CASカードをスロットに装着する

続いてマザーボードの一番下にあるPCI Express x16(動作はx4)スロット部分の目隠し板を取る。目隠し板はプラスチックのストッパーを外し、上に引き抜けばそのまま取れる

次にTVチューナーを、PCI Express x16スロットへと垂直に挿し、ストッパーを戻して固定する。なお、今回のTVチューナーカードはPCI Express x1仕様だが、x16スロットに挿しても問題なく動作する。ただ、これはどのマザーボードでも同じではなく、グラフィックスカードしか動かない場合も。事前に確認していこう

ここからは光学ドライブの固定となる。まずはフロントパネルの上部にある5インチベイ用のカバーを外す。裏側にある固定用ツメを外せば、すぐに取り出せる

次に光学ドライブにマザーボード付属のシリアルATA(SATA)ケーブルを接続する。コネクタはL字型となっているので、ケーブル側と向きを確認して挿し込もう

続いてDVDスーパーマルチドライブを5インチベイに前面から挿し込んでいく。固定するためのストッパーがドライブのネジ穴にはまるまで押し込もう。最後にストッパーをフロント側に引いて固定させれば完了だ

ドライブの固定完了後は、フロントパネルを元に戻す。ドライブとパネルの位置がピッタリと合っているハズだ

ここからはHDDの固定に移ろう。HDDは、ツイン・シャドーフレームベイに取り付ける。最大4台まで固定できるが、ケーブルの取り回しはPCケースの右上にHDDがくるのが一番ラクだ。HDDは背面のネジ穴とツイン・シャドーフレームベイのゴムがついたネジ穴を合わせ、専用のネジで固定する。この段階でシリアルATAケーブルをHDDに接続していこう

次は電源ユニットから出ている薄型のシリアルATA用電源ケーブルをDVDスーパーマルチに接続する。内部が狭いため、L字型になっているコネクタの向きをあらかじめ確認し、焦らずにゆっくりと挿し込もう

続いてHDDを固定したツイン・シャドーフレームベイをPCケースに戻す。ここでHDDにもシリアルATA用の電源ケーブルを挿し込もう。なお、もう1つのツイン・シャドーフレームベイはケーブル類の接続にジャマなので最後に固定する

DVDスーパーマルチドライブとHDDのシリアルATAケーブルをマザーボードのシリアルATAコネクタに接続する。どのコネクタに挿しても問題なく動作するが、数字の若い順に取り付けていくのが自作のセオリーだ

コラム - 大型GPUにも対応

今回使用しているPCケース「SHADOW f」は、HDDベイが側面にあるため奥行きに余裕があるのが特徴。マイクロATXサイズのPCケースでは珍しく、写真のようなロングサイズのグラフィックスカードでも取り付け可能となってる。ハイエンド志向のユーザーにもオススメできるPCケースだ

昔から自作一番の難関となっているのがLEDとスイッチ類のケーブルの接続だ。コネクタが小さいだけで、マザーボード側にHDと書かれたコネクタにPCケース側のHDD LEDケーブルを接続と印字している文字を確認してくだけと、それほど難しくない。ただ、注意が必要なのはプラスとマイナスの極性があること。逆に挿すとLEDが正しく点灯しないといったトラブルが起きる。白または黒のケーブルがマイナス極性と覚えておけば間違いない

PCケースの前面にあるUSB端子を有効にするには、PCケース内部にあるUSBケーブルを、マザーボードの「FUSB」コネクタに挿す必要がある。FUSBは2つあるが、どちらに挿してもOK。ピンとコネクタの切り欠けの位置を合わせて接続しよう

同じく前面のサウンド入出力を使うには、PCケース内部のHD AUDIOケーブルをマザーボードの「F_AUDIO」コネクタに接続する。こちらもピンとコネクタの切り欠きの位置を確認して挿し込もう

次は電源ユニットから出ている24ピンのメイン電源ケーブルを、マザーボードのATXと印字されたコネクタに挿し込む。ケーブル側のフックがコネクタ側のツメに引っかかるまで押し込もう

続いてCPUへの電源供給を助ける田の字型の12V電源ケーブルを接続する。今回のマザーボードは12Vコネクタが4ピンなので、分離式となっている8ピンの電源ケーブルを4ピンに分けて、同じくフックがかかるまで挿し込む

忘れがちなのでPCケースの前面と背面にある冷却ファンの電源ケーブルの取り付け。冷却ファンには3ピンと平型4ピンの電源ケーブルが用意されている。背面のファンはマザーボードの「SYS_FAN」と印字されたコネクタに3ピンのケーブルを挿し、前面のファンはマザーボード側のコネクタが足りないため、電源ユニットから出ている平型4ピンの電源ケーブルに挿し込もう

次は残りのツイン・シャドーフレームベイをPCケースに戻す。3つあるネジを取り付け、上部のストッパーも戻して完全に固定しよう

最後に両側面を戻せば組み立て作業は完了だ。電源ケーブルやマウス、キーボード、ディスプレイを接続してOSとドライバのインストールを実行しよう。ちなみに、新品のHDDを使う場合はBIOSの設定などを変更しなくても問題なくOSをインストールできる。画面の指示に従って、インストールしていけばOKだ