日立グローバルライフソリューションズは、業務用空調機とIoTを組み合わせた会議室管理サービス「exiida(エクシーダ)会議室管理」の提供を、2020年4月1日から開始する。

会議室の天井中央部に設置されることが多い業務用空調機は、会議室全体の状況を捉えることができる場所にあることから、センサーを活用した室内管理に適している。また、電源が確保されていること、センサーを設置するスペースがあることからセンサーユニットなどの追加が可能である点も特徴だ。そこで、会議室内のデータの収集、蓄積、分析を行うことで、会議室管理という新たなサービスの提供につなげた。今後は、会議室を対象にした、さらなる付加価値サービスの創出にも取り組む考えだ。

exiidaは、「ex(拡張)」「internet(インターネット)」「individuality(個性)」「data(データ)」を組み合わせた同社のサービスブランド。日立の業務用空調・冷熱システムをインターネットにつなぎ、収集される運転データや、センサー情報などをもとに、新たな価値を提供するものになる。

  • 今後、業務用空調・冷熱システムのサービスブランドとして「exiida」を展開していく

    「exiida」のロゴを新たに制作。今後、業務用空調・冷熱システムのサービスブランドとして展開していく

2018年4月には第1弾として、予兆診断を行う「exiida遠隔監視サービス」の提供を開始しており、すでに7000台が稼働。今回の「exiida会議室管理」は、それに続くサービスとなる。

少ない工事で空調機器を会議室管理システム化

日立グローバルライフソリューションズ 空調事業統括本部空調システムエンジニアリング事業本部企画部IoT推進グループ担当部長の馬場宣明氏は、「exiidaでは、サービスを開発する当初から、業務用空調機そのものの管理を行う方向性とともに、新たな価値を創出する方向性も追求してきた。第1弾のexiida遠隔監視サービスが、空調機器の管理性を高めるものであるのに対して、今回のexiida会議室管理は、会議室の困りごとを解決するサービスになる」と位置づける。

  • 日立グローバルライフソリューションズ 空調事業統括本部空調システムエンジニアリング事業本部企画部IoT推進グループ担当部長の馬場宣明氏

exiida会議室管理は、同社の業務用空調機「てんかせ4方向」の標準コーナーパネルに、人感センサーやLEDなどを搭載した専用ユニットを取り付けることで利用できる。在室を検知するとともに、会議終了時刻を知らせる予鈴機能により、会議室の有効な活用や会議時間の管理を可能にし、会議室管理業務の効率化を実現できる。

協和エクシオの100%子会社であるWHEREが開発した、Bluetooth通信を使ったIoT専用LAN「EXBeaconプラットフォーム」を活用。通信用配線工事をなくし、低コストで、手間が少ない設置を可能にしているという。

「空調機器本体のコーナーパネルを専用ユニットに交換し、制御基板に電源を接続するだけで完了するため、新たな電源工事は不要。また、会議室管理用パネルとゲートウェイ間は無線通信を行うため、通信にかかる工事も最小限で済む。10室の会議室に専用ユニットを取り付ける作業でも、約2時間で終了した。専門知識が必要なく、容易に設置できる」(同)とする。

IoTとセンサーで会議室はどう変わる?

会議室の利用者は、タブレットやスマートフォンなどを使って、外出先からでも会議室の予約状況や在室状況を確認したり、予約が行えたりするほか、管理者も手元のPCやタブレットなどを利用し、Webブラウザから管理できる。

  • 会議室の予約画面

予約した会議室に入ると、人感センサーが在室になったことを検知する。専用ユニットには、4つの小さなLEDと、大きなLEDがついており、4つのLEDは、会議開始時点ではすべて緑色だが、会議終了時間15分前には、ひとつめのLEDが赤に変わり、5分前には2つめも赤に変わる。さらに1分前には、3個が赤くなり、終了時間になるとすべてが赤に変わり、大きなLEDが赤色で点滅する。また、予鈴による通知も行い、終了時間を知らせる。

  • 入室時にはすべてのLEDが緑色に点灯している。パネルの透明部分にセンサーが埋め込まれている

  • 会議時間の終了が近づくとLEDが赤色に変わる

一方、管理画面では、部屋ごとに在室を検知のほか、部屋ごとに、「予約あり/利用あり」、「予約あり/利用なし」、「予約なし/利用あり」、「予約なし/利用なし」を色分けで表示する。空調機が2台設置してある大きめの会議室では、それぞれの検知データを表示するため、10人が利用できる会議室で2人しか利用していない場合などは、片方の空調機では「検知あり」となり、同じ部屋のもうひとつの空調機では「検知なし」と表示されるため、適正な人数で会議室が使われていないこともわかる。

  • 管理画面から会議室の稼働率などをみることができる

また、一定の時間が経過すると、不在時自動キャンセル機能によって、会議室の予約を取り消し、別の人が会議室を利用できるようになる。同機能が作動する時間は任意に設定できる。

仮に、会議室が埋まっている際にも、予約画面上から、「予約あり/予約なし」の部屋にカーソルをあわせると、予約した社員の連絡先などがわかり、その場で連絡をして、使用する予定がないことがわかれば、すぐにその会議室を利用することも可能だ。

これらの機能によって、空予約の問題も解決し、会議室を有効利用できるというわけだ。

「会議室の予約は、早い者勝ちという仕組みの企業が多く、会議室を早い段階から予約する傾向が強い。だが、スケジュール変更となった場合、自分のスケジュールは変更したが、会議室の予約はキャンセルしていなかったということが、多くの企業で見られており、結果として、予約されたまま使われない状況が起きている。exiida会議室管理によって、会議室の有効活用が図れるようになる」(日立グローバルライフソリューションズ 空調事業統括本部空調システムエンジニアリング事業本部企画部IoT推進グループ主任の齋藤喜久氏)という。

  • 日立グローバルライフソリューションズ 空調事業統括本部空調システムエンジニアリング事業本部企画部IoT推進グループ主任の齋藤喜久氏

そして、これらのデータをもとに、部屋ごとの予約率、稼働率、予約利用率、空予約回数などの分析が可能であり、空予約が多い社員や組織を特定するといったことも可能だ。また、一日単位で予約した会議室が実際にはどれぐらいの時間が利用されているのかといったことも表示できる。分析結果をもとに、会議室の有効な運用に加え、会議室のレイアウト変更などに反映することも可能になる。

日立グローバルライフソリューションズでも、2017年8月から、東京・西新橋の日立愛宕別館の2フロア24室の会議室において、exiida会議室管理の試験運用を開始。効率的な会議室の運用を実現するとともに、空予約の実態などのデータを収集できたという。また、試験運用を通じて、空調機のLEDによる告知ではわかりにくいため、予鈴機能を追加するといった改良も行っている。なお、応接室や社長室など、来客で使用する部屋などでは、予鈴機能をオフにするなど、個別の設定も可能だ。

対象となる製品は、2014年発売に発売された「てんかせ4方向」で、同製品は年間7000台が販売されている。また、2021年1月を目標に、壁掛けや会議用モニターの上部に設置できる独立型ユニットも製品化する予定で、「てんかせ4方向」が導入されていない会議室にも設置できるようにする。今後3年間の想定では、1500台のexiida会議室管理の利用を見込んでいるという。

  • 壁掛けや会議用モニターの上部に設置できる独立型ユニットも製品化する予定(写真はプロトタイプ)

またexiida会議室管理は、サブスクリプション方式での提供も特徴だ。専用ユニットのほか、ゲートウェイの「EXGateway」、中継器の「EXBeacon」、LTEルーターをセットにして、一室あたり月額2500円~3500円で提供する。

「会議室フロアが分かれている場合などには、ネットワーク機器などの増設が必要になる。価格設定は、会議室の位置などによって変わることになる」(同)という。

空調事業も「モノ売り」から「コト売り」へ

同社では、今回のサービス開始を皮切りに、付加価値サービスの拡大に乗り出す姿勢をみせる。

「様々なセンサーを付けることでサービスを拡張できる。たとえば、会議室内のCO2濃度や温度、湿度を計測して、空調システムとの連動によって、会議室の環境を整えたりすることもできる。このユニットをハブとして、会議室の付加価値を高める様々なサービスを提供できる」としている。

今回のサービス開始にあわせて、同社では、「exiida」のロゴを新たに制作。今後、業務用空調・冷熱システムのサービスブランドとして展開していく考えだ。

日立グローバルライフソリューションズは、家電および空調事業において、「モノ売り」から「コト売り」へとシフトを進めている。その点でも、データやデジタルを活用した新たなサービスの創出は重要な取り組みになる。

同社・谷口潤社長は、「今後は、データ活用やデジタル化が重要であり、これは日立グループが強みを発揮できる価値になる。2020年は、データ活用やデジタル化に主眼を置くことになる」と語る。

exiidaによるサービスの拡大は、同社の「コト売り」へのシフトを加速する取り組みのひとつになる。