当コラムも年内はこれが最後。iPod touchやLeopardの発売というビッグイベントもあり、ネタに困らない1年だったといえます。さて、来年はどうなりますか……ともあれ、読者の皆様におかれましてはよいお年をお迎えください。

さて、2007年ラストを飾る今回は、Leopardに付属のMail.app(以下、Apple Mail)について。進化を続けるWebブラウザとは異なり、新機能の追加という点では"枯れた"印象の強いメールクライアントの分野だが、開けてビックリApple Mail 3には画期的な新機能がいくつか用意されていた。そのうち今ひとつ基準がハッキリしない「データ検出機能」を中心に、話を展開してみよう。

まずは新機能を整理

すでにLeopardへ移行済のユーザにはいわずもがなだが、Apple Mail 3には「データ検出機能」と「メモ」、そして「To Do」(iCalとの連携) という3つの新機能が用意されている。HTMLメールの作成に便利なテンプレート群の追加や、RSSサポートの強化も新機能に含まれるが、目新しさの点では前3種に見劣りする感は否めない。

最初の「データ検出機能」は、メッセージに含まれる住所や電話番号を抽出、アドレスブックに登録するというもの。Apple Mailが住所や電話番号とみなした文字列の上へカーソルを重ねると、「▼」が現れ、そのままアドレスブックに住所データとして登録できる。電話番号は画面全体に拡大表示できるので、電話をかけるときも大助かりだ。

メッセージに含まれる住所をかんたんにアドレスブックへ登録できる

「メモ」にはWebページをそのまま貼り付けられる

次の「メモ」は、メールクライアントとしての機能というよりは、まさに備忘録代わりの機能だ。ツールバー上のボタンをクリックすると現れる画面には、文章を入力するもよし、画像や文書ファイルをドラッグ & ドロップして保存するもよし。Safariで表示したWebページも、レイアウトを崩すことなく画像やフォントもそのままにページ全体をペーストできるので、GTD (Getting Things Done) ソフト的な使い方もできる。

最後の「To Do」は、iCalと連動したリマインダー機能だ。メッセージやメモ上の任意の範囲を選択してからマウスを右クリックし、現れたコンテクストメニューで「新規To Do」を選択すれば、iCalのTo Doとして登録できる。期限や完了日などの設定もApple Mailから実行可能だ。つまりApple MailにiCalのフロントエンドとしての機能が装備されたわけで、いちいち両アプリケーション間を行き来する必要がなくなったという点で、画期的だといえる。

登録したTo DoをApple Mail上で編集することも可能

自動検出の「お約束」

前述した3つの新機能のうち、「メモ」と「To Do」は特に疑問を感じずに利用しているが、「データ検出機能」の挙動が今ひとつ信用できない。メール差出人の住所をアドレスブックへ登録しようと住所部分にマウスカーソルを重ねても、ときどき反応しないことがあるのだ。原因を突き止めなければ、どうも落ち着かない。

そこでいくつか仮説を立て、それぞれ条件に一致するメールを自分宛に送信し、自動検出されるかどうか確かめてみた。その仮説は以下のとおり。

  1. 郵便番号が住所の近くになければならない
  2. 住所にはある程度の正確性が必要。架空の地名には反応しない
  3. 住所が複数行におよぶ場合、2行目以降は検出されない

郵便番号は「〒」から始まらなくてもOK

仮説1については、あまり気にする必要はなさそう。郵便番号と住所が2行にまたがる場合、どちらも問題なく検出され、郵便番号の書式も「〒123-4567」と「郵便番号:123-4567」の両方が利用できた。

仮説2は、「東京都博多区」や「神奈川県大阪市千代田区」といったインチキな住所でも検出されたため、少なくとも区・市町村単位の識別は行われていないことが確認できた。ただし、「東京都一ツ橋」のように区をスキップした場合は、検出に失敗したため、住所かどうか判定するアルゴリズムには都→区、県→市→区のような検出パターンがあるものと推測される。なお、「神奈川県大阪市」は○で「ぷりぷり県横浜市」は×、といった具合に、実在しない都道府県名から始まる場合もアウトのようだ。

仮説3は、筆者が試したかぎりでは正解。住所が2行にまたがる場合、(建物名などが入る)2行目はスルーされてしまった。また、1行にまとめた場合でも、「東京都千代田区一ツ橋1-1-1 パレスサイドビル6F 東コア」(編集部の住所です)では「東コア」部分が欠けてしまうなど、必ずしもすべての文字が検出されるわけではないため、区切り文字としてスペースを多用するのは避けたほうが無難なようだ。

実在しない区名(実際は「千代田区一ツ橋」)はスルーされた

後半の「東コア」の部分が検出されていないことに注目

長くなったが、結論を言ってしまうと、データ検出機能の精度は今ひとつ……というか融通がきかない。今回のテストである程度は見極めできたが、途中のスペースにより住所の後半部分が検出されないこともあるなど、運用の難しさを感じた。現状では、データの欠落なしに登録できればラッキー、と認識しておいたほうがよさそうだ。