• 夜来たる

Windows 11に付属する「ターミナル」には、標準で使われる安定版(StableあるいはLatest)のほかに、3つのチャンネルで異なるバージョンが配布されている。

配布方法、インストール方法は、それぞれ異なり、インストール方法によっては、同一チャネルの複数バージョンを共存させることが可能になる。今回は、このあたりを整理する。

チャネルとは?

一般的に使われるのは「ターミナル」の安定版だが、オープンソースで活発に開発が続くターミナルでは、サードパーティのソフトウェア検証などのためにバージョンが先行しているものを配布している。

チャネルには、「安定版(Stable)」、「プレビュー版(Preview)」、「カナリー版(Canary)」、「開発版(Dev)」の4つがある(表01)。

  • ■表01

通常は、Microsoftストアなどからも入手(および自動アップデート)が可能な「安定版」、「プレビュー版」の2つのチャンネルを利用する。しかし、ソフトウェアの検証などにもう少し時間を取りたい場合などのために、「Canary」チャンネルが用意されている。これは、最新のソースコードから、毎日ビルド(ソースコードから実行ファイルや関連ファイルを生成する作業)を行い、夜中に公開を行うものだ。一般にこうしたリリースを「ナイトリービルド(nightly build)」という。

これに対して「Dev版」は、GitHubに公開されているソースコードからユーザーが直接ビルドを行ったもの。このため「Dev」チャンネルでは、バイナリの配布は行われていない。

ある時点で見ると、それぞれのチャンネルで、ターミナルのバージョンが異なる。最も大きなバージョン番号を持つのは、ビルド直後のDev版であり、次がカナリー版となる。これに続く、プレビュー版は、ビルド後に一定のテストや評価を行い、基準を満たしたものだけが公開される。

プレビュー版として一定期間、公開されたのち、製品としての基準を満たしたものが安定版として公開される。

配布とインストール

ターミナルの配布形態には、「ソースコード」、「パッケージ」、「ZIP」、「ZIP+ポータブル設定」の4つがある。また、配布場所も「GitHub」、「Microsoftストア」、「winget(リポジトリ)」、「特定URLからダウンロード」の4種類があり、チャンネルごとに違いがある(表02)。

  • ■表02

配布形態により、インストールに違いが出る。インストール方法には「パッケージインストール」、「ZIP」、「ポータブル」の3つの方法がある(表03)。なお、ZIP版は、手動でポータブルインストールに変換することが可能だ。

  • ■表03

パッケージインストールは、標準的な方法だが、安定版とプレビュー版、カナリー版をそれぞれ1つしかインストールすることができず、異なるバージョンを同時に使うことができない。ソフトウェアの評価では、複数バージョンでの評価が必要になることもある。このために用意されたのがポータブルインストールだ。

ZIPインストールは、任意のディレクトリにZIPファイルの内容を解凍すれば動作する。

ZIPインストールをポータブルインストールにするには、インストール先ディレクトリ(WindowsTerminal.exeのあるディレクトリ)に「.portable」という名前のファイルを作成する。中身は何もなくてよい。

ポータブルインストールは、任意のディレクトリにインストールが可能で、同一チャンネルの複数バージョンを同時にインストールできる。もちろん、異なるチャンネルも同居可能だ。ただし、ポータブルインストールは、インストール場所に設定ファイルを置くため、同一設定で使うためには、settings.jsonファイルをコピーする必要がある。

今回のタイトルネタは、nightly buildから、アシモフの「夜来たる」(ハヤカワ文庫 SF。原題Night Fall、1941年)である。6つの太陽を持ち、夜のない惑星ラガッシュに2049年に一回の日食が来る。この惑星では、過去に9回、文明が破壊されたという。異星における異星人のパニックを描くというコンセプトは最もSFらしいものといえる。もっとも、異星人に多少の人間味があるのはご愛敬か。