屋外での撮影はレンズを1本に絞って持ち歩く

エプソンのR-D1xGに対する勢いは止まっていませんが、まだ3本目のレンズは購入していません。ところで、単焦点レンズしか装着できないレンジファインダカメラは、ズームレンズのように1本のレンズで焦点距離を変化させることができません。例えば、一眼レフ用の18-55mmのズームレンズなら、広角から標準まで1本のレンズで可変でカバーすることができます。しかし、レンジファインダカメラで焦点距離を変えて撮影した場合にはレンズそのものをと交換するしかありません。この範囲をライカ純正のレンズで揃えようとすると、「スーパー・エルマーM f3.8/18mm ASPH.」(30万円前後)、「ズミルックスM f1.4/35mm ASPH.」(7月発売予定)、「ズミルックスM f1.4/50mm ASPH.」(40万円前後)の3本のレンズが必要になります。しかも当然ですが、20mmや40mmといった焦点距離は使用できません。また、価格は3本で軽く100万円は超えるでしょう。もちろん、もう少しF値が暗いレンズにするかコシナ製にすればもっと安く購入することはできます。

ライカから「トリ・エルマーM f4/28-35-50mm ASPH.」というレンズがリリースされていました。これは1本のレンズで28mm、35mm、50mmの焦点距離を切り替えることができる特殊なレンズで、30mmや40mmといった中間の値は設定できません。右側の写真でもわかるように28→50→35mmの順で焦点距離が切り替わります。現在は、「トリ・エルマーM f4/16-18-21mm f4 APSH.」というより広角にシフトしたレンズが70万円弱(ビューファインダ付)で発売されています

単焦点レンズを3本を持ち歩けば、かなりの範囲がカバーできるので安心感があるのですが、これに三脚やレリーズといった小物類も用意するとかなりの重量になってしまい、レンジファインダカメラの軽快な機動性が損なわれてしまいます。そこで、あれこれ欲張らずに「今日は28mm勝負」という具合に割り切って機材を少なくすることをお奨めします。単に荷物が減るだけではなく、これを繰り返すことで限られた環境での撮影テクニックが身に付くとともに、どのようなシーンにはどの画角が適しているかが無意識のうちにわかるようになります。

ところで、小物で思い出したのがミニ三脚とセルフタイマー。ミニ三脚は折りたたむと平たくなる優れものです。しかし、一眼レフカメラを載せるとバランスが悪くてうまく使えなかったのですが、R-D1xGでは問題なく使用できました。これは一眼レフカメラのレンズが大きいために重さがレンズ側に偏ってしまい、ミニ三脚では不安定になってしまったようです。

LPL製セルフタイマー「SELF TIMER-L」とミニ三脚。ミニ三脚は日本製ですがメーカー不明で購入時期も記憶にありません。とにかく折りたたむとスペースを取らないタイプなので持ち運びも苦になりません

一緒に写っているセルフタイマーは学生の時に購入したLPLの製品です。当時私が所有していたカメラは、全てセルフタイマーを内蔵していましたが、この製品を使うと内蔵タイマーよりも時間を長くすることができるため、かなり重宝していました。つまり、このタイマーの設定時間にプラスしてカメラ本体のセルフタイマーを使ってシャッターを切ることができるので、スタートしてから撮影までの時間をより多く稼ぐことができるわけです。ただし、R-D1xGは大丈夫なのですが、最近のデジタルカメラはシャッターボタンにレリーズ用のネジがないため、残念ながら装着するとはできません。

セルフタイマーとミニ三脚をR-D1xGとフォクトレンダー「ULTRON 28mm F2」にセッティングした状態。R-D1xGはグリップを外さないと三脚に固定することができないのが少々残念

話は前後しますが、持ち運ぶ機材を最低限に抑えても、ある程度の荷物を持ち歩かなくてはなりません。しかし、私は学生の頃から専用のカメラバッグを持ち歩いて撮影するというのが好きではありませんでした。そのため、自分なりに使いやすい普通のバッグにレンズを突っ込んで出かけていました。今回もそんな感じで、大昔にノベルティーで手に入れたトートバッグに手作りのレンズケースに納めた交換レンズを忍ばせてと言う具合です。レンズケースぐらいは購入しても良かったのですが、量販店やカメラショップに出かける機会がないので部屋の中にあるもので代用しました。そんなわで、まだ交換レンズは全部で2本だけですので持ち歩くとしても大した負担にはなりませんが、迷いは散漫の始まりなので、思い切って切り捨てる習慣をつけるように努力しています。ただし、しっかりとした事前調査を行っての撮影の場合は、新しく購入したフォクトレンダー「COLOR SKOPAR 21mm F4」も手作り専用ケースに入れて持って行くことにしています。

「COLOR SKOPAR 21mm F4」用の手作りのレンズケース。大昔に手に入れたカセットウォークマン用の袋にレンズを入れ、さらに数年前に工作本の執筆をした際に作成した円柱のペンケースを外側に被せて持ち歩いています。直ぐにレンズ交換ができるだけでなく、不安定なバッグの中でもレンズを痛めることがないので便利

小石川後楽園で強い日差しと格闘

ということで、今回は小石川後楽園に出かけていろいろ撮影してみました。東京ドームの隣に位置しているにも関わらず、東京とは思えない時空間を満喫できます。平日の午前中なら比較的空いているので、レトロな世界を撮影したい方にはビッタリかもしれません。ところで、小石川後楽園に出かけた当日は日差が強く、撮影のセオリーから言うと好ましくない条件でした。なぜなら、フラットな日差しの曇天のほうが適しているからです。しかし、日差しが強いと言うことは日陰とのコントラストも強くなるので、凡庸なシーンで面白いイメージに出くわすことがあります。

セコニックの「AUTO-LEADER L-188」。いつ頃購入したのか忘れてしまいましたが、手のひらに収まってしまう入射光専用の露出計です。荷物が多いときに重宝します。入射光式ですが、私は反射光式な使い方もしています。やり方は簡単で、自分の手のひらを入射光式の露出計で測るだけです。仕事柄どちらかというと日焼け気味という方を除き、概ね日本人の手のひらはニュートラルグレーと解釈して問題ないからです。私は学生の頃からこの裏技を使い続けています

AUTO-LEADER L-188で、こまめに測光しながら庭園を散策していると、木立ちの影がいい感じのコントラストを描いている道筋に鳩が舞い降りてきたので慌ててシャッターを切りました。このような撮影箇所では、絞りやシャッター速度、そして被写体との距離を予め設定しておくと素早く対応できていいかもしれません。特に距離に関しては目測処理に慣れておくことをお奨めします(ULTRON 28mm)

木立にいい具合に光が差し込んでいたのでシャッターを切りましたが、トリミングに失敗しました。もう少し左に寄せて撮影した方が良かったと後悔。レンジファインダカメラを初めて使う人は「思ったように写っていない」「思ったより写っている」の繰り返しになると思います(ULTRON 28mm)

小石川後楽園の大泉水に映るビルディングを横切る錦鯉。ほぼ偶発的な瞬間だったのですが、おおよそ3m程度にいつもピントを合わせていたので速攻処理が可能でした。なお、水面に浮いていた木の葉の欠片などをレタッチ処理で消しています(ULTRON 28mm)

上半分と下半分がいい感じのコントラストを出していたのが気に入っていますが、画面中央上に若干空が写り込んでいて残念。もう少し左右どちらかに撮影位置を移動し、数カット撮影すれば良かったようです。レタッチでごまかしてしまうことは簡単ですが、この連載では可能な限りレタッチは行わないことに決めています。後から修正できるという気持ちで撮影すると、どうしても煩わしさが作品に出てしまうからです(ULTRON 28mm)

日差しの強い日だからこそ絵になるシーンですね。平日の午前中とはいえ、小石川後楽園にはそれなりに人が入園しているので、人が写りこまないように待機しているのが一番大変な作業かもしれまん。なお、ビューファインダを使って広角レンズで撮影すると、予期せぬものが画面の端に写り込んでいることがあります。でも、これこそレンジファインダカメラの楽しさと言えます(ULTRON 28mm)

特に断りがない限り作例はすべてノートリミングでノーレタッチです。また、撮影に際し最高画質のRAWとJPEGの同時書き込み設定とし、Photoshop CS4でRAW現像を行っています。

失敗談
小石川後楽園はとても気に入ってしまいました。調べてみると都内には、旧岩崎邸庭園 、旧古河庭園、旧芝離宮恩賜庭園、向島百花園、小石川後楽園、清澄庭園、殿ヶ谷戸庭園、浜離宮恩賜庭園、六義園の九庭園があるそうです。いくつかの庭園は行ったことがありましたが、知らない庭園もあってびっくりしています。そのうち遊びに行きたいと思っています。しかし、今回の小石川後楽園は東京ドームやジェットコースター、近隣の構想ビルなどが画面に入ってしまうこともあるので、意外に超広角レンズは不向きかもしれません。できるだけ写り込まないように注意するのが大変でした。やはり撮影場所は本番前に事前調査した方がいいですね。