どの場所で撮影したかわからなくなる場合
エプソンのR-D1xGを持って街歩きをしていると地図や旅行ガイドを片手に史跡を訪ね歩いている人たちや夫婦でウォーキングしている人たちに出会うことが多い。彼らはきちんと目的地を設定して地図に従って歩いているので見るべき遺構や建物の見落としは少ない。だから後日、「あの風景はこの辺りだったよね」と、地図を見ながら歩いたところを振り返ることもできる。
一方、写真撮影が主な目的の場合には、気になる被写体があれば角を曲がるし、路地の向こうに何か見えれば遠回りでもそちらに向かってしまい、地図を持っていても最初に考えていたルートのまま進むことは少ない。これは主な目的が「景色を見て楽しむ」ことではなく「印象に残る被写体を見つけて良い写真を撮る」という違いがあるからだ。そのため、適当な路地に入って撮影してしまうと、後でどの場所で撮ったのか正確な位置がわからなくなることがよくある。
そんなときに威力を発揮するのがGPS(Global Positioning System)だ。GPSといえば、人工衛星が発する信号を受信して現在位置や進行方向を表示するカーナビが馴染みが深い。このGPSを利用してデジタルカメラの写真データに位置情報(ジオタグ)を埋め込むことができるのである。ジオタグはデジタルカメラの写真の諸情報を保存するExifの情報の一つで、緯度、経度などを記録しておくことができる。このジオタグを利用すると、従来のような撮影の日時だけでなく、撮影地という観点でも写真を整理することができるというわけだ。
GPSレシーバ未搭載のデジタルカメラで位置を特定するには
このようにとても便利なジオタグだが問題が一つある。ニコンのCOOLPIX P6000のようなGPS機能が搭載されているカメラがほとんど存在しないのだ。そのため、デジタルカメラで撮影をしてもジオタグに情報が記録されることまずないといってよい。これは、R-D1xGも同様である。
では、R-D1xGのユーザーは、ジオタグがまったく利用できないかというとそうでもない。COOLPIX P6000のようにGPSレシーバが内蔵されていなくても同じような機能を持つ携帯用のGPSレシーバを持ち歩いて時間ごとの位置情報を記録しておき、それを写真データの撮影時刻と一致させればよいのだ。つまり、R-D1の内蔵時計の時刻を正確に設定しておきさえすれば、後で撮影時刻から緯度と経度を割り出すことができる。
そんな、R-D1xGの撮影の友に利便性が高く有用なのがソニーから2009年3月に発売になったGPS-CS3K(1万8,900円)だ。GPSによる位置測定と記録に特化した製品で、単体では内蔵メモリに15秒ごとにひたすら位置情報を記録するだけのハードウェアだ。しかし、SDメモリーカードスロットを持っており、JPEGならば写真撮影後にGPS-CS3Kにメモリーカードを入れてマッチング操作するだけで、数分で写真にジオタグを付加してくれる。従来は、パソコンを使用してGPSのログデータを編集し、専用のソフトを利用して写真と一致させる作業が必要だったが、GPS-CS3Kなら撮影帰りの電車の中でジオタグの処理ができる。ただし、RAWデータで撮影する際にはGPS本体内でマッチングができないので、従来通り帰宅後にパソコンで処理する必要がある。
今回、このGPS-CS3KとR-D1xGにコシナのフォクトレンダー「SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical」(6万5,000円)を持って歩いたのが三ノ輪から浅草。東京に残る路面電車2路線のうちの1つである都電荒川線の起点である三ノ輪、江戸の遊郭だった吉原を経由して浅草に裏からアプローチする約5kmの散歩。途中、現在でも風俗街で知られる吉原ではさすがにカメラを首からぶら下げて歩くのは憚られるが、昭和の香り残る平坦で歩きやすい道である。なお、今回の風景写真にはジオタグを付加してあるので、地図への表示などを試してみて欲しい。
東京都内で2線のみ残る路面電車のうち都電荒川線は、ここ三ノ輪と早稲田を結ぶ。1両のみの車両は、普通に生活の足だ。祝日には日の丸を掲げて走るのも昔と同様である |
停留所のすぐ横にある昔ながらの煎餅屋。はかり売りや一枚売りをするのが、いまのスーパーでパックされて売られている煎餅と違うところだ。古い町並みには煎餅屋が現役で残る |
日本堤にある銭湯「廿世紀浴場」(左)。昭和初期のアールデコ風銭湯でいまは営業していないが建物はまだ残されている。東京都内の銭湯といえば、右の「曙湯」のような立派な破風がついた寺社風の建物が多いが、廿世紀浴場はかなり特徴的でこれが80年前に建築された頃はかなりの異彩を放っただろう。ちなみに「廿」は「にじゅう」と読む |