残暑厳しき折なれど、暦の上では秋。秋といえば……公開予定のMavericksはどうなっている? 本稿執筆時点でリリースされていないため、今回は「知られざる音声入力のワザ」をお届けする。

OS Xと音声入力の可能性

iOSの「Siri」で注目を集めたAppleの音声認識への取り組みは、Mountain LionのときOS Xでも始まった。英語以外にも日本語やフランス語、ドイツ語、中国語(北京語/広東語)など複数の言語に対応、マイクに向かって話しかけると、その内容がテキストに変換されてワープロなどのソフトのカーソル位置へ挿入できるようになった。SiriのようにOSの処理体系と連携はしないが、高い認識精度により実用的なレベルで口述筆記が可能になったことは、かなりのインパクトを持って受けとめられたと記憶している。

しかし、音声入力を活用しているという話を耳にすることは少ない。誤変換の確率を考えるとキー入力のほうが確実だからか、それとも独り言のようで気恥ずかしいからか、理由は定かでないものの、音声入力を積極的に活用しているユーザは少数派だ。確かに口述筆記が便利な場面はあるものの、キーボードとマウス(OS Xではトラックパッドに置き換えられつつあるが)のポジションを脅かすほどの存在には成熟していない。UIは1日にして成らず、といったところだろうか。

それでも、Appleは音声入力の可能性を見捨てることはないように思える。現時点ではAppleが掲げる「iOSとの融合」の一環としてOS Xに持ち込んだ技術に過ぎないが、洗練されればキーボード&マウスでは難しかったことも可能になるはず。まだまだこれから、伸びしろの多い技術なのだ。

「Mountain Lionで日本語に対応した音声入力。Siriと同様、クラウド上の音声認識エンジンを利用している

実装は一般的なIMと同じため、文字入力が可能な場面の大半で利用できる。Finderでファイル名を変更することも可能だ

音声入力であんなこと、こんなこと

OS Xの音声入力は、実装としては日本語入力システムなどのインプットメソッド(IM)に近い。Finderでファイル名を入力したり、QuickLookで検索語を入力したり、カレンダーでイベントを入力したり……テキスト入力が可能なアプリケーションであれば、「ことえり」などIMの代わりに利用できる。この点については、改めて述べるまでもないだろう。

それだけでは、慣れ親しんだキー入力に比べ実用的な意味での(入力速度など)魅力に欠けるが、キーボードでは入力しにくい文字では重宝する。入力可能な文字種は限られるが、いちいち文字パレットを開く必要がないぶん、作業効率は向上する。

主要な記号や顔文字の読みについては、AppleのWebサイトを確認いただくとして、ここではあまり知られていないものをいくつかピックアップしてみよう。

  • 1 〒

なぜかAppleのWebサイトには掲載されていないが、「ゆうびん」と読み上げると「〒」を入力できる。「〒345-0001」といったテキストも、すんなりと入力できるので、覚えておいて損のないフレーズといえる。

「ゆうびん」で「〒」を音声入力することは、一見地味だが便利に使える

  • 2 音符のふしぎ

ただ「おんぷ」と読み上げると、「♪」(八分音符)が入力される。しかし「はちぶおんぷ」と読み上げると、なぜか「」(四分音符)が入力されてしまう。「しぶんおんぷ」と読み上げると「♪」が入力されるので、おそらくクラウド上の音声認識エンジンが四分音符と八分音符を誤解しているのだろう。なお、「じゅうろくぶおんぷ」と読み上げると、連桁付きの十六分音符「」が入力される。

なぜか四分音符と八分音符が反対に登録されている

  • 3 会社の略称

法人相手の仕事をしていると、株式会社が「(株)」といった略称を使うときがある。礼を失するため相手に渡す文書には使えないが、それ以外であれば問題ない。実はこれ、音声入力の隠れた得意ワザだ。入力方法はかんたん、ただ「かぶしきがいしゃ」または「ゆうげんがいしゃ」と読み上げればOK。なお、「(株)マイナビ」」などいわゆるマエカブの場合、「かぶしきがいしゃまいなび」と読み上げればいいが、アトカブの場合は「マイナビ株式会社」のように略称とならないので注意。「(株)」とだけ入力したいときには、「かぶしきがいしゃ」とだけ読み上げよう。

マエカブは得意だがアトカブは苦手らしい