スマートウォッチとは何ぞや?

総務省が公開した「情報通信白書令和2年版」によると、2019年における個人のスマートフォン保有率は67.6%だ。これは全世代の平均値だ。20代および30代のスマートフォン保有率は90%を超えている。しかも、スマートフォンの保有率は増加傾向にあり、今後もさらに増えるものと考えられている。最近では民間のサービスのみならず行政サービスもスマートフォンで利用できるシーンが増えており、社会インフラを支える重要なデバイスになっている。

スマートフォンの増加傾向と比べると、「スマートウォッチ」はあまり普及していない。情報通信白書令和2年版のデータを見ても、スマートウォッチなどが分類されている活動量計などのモニタリング機能を有するスポーツ・フィットネス型機器の市場規模は横ばいの傾向を示している。

スマートウォッチといえば、Appleの「Apple Watch」を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。Apple Watchは小さいiPhoneと言えるようなデバイスで、スマートウォッチという限られたサイズでありながら、スムーズな操作と多くの機能を提供する。iPhoneを使っているなら、第一候補になるスマートウォッチがApple Watchだ。スマートウォッチという分野を一般に広く認知させたデバイスでもある。

  • Apple Watch Series 6 ブルーアルミニウムケースとブレイデッドソロループ - 資料: Apple提供

    Apple Watch Series 6 ブルーアルミニウムケースとブレイデッドソロループ 資料: Apple

スポーツでスマートウォッチを既に活用しているとなると、Garminのスマートウォッチが思い浮かぶだろう。Garminは多種多様なモデルを提供しており、スポーツや目的ごとにデバイスを選択できるという特徴がある。廉価なモデルから高性能なモデル、さらにクラウドサービスまでそろっている。

  • Garmin fēnix 6 Pro Dual Power Ti Carbon Gray DLC / Carbon Gray DLC Ti - 資料: Garmin提供

    Garmin fēnix 6 Pro Dual Power Ti Carbon Gray DLC / Carbon Gray DLC Ti 資料: Garmin

  • Garmin fēnix 6 Pro Dual Power Ti Carbon Gray DLC / Carbon Gray DLC Ti - 資料: Garmin提供

    Garmin fēnix 6 Pro Dual Power Ti Carbon Gray DLC / Carbon Gray DLC Ti 資料: Garmin

スマートウォッチは、愛好者にとっては欠かすことのできない生活の一部だ。それは、スマートウォッチがもたらす機能がとても重要だからだ。一方、そもそも何ができるデバイスかを知らない人からすると、スマートウォッチは購入対象には映らないかもしれないが、ちょっともったいないことだと思う。ビジネスマンこそ、スマートウォッチは活用しがいがあるのだ。

仕事は健康あってこそ

新型コロナウイルスインシデントによって緊急事態宣言が出されると、該当する地域の企業は休業またはテレワークへ業務形態をシフトさせていった。この間、体重が増えたビジネスマンが多かった。これまで通勤で消費されていたカロリーが消費されなくなったことで、その分が体重増加に結びついたのだ。

緊急事態宣言は解除されたが、業務形態を以前とは異なる状態にシフトさせている企業も多い。テレワークは働き方改革の一環として推奨されてきたが、なかなか政府の意図するようには進まなかった。しかし、緊急事態宣言でテレワークの必要性に迫られると、多くの企業がテレワークでも業務が回るということに気がついた。もちろん、これは業種によるのだが、テレワークが有効だった業種はラッキーだった。テレワークを促進することで、オフィスの賃貸費用や通勤手当を抑えることができる。経営判断としてテレワークが有効な方法だと気がついた企業も多かったのだ。

そうなってくると、今後もテレワークが主体という企業も増えることになり、これまでの通勤分のカロリーは消費されることなく、体重増加の原因になってしまう。仕事の基本は健康だ。なんとかして健全な心身を維持したいところだ。

こうしたケースで役立つのがスマートウォッチである。スマートウォッチは身体データを常時モニタリングしてくれる。活動が少なければ、それを教えてくれる。長期にわたってモニタリングデータを蓄積すればするほど、より正確に身体状態を把握でき、体力低下や体重増加が起こらないように教えてくれる。

短期的に体重を減らそうとしてもリバウンドしたり長く続かないことが多い。適切な活動を日々の生活の中で習慣化していくことで、長期的かつ徐々に健康な状態を維持できるようになればよい。スマートウォッチはそうしたゴールへ至るためのサポートをしてくれるのだ。ビジネスマンも若いうちはよいが40歳を超えてくると無理が利かなくなってくる。食事に気をつけることはもちろん、毎日体を動かすことも大切になってくる。仕事を支える健康を維持する、スマートウォッチはそのためのデバイスだと考えてほしい。データを収集して行動に生かす、これは仕事も健康も同じだ。

モニタリングするのはこんなデータ

いわゆる「スマートウォッチ」と呼ばれるデバイスは、腕時計型のデバイスで、時計以外の機能も提供しているものを指す。スマートフォンに搭載されているような機能、心拍数などの身体データモニタリング機能を備えたものがスマートウォッチと呼ばれることが多い。前述したApple Watchはスマートフォンの機能を取り込んだデバイスであり、Garminのスマートウォッチは身体データのモニタリング機能を備えたデバイスということになる。

現在、市販されているスマートウォッチのうち、特に多機能なフラッグシップモデルが備えている主な計測機能をまとめると次のようになる。

  • 心拍計
  • 呼吸数計
  • 血中酸素飽和度計
  • GPS機能(GLONASS対応、みちびき対応、Galileo対応、QZSS対応、時刻同期、速度および距離計測)
  • 気圧計
  • 高度計
  • コンパス機能
  • ジャイロセンサ
  • 加速度計
  • 温度計
  • 歩数計測
  • 睡眠モニタリング(自律神経回復、レム睡眠計測、ノンレム睡眠計測)機能
  • 上昇階数計測
  • 移動距離計測
  • 筋トレワークアウト計測
  • 有酸素ワークアウト計測
  • 無酸素ワークアウト計測
  • そのほか各種ワークアウト計測
  • インターバルトレーニング計測
  • REPカウント
  • ピッチ計測
  • 自動ラップ機能
  • VO2Max計測
  • トレーニング負荷計測
  • ストレスレベル計測
  • 回復計測機能
  • フィットネステスト機能

上記はあくまでもフラッグシップモデルが備えていることの多い項目だ。提供するモニタリング機能が多いほど高価になる傾向があり、逆に、計測できるデータが少なくなると廉価になっていく傾向がある。計測したデータに基づいて、スマートウォッチはさまざまな機能をユーザに提供してくれる。

クラウドを使ってブラウザでデータを確認できるモデルも

スマートウォッチは計測したデータに基づいた活動レベルの表示、体力低下の警告、怪我の危険性の警告、体力低下の警告など、さまざまな機能を提供している。スマートウォッチの多くはスマホアプリと連動する仕組みになっており、より詳しいデータの閲覧や分析結果の閲覧はアプリから手軽に行えるようになっていることが多い。

  • Polar Flowアプリの動作サンプル アクティビティ計測

    Polar Flowアプリの動作サンプル アクティビティ計測

  • Polar Flowアプリの動作サンプル トレーニング計測

    Polar Flowアプリの動作サンプル トレーニング計測

スマートウォッチメーカによっては、計測したデータをクラウドと同期させWebブラウザから確認できるようにしているものもある。長期にわたって身体データを記録しておきたい場合は、こうしたサービスを提供しているメーカーのスマートウォッチを選択するとよい。PCを使うことが多いなら、クラウドサービスを提供しているメーカのモデルを選ぶと便利だ。

  • Polar Flow - Polarの提供するクラウドサービス

    Polar Flow - Polarの提供するクラウドサービス

メーカによって得意な分野は異なる。例えば、次のデータは睡眠を分析したものだ。長期的にデータを取り続けることで、その日の睡眠で自律神経がどの程度回復したか、どの程度の質の睡眠が取れたか、睡眠によってどの程度体力が回復したか、などを知ることができる。

  • Nightly Recharge - Polarの提供する睡眠による回復度合いの表示機能

    Nightly Recharge - Polarの提供する睡眠による回復度合いの表示機能

多くの人が睡眠時間が気になるものの、睡眠によって自律神経が回復しているかどうかは気にかけたことがないんじゃないだろうか。朝起きた時に睡眠時間が十分でも頭が重い、または、睡眠時間が短いのにいきなり目がバッチリ覚め日中に眠くなる、といったことはないだろうか。睡眠時間が十分でも自律神経の回復が十分ではないと、体調がいまひとつということになる。スマートウォッチによっては、自律神経の回復を計測することができ、睡眠の質向上に取り組むことができるものがある。ずっと身体データをモニタリングするスマートウォッチだからこその機能だ。

そのほか、ランニングなどで重要になってくる最大酸素摂取量(VO2max)を計測できるモデルもあるし、トレーニングを詳細に記録できるデバイスもある。それこそ、筋トレのレップ数を自動的に計測できるものもある。健康維持からさらに体力向上に視点を移していくなら、こうしたデバイスを提供しているメーカーを選ぶのも手だ。

スマートウォッチはさまざま、選び方はむずかしい

一口にスマートウォッチと言っても、そこに分類されるデバイスの種類は多種多様だ。Apple Watchのようにスマートフォンの機能に近づけたモデルもあるし、逆にほとんどアナログ腕時計で歩数計とスマートフォンとの同期機能といった必要最小限の機能だけを提供するものもある。スポーツでの利用を想定したスポーツウォッチ、ライフログの記録を目的としたライフログウォッチ、アナログ腕時計にある程度のスマートウォッチ的機能を取り込んだハイブリッドウォッチ、最低限の機能を提供するリスト型ウォッチ、アウトドアでの利用を想定したモデル、可能な限り機能を詰め込んだフラッグシップモデルなど、選択肢は広い。

スマートウォッチはバッテリーの劣化などもあり、何十年も使い続けるものではない。しかし、値段的にもすぐに買い換えるものでもない。一度購入したら数年は使い続けることになるデバイスだ。できるだけ目的にあったものを選びたいし、購入したならぜひともその機能をフルに使いこなしていきたい。

本連載ではスマートウォッチにそもそもどのようはモデルが存在しているか、目的に合わせてどのモデルを検討すればよいか、具体的にどのようなモニタリングが可能なのか、アプリやクラウドサービスはどうやって使っていけばよいかなどを紹介していこうと思う。スマートウォッチはビジネスマンの健康維持にとても役立つデバイスだ。ぜひこの機会にスマートウォッチに興味を持っていただければと思う。