ユーザにとって不必要な要素は見えないようにする、それがAppleの流儀だ。先頭が「.」から始まるファイル/フォルダをFinderに表示しないことも、/usrや/varといったBSD UNIX以来の領域を隠ぺいしてしまうことも、その流儀に従えば当然の結果ということになる。

アプリケーションも例外ではなく、FinderやDockといったシステム上重要なものは、Finderからは直接アクセスしにくい階層の奥深く(/System/Library/CoreServices)に保存されている。「このMacについて(About This Mac.app)」や「アーカイブユーティリティ(Archive Utility.app)」といった、Finderから直接起動しないアプリケーションについても同様だ。

しかし、Mojaveには例外がある。メディアが配信するニュース記事を表示する「News(News.app)」だ。iOS 9で登場したニュースアプリのMac版だが、メディアとの契約の関係だろうか、日本語環境では隠ぺいされている。Finderでアプリケーションフォルダを開いても「N」アイコンは見当たらないが、不可視属性のファイル/フォルダを表示するショートカットキー(Command+SHIFT+「.」)を押せば、そこに姿を現すのだ。

Finder/Dockからの起動にこだわらなければ、Terminalで「open」コマンドを使うという方法もある。こちらはFinderの設定を変更する必要がないうえに、入力する文字数もわずかなのでかんたんだ。

このように存在が隠され、起動に若干手間はかかるが、それも初回に限ってのこと。いちど起動してしまえば、アイコンを左方向へドラッグしてDockに登録できるし、届いた通知から起動することもできる。もちろん日本語環境でOK、地域の設定も「日本」のままでかまわない。

$ open -a News
  • Mojaveで追加された「News」は、日本語環境でも利用できる

  • 不可視属性に設定されているため、FinderではCommand+SHIFT+「.」を押さなければ表示されない

  • このようにニュース(ストーリー)の到着を通知で知ることもできる

Mac版Newsだが、日本での利用は制限が多い。起動直後に表示される「Today」画面にはいろいろな記事が表示されているものの、そのすべては英文で日本語ニュースは表示されない。「Evening Digest」や「News Top Stories」などの項目は、選択すると「This story isn't currently available in your region.」と書かれたダイアログが表示され、読むことができない。

しかし、アプリとしての基本機能はひととおり利用できる。配信されたストーリー(ニュース記事のこと)にあるハートマーク(Like)をクリックすれば、自分が関心のあるニュースカテゴリを学習のうえ配信してくれるようになる。破れたハートマーク(Dislike)はその逆に、関心が低いニュースであることをアプリに学習させるというわけだ。

ニュース記事に動画が含まれる場合はそれを再生できるし、BloombergやThe Wall Street Journalといったニュースソースのフォローもできる(This story isn't...と表示されフォローできない媒体は多いが)。ニュースの到着を知らせてくれる通知機能もあるし、ニュースアプリの起動後はシステム環境設定の通知パネルに「News」項目が追加され、通知センターに表示するかどうかや通知スタイル(なし/バナー/通知パネル)の選択が可能になる。

  • チャンネルごとに通知の有無を選択できる

  • 閲覧したストーリーの履歴を遡ることも

ストーリーには「https://apple.news/」から始まる一意のURLが割り当てられる。ストーリーを開いてCommand+Cを押すか、ストーリー一覧画面上をControl+クリックすると現れるコンテキストメニューで「Copy Link」を選択すればコピーできるので、メールにリンクを貼り付けるなどしてもいい。このコンテキストメニューからは、AirDropなどの選択肢が用意された共有メニューも選択できるので、活用してもいいだろう。

このように、配信元/ニュースソースは限定されるものの、表示したストーリーは保存してあとで読めるし、表示履歴を遡ることもできる。目下のところ、正式なサービス提供エリアはアメリカとイギリス、オーストラリアに限定されるため日本語ニュースの配信は期待できないものの、日々英語ニュースをチェックしている人にとっては利用価値があるはずだ。

  • ストーリーを近くのMacやiPhoneにAirDropしたり、メモに貼り付けたりできる