「秀丸エディタ」。Windows 3.1の頃から活躍する息の長い定番ソフト。文章作成・編集に便利なさまざまな機能を搭載した、非常に高機能なテキストエディタだ

文章を作成するためのソフトといえば真っ先に思い浮かぶのが「Word」などのワープロソフトですが、実はもっと便利なソフトがあるのを知っていますか?

それが今回紹介する「秀丸エディタ」を代表とするテキストエディタと呼ばれるソフトです。Windowsに標準で用意されている「メモ帳」も、テキストエディタの仲間になります。

ワープロが最終的に「文章を印刷する」ことを目的に、文章の修飾機能を充実させたソフトなのに対して、テキストエディタは「文章を書く」こと自体が目的で、文章を作成・編集するための機能に重点を置いているのが主な違いです。このため、テキストエディタには文章を修飾する機能はほとんどありませんが、その分動作が軽快で一瞬で起動するほか、シンプルに文字情報だけを表示するため無駄な余白などがなく、表示スペースを有効に活用できます。

また、ワープロの文書ファイルが各ソフトの専用形式になっているのに対して、テキストエディタは「テキストファイル」という文字情報だけを保存した汎用性の高いデータを扱うため、作成したデータをさまざまなソフトやハードで利用できるのも特長です。

名称 秀丸エディタ
バージョン 7.00
作者 秀まるお
種別 シェアウェア
動作環境 Windows 95 / 98 / Me / 2000 / XP / Vista

高機能テキストエディタの大本命

「秀丸エディタ」(以降秀丸)は「Windows 3.1」の頃からバージョンアップを繰り返してきた老舗ソフトで、4,200円と有料ながら、テキストエディタといえば「秀丸」というくらい有名で人気のあるソフトです。

標準の「メモ帳」と比べた場合、軽快な動作はそのままに、最大1,000万行におよぶ巨大ファイルの編集に対応するほか、外国語を含むさまざまな文字コードのテキストファイルを文字化けなしに開けるなど、大幅に機能が強化されています。

さらに、複数のファイルを同時に開いて編集できる「タブエディタ」として利用できたり、長文編集に便利な「アウトライン」機能を搭載するなど、文章を効率的に作成・編集するための機能が数多く追加されていて、まさにテキストエディタの本命ともいうべきソフトとなっています。

複数ファイルを同時に比較・編集

複数のページを1枚のウインドウで同時に開けるタブ機能は、「Firefox」などのタブブラウザでおなじみの機能ですが、「秀丸」も同様に「タブエディタ」としての機能を備えています。1枚のウインドウで複数のファイルを切り換えながら作業できるので、画面の狭いノートPCでは特に便利な機能でしょう。

また、作業中にタブ機能をOn/Offして、複数のウインドウに分離したり再度まとめたりもできるので、状況に応じた使い分けが可能です。さらに、1枚のウインドウを2つに分割して、1つのファイルの先頭と末尾など異なる箇所を同時に表示しながら作業できる「ウインドウ分割」や、複数ウインドウの内容を比較して相違点を探す機能なども用意されていて、文章作成時にありがちな参照と比較をスムーズに行えます。

1枚のウィンドウで複数のファイルを開いて、切り換えながら作業できる「タブエディタ」機能を搭載。右クリックメニューによるタブ操作も可能だ

「ウィンドウ分割」を利用すれば、画面を2つに分割してひとつのファイルの異なる場所を同時に見ながら作業できる

アウトライン機能で編集作業を効率的に

レポートや論文など長い文章を書くには事前の文章構成が大切です。しかし、実際に書き始めてみると、書いている途中で章の順番の入れ替えなどが必要になることも珍しくありません。こんな時に活躍するのが「アウトライン」関連機能です。

たとえば、「■」や「第○章」など特定の記号や文字列が含まれる行を見出しとして強調表示したり、見出し一覧を表示してブロック単位で文章の順番を入れ換えることができます。これらを上手く活用すれば、大規模な文章の編集作業も苦になりません。

大規模な文章の編集に便利な「アウトライン」機能も搭載する。見出しを一覧表示し、「切り抜き」や「貼り付け」を駆使して、文章の前後関係をブロック単位で入れ換えることが可能だ

ブロック単位で、本文を折り畳んだり編集可能箇所を限定するといった機能も備える

クリップボード履歴で文章入力を効率的に

「秀丸」には常駐モードがあり、タスクトレイアイコンに常駐させることで、キーボードショートカットを利用して新規作成画面や以前編集したファイルを素早く呼び出せます。さらに、常駐モードでは「クリップボード履歴」を利用して、過去にコピーした文字列を一覧表示して再利用できるようになります。

タスクトレイへの常駐機能を利用すれば、キーボードショートカットを利用して、素早く「秀丸エディタ」を起動できる

過去にコピーした文章を一覧から選んで再利用できる「クリップボード履歴」。「秀丸エディタ」が常駐していれば、ほかのソフトからの利用も可能だ

文字数固定の文章も楽々作成

原稿用紙○枚分など、文字数の決められた文章執筆にも「秀丸」は最適です。1行辺りの文字数を自由に指定できるほか、桁数を表示する「ルーラー」や行番号の表示、選択範囲の文字数をカウントする機能など、文字数確認に便利な機能がそろっています。

強力なカスタマイズ機能で自分専用に

このように「秀丸」は、強力な機能を持った使いやすいソフトですが、カスタマイズ機能も充実しています。

文字サイズや色はもちろん、キーボードショートカットからメニューの内容まで、実にさまざまな設定を変更可能です。さらに、プログラミングによっていろいろな機能を追加できる強力な「マクロ」機能も用意されています。

愛用者の多いソフトだけに、さまざまな機能を持ったマクロが有志の手によって制作・公開されていて、プログラムを組めない人でも簡単に機能を追加可能です。「秀丸」の公式サイトにはマクロを集めたライブラリが用意されていますので、興味のある人は一度のぞいてみるといいでしょう。

また、連載第1回で紹介した「Becky! Internet Mail」など一部のメールソフトでは外部エディタを指定できるので、「秀丸」を使ってメールを書くといった使い方もできます。

「秀丸エディタ」にはC言語に似た文法を採用した強力な「マクロ」機能が搭載されており、プログラムミング次第でさまざまな機能を作成、追加できる

公式サイトのマクロライブラリには、有志の手で作成されたさまざまなマクロが登録されており、プログラムの知識のない人でも簡単に導入。機能を追加可能だ

長文を書く人には必携のソフト

最新版のv7では、携帯電話の推測変換風の入力支援機能「単語補完」が搭載された。入力中の単語や文章を推測して候補リストを表示することで、長い単語や文章を入力する手間を省ける

ひと昔前は、文章作成といえば紙への印刷が前提でしたが、最近ではWebにメールにと印刷を前提としない文章を書く機会も随分と増えてきました。また「秀丸」なら文章を書くための機能はワープロ以上ですから、「秀丸」で書いた文章にワープロで修飾を加えて印刷するといった使い方もお勧めです。

さらに、今年9月には最新版のv7が新たに公開され、携帯電話の推測変換に似た入力支援機能の「単語補完」が新たに搭載されたほか、検索・置換機能の強化が図られるなど、今でも精力的な改良が続けられています。レポートやブログなど、日常的に長い文章を書く機会がある人なら、真っ先に試してみる価値のあるソフトといえるでしょう。