本連載では、企業のマーケティング担当者向けに、RTBをはじめとしたアドテクノロジーについて、分かりやすく解説していきます。アナリティクスやマーケティング・サイエンス、最適化(オペレーションズリサーチ)視点を意識しつつ、DSPの選定や活用が可能となることを狙いとします。

前回は、インターネット広告の歴史とアドネットワークの登場までを振り返りました。今回は、アドエクスチェンジからDSP/SSP(RTB)までを一気に見ていきましょう。

オープン市場へのきっかけ(アドエクスチェンジ)

「アドエクスチェンジ」は、アドネットワークの需給調整を行う取引所として登場したとお話しましたね。

アドエクスチェンジの出現により、アドネットワーク事業者は、想定より広告受注数が少なく余った広告枠を、アドエクスチェンジを通じて転売することが可能となりました。逆に、想定より受注数が多い場合には、アドエクスチェンジを通じて補完することができ、在庫リスクの分散も実現しました。

しかし、次第にアドエクスチェンジを通じて、広告主が直接広告枠を買い付けたり、媒体社が直接販売したりするケースが出てきます。これにより、これまでの「アドネットワーク事業者がそれぞれ優先的に媒体社(広告枠)を持つ」という強みが薄まっていきます。

一方で、広告主は複数のアドネットワークに容易につながることができ、膨大な広告枠に配信できる機会が増えました。その結果、配信先や在庫量に縛られず、膨大な広告枠から費用対効果の高い配信機会をいかに見つけ出すかという「最適化技術」が重要になってきます。

すなわち、アドエクスチェンジをきっかけに、広告主と媒体社がオープンに取引可能となった現在のRTB(*1)の登場につながっている、と言えます。

インターネット広告の大変革 =RTB市場の発展

RTBは、欧米にて2009年頃から、日本では2011年頃から一気に普及した最新テクノロジーです。これまでのインターネット広告は、1カ月単位で広告枠を売買することが主流でしたが、このテクノロジーにより、広告主と媒体社は「インプレッション(クリック)」ごとに「オークション形式」で、「オープンな取引」を行うことが可能となりました。

DSP/SSP(*2/3)とは、RTBの仕組みを利用して広告を配信するためのプラットフォームです。広告主は、DSPを通じて「必要なとき」に「適切な金額」で「希望の配信量」を買い付ける(オークションする)ことができます。

また、媒体社はSSPを通じて、オークションで最も高値を付けた広告を配信するため、インプレッション単位で収益性の高い配信が可能となり、広告収益の最大化が期待できます。

(*1)RTB(Real Time Bidding)
  広告枠を1インプレッション毎にリアルタイムなオークション形式で入札できる
(*2)DSP(Demand Side Platform)
  広告主(広告出稿者)が利用する広告配信の最適化プラットフォーム
(*3)SSP(Supply Side Platform)
  媒体社(広告枠)が利用する広告配信の最適化プラットフォーム

広告主は、独自の予測に基づいた判断により、広告を表示(購入)することが可能となります。このように、1インプレッション単位で「評価」と「購入」が連動することで、ターゲティング機能が大きく進歩しました。DSP配信の特徴として「枠から人へ」と表現される所以です。

こうして、WebサイトのPVから予測される広告在庫の管理や、CPC・期待効果・時間帯・カテゴリなどの配信ルールに従った自動最適化、膨大な配信データの分析、分析結果に基づいたターゲティングなど、アドテクノロジーの基盤が大きく成長しました。

次回は、RTBの根幹を担うオークション分野を復習しながら「入札」機能の特徴についてふれていきます。

執筆者紹介

ソネット・メディア・ネットワークス 商品企画部

2000年3月に設立。ソニーグループの一員として、インターネットサービスプロバイダー(ISP)を運営するソネットの連結子会社としてインターネットマーケティング事業を展開する。国内最古のアドネットワーク事業者として10年以上の実績があるほか、RTBの市場拡大に先駆け、DSP「Logicad(ロジカド)」を自社開発。2014年10月には、インターネット広告に関する技術の精度向上を目的とした研究開発を行うラボを新たに設立するなど、独自のポジションを築く。