今回は、iPhoneやAndroidスマホからの遠隔操作によって、おいしく肉を焼けるコネクテッド機能搭載のスマート電気バーベキューグリル「Weber Pulse 1000」を紹介します。メーカーのWeber Stephen Products Japan合同会社(以下、Weber)の日本代表であるアダム・ホール氏に、同社のグリル製品で上手に肉を調理するテクニックも教えていただきました。

バーベキューの伝道師が語る「Weber・グリル開発の歴史」

1893年にアメリカ・シカゴで生まれたWeber(ウェーバー)は、アウトドア・グリル調理器具の老舗メーカーです。日本法人は2016年に設立。「バーベキューグリルのある豊かな暮らしのエバンジェリスト」を名乗るアダム・ホール氏を中心に、同社の製品で楽しむさまざまな料理の魅力を伝えてきました。

  • Weber Stephen Products Japan合同会社 日本代表のアダム・ホール氏に、同社製品の歴史と特徴を聞きました

今から約130年も前、Weberが誕生する以前はアメリカにも日常的に屋外でバーベキューを楽しむ文化はなかったそうです。筆者も意外に思いました。ホール氏は「焼き加減が天候の影響を受けやすく、うまく一定の味においしく肉を焼けない。ホストは調理に集中しなければならないため、家族や友人とゆっくり話もできない。しかも後片付けが大変」などの理由から、当時は定着してこなかったのだと説いています。

Weberの創立者であるGeorge A. Stephen氏が海に浮かぶブイ(浮標)の形に着想を得たという、炭焼きタイプのグリル「オリジナルケトル」が最初のヒット商品となって、会社は急成長。続いて1983年には、「火おこし」が簡単にできて肉もよりおいしく焼けるガスグリルの「Genesis」シリーズがヒットを飛ばし、磐石の地位を築きました。

  • Weberの原点となった炭火グリル「オリジナルケトル」シリーズ

  • 大柄なガス焼きグリルの「Genesis」シリーズ

そして、Pulse(パルス)シリーズは電気タイプのバーベキューグリルです。おもに屋外で使うことを想定していますが、ガスグリルのGenesisよりもさらに火おこしが簡単、調理中に発生する煙が少なく、後片付けもラク。それほど置き場所も取らない新時代のバーベキューグリルとして、約5年前に欧州とオーストラリアで発売されました。

革新的なのは、内蔵するサーモスタッドでグリル内の温度をリアルタイムにセンシングしながら、肉を最もおいしく焼ける220℃前後の火加減を保つ機能が付いたこと。Weber Pulse 1000は今から約2年前の2019年に、日本市場への導入検討が始まりました。そして2021年3月、100ボルトの電圧対応が完了したことを受けて、日本上陸を果たしました。価格は59,990円。スマホとも連携し、「Weber Connect」アプリによる設定管理・操作対応を実現しています。

  • 3月に日本発売を迎えたスマート電気バーベキューグリル「Weber Pulse 1000」

バーベキューと日本の食文化は相性バツグン

欧米に比べると、日本には屋外でバーベキューを楽しむ文化が浸透していないように思われます。バーベキューとは、たまに友人たちとスケジュールを合わせて集い、器材と食材をしっかりとそろえて挑む「イベント」というイメージではないでしょうか。そんな日本、Weberはどこに可能性を見出したのでしょうか。ホール氏に質問をぶつけてみました。

「日本には世代を超えて家族と一緒に食卓を囲みながら団らんを楽しむ文化があります。おいしい食事へのこだわりを持つ人も多く、料理の話題で盛り上がる習慣も独特なものだと思います。また、焼き鳥や焼き肉のような直火焼きの調理方法も古くからあります。調理道具が異なっているだけで、バーベキュー文化の轍(わだち)を残せる可能性があると私たちは考えています」(ホール氏)

Weberのグリルは世界の食文化を吸収してきた

Weberは現在、アジア地域では日本のほかにも韓国、中国、シンガポール、インドなどでビジネスを展開しています。アウトドアグリルで肉を焼いて食べる習慣がないインドでは、「野菜をおいしく焼けるWeberのグリル」として、現地の食文化に適応する戦略を進めているといいます。ホール氏によると「Weberはその土地の料理や食文化に合わせて柔軟な進化を遂げることも重視している」そうです。

Weberのローカライゼーション戦略は、日本においても重視されています。Weber日本法人では、東京・青山に構える「Weberグリルアカデミー」で定期的にバーベキューの体験教室やイベントを開催しながら、Weberのグリルを使って日本の料理や食材をおいしく調理するテクニックを研究し、伝えることにも力を入れています。

  • Weberが東京・青山に構えるストアを兼ねた「Weberグリルアカデミー」

  • Weberグリルアカデミーでは、バーベキューの体験教室やイベントを開催しています

Weber Pulse 1000に対応する別売オプションの「グリドル(鉄板)」は、元はヨーロッパでWeber Pulse 1000を発売したあとに、肉以外にもさまざまな食材を調理したいというニーズを受けて開発されたもの。ホール氏は「このグリドルを使えば魚介類を焼いたり、お好み焼きも簡単においしくできる」と話します。

ほかにも、新和食レストラン「HAL YAMASHITA東京」のオーナーシェフである山下春幸氏などが参加する、Pulse 1000による調理に最適な和食レシピの開発にも力を入れているそうです。

  • Pulse 1000の欧州発売後に、ユーザーのリクエストを受けて開発されたという専用グリドル

スマート電気グリル「Pluse 1000」で焼いた肉は確かにウマかった

Weber Connectアプリには、2021年3月時点で山下シェフの監修したメニューを含む全35種類のレシピが登録されています。ユーザーは肉の種類やレシピを選択するだけで、あとはPulse 1000に調理をほぼ「おまかせ」にしておいしく肉を焼けます。今回、東京のWeberグリルアカデミーでWeber Pulse 1000とConnectアプリによるデモンストレーションを体験してきました。

  • Weberのバーベキューグリルはフタを閉じて調理することにより、中の温度を正確にコントロール。おいしく肉を調理できるように設計されています

  • アプリに収録されているレシピを見ながら肉に下味を付けます

  • 調理プログラムをスタートすると、途中で肉の裏表を返して焼くべきタイミングをアラートしてくれます

今回はホール氏が直々に鳥モモ肉のステーキを調理してくれました。最初に塩こしょうとオリーブオイルで肉に下味を付けてからグリルに投入。Pulse 1000は260℃までの予熱に約30分かかるので、まず予熱をスタートしてから、食材の準備などにとりかかるとスムーズです。

Weberのバーベキューグリルには、共通の特徴である「フタ」があります。このフタの内側に設けられた反射板によって、食材に対して熱が均等に行き渡ります。

調理中のホール氏は……、私たち取材陣とのんびり談笑していました。肉を焼いている途中に一度だけ、肉の裏表を返すタイミングがスマホに通知され、焼き上がったときもスマホにアラートが届きます。屋外で楽しむバーベキューは大切なコミュニケーションのひとときでもあるので、「ユーザーが調理ばかりに気を取られなくてすむ使い勝手のために、Weberのグリル製品は進化を続けてきた」(ホール氏)と強調します。

さっそく、焼きたての鳥モモ肉を試食。外側はカリッと、中はふんわりとしていて、ジューシーな肉汁があふれ出す美味。この味わいをレストラン以外で楽しめるとは夢にも思っていませんでした。自宅のグリルやフライパンだけでは、1枚の鶏モモ肉を豪快に焼いて、内側・外側とも均一に火を通すのはなかなか難しいでしょう。

  • ホール氏が自ら調理! おいしく焼けた鶏モモ肉のステーキを試食しました

スマート調理器具のスタートアップ、JuneとWeberがタッグを組んだ

ステーキのような厚手の肉を調理するには、別売アクセサリーの「温度プローブ」が必携アイテム。この温度プローブを肉に串刺しておくと、内部のおいしい焼き加減(温度)をアプリでモニタリングできます。Pulse 1000には最大2本のプローブを装着して、Weber Connectアプリに情報を送り出せます。

  • 厚みのある肉には別売アクセサリーの「温度プローブ」を挿して焼くと、火の通り具合をWeber Connectアプリで確認できます

Weberは純正品以外の調理器具でも、温度プローブとWeber Connectアプリを活用しておいしく肉が焼けるように、スマートデバイス「Smart Grilling Hub」を商品化しています。海外で先行発売されたSmart Grilling Hubも、間もなく日本で発売が予定されているそうです。

また、Weberはスマート調理家電のスタートアップである米June(ジューン)と協業しながら、電気グリルのPulse 1000にWeber Connectアプリ、Smart Grilling Hubの仕組みが連動するコネクテッド機能を搭載してきました。2021年1月にはJuneとの協力関係をさらに深めるため、WeberがJuneをグループ傘下に収めています。

ホール氏も今後はより両者の連携が密接になり、Weberから多くのスマート調理機器が商品化される可能性があると話しています。2021年内にはガスグリルのGenesisシリーズにも、コネクテッド機能が付いた新製品が登場するというから楽しみです。

  • 日本でも発売が予定されているWeberの「Smart Grilling Hub」(写真右)と温度プローブ(写真左)

Pulse 1000が日本でヒットするの条件とは

欧州・豪州では、電気グリルのPulse 1000を発売後、調理や後片付けが簡単という理由から、特に高齢者のユーザーにバーベキューを楽しむ文化が浸透しつつあるそうです。

  • 日本の食文化にバーベキューを定着させたいと熱く語ってくれたホール氏

今後は日本でも、Pulse 1000のヒットを呼び込むためにはグリル料理のおいしさを伝えるだけでなく、Weber製品のローカライゼーションをさらに深める必要もありそうです。特に都市部では生活空間に限りがあるだけに、アウトドア用のバーベキューグリルとはいえPulse 1000を毎日の食事にも使えるよう、煙をさらに抑えるアクセサリーや調理方法が提案できれば渡りに船です。

Weber Connectアプリには日本の料理だけでなく、日本で手に入る食材を使って「本格的な海外の味」を忠実に再現できるレシピを増やしても面白いかもしれません。将来的には、ユーザー同士でレシピや調理体験をアプリ上に公開・シェアできるサービスもほしいと思いました。老舗グリルメーカーの躍進に注目しましょう。