セイコーエプソンは、2035年までの10年間に渡る長期ビジョン「ENGINEERED FUTURE 2035」を発表するとともに、それを具現化するための第一段階として、2028年度を最終年度とする「中期経営計画Phase1(2026~2028年度)」を策定した。

セイコーエプソンの𠮷田潤吉社長は、「『プリンターのエプソン』から、『テクノロジーイノベーション×エンジニアリング』のエプソンに進化する。『省・小・精』を核に、最適解を設計し、確実に実装し、産業での競争力を高める」と長期視点での方針を打ち出す一方、「Phase1の3年間は、成長に向けた『TRANSFORM』となる。収益基盤を変え、成長領域への集中的な資源投下を進め、資本効率を上げる。まずは、収益基盤の変革を断行する」と述べた。

  • セイコーエプソン 代表取締役社長の𠮷田潤吉氏

    セイコーエプソン 代表取締役社長の𠮷田潤吉氏

発表では、「中期経営計画Phase1」の経営指標として、2028年度の売上収益で1兆5000億円(2025年度見通しは1兆3900億円)を目標に掲げたほか、ROICで8.0%(同5.1%)、ROEが10.0%(同5.0%)、ROSで8.0%(同5.4%)を最低ラインと位置づけた。

また、産業領域から創出する事業利益の構成比を、2025年度見込みの45%から、2028年度には70%にまで高める。さらに、M&Aなどの戦略投資に加え、成長エンジンである「プレシジョンイノベーション」や、次期以降の成長ドライバーと位置づける「インダストリアル&ロボティクス」への成長投資として、3年間で2800億円を投下する考えも示した。2800億円の内訳は、戦略投資が1000億円、成長領域への投資は1800億円。設備投資を重視するという。

𠮷田社長は、「固定費と投下資本を徹底的に見直し、2028年度までの3年間で、260億円の固定費圧縮を実現すると同時に、成長領域に資源を大胆に集中する。投資も、改革も、事業の運営も、ROICで評価し、エプソンの変革と成長をその結果で示す」とした。

  • 2035年までの10年間に渡る長期ビジョン「ENGINEERED FUTURE 2035」を発表

    2035年までの10年間に渡る長期ビジョン「ENGINEERED FUTURE 2035」を発表

  • 2028年度を最終年度とする「中期経営計画Phase1」がスタート

    2028年度を最終年度とする「中期経営計画Phase1」がスタート

始動した「中期経営計画Phase1」の中身

2026年度からスタートする「中期経営計画Phase1」については、「長期ビジョンの実現に向け、成長領域を中核にした事業ポートフォリオへと再設計し、資本効率経営への転換を図ることを目指す」と位置づけた。

具体的には、固定費や資産効率の見直しを行うとともに、グローバルオペレーションやサプライチェーンの再設計に加えて、新興国での販売強化、継続価値型ビジネス化およびソリューションの拡充を推進。これにより、投下資本を圧縮しつつ、事業の「稼ぐ力」を向上させる。同時に、創出したキャッシュを将来の成長を担う領域へ重点的に配分し、事業ポートフォリオの転換を加速する。また、投資判断や事業運営においては、ROICを「経営の規律」として据え、資本の最適配分を徹底するという。

  • Phase1では、成長に向けた事業基盤の変革を目指す

    Phase1では、成長に向けた事業基盤の変革を目指す

  • ROICを「経営の規律」として据え、資本の最適配分を徹底する

    ROICを「経営の規律」として据え、資本の最適配分を徹底する

事業セグメントについても再編。インクジェットソリューションズ事業、マイクロデバイス事業、エプソンアトミックスで構成する「プレシジョンイノベーション」、商業・産業プリンティング事業、ロボティクス事業による「インダストリアル&ロボティクス」、オフィス・ホームIJP(インクジェットプリンター)事業による「オフィス・ホームプリンティング」、ビジュアルプロダクツ事業、ウエアラブルプロダクツ事業、PC事業で構成する「ビジュアル&ライフスタイル」の4つに組み替えた。

「プレシジョンイノベーションを成長エンジンの中核に位置づけるとともに、インダストリアル&ロボティクスは、中期経営計画Phase2における本格的に成長を遂げる領域になる。一方で、オフィス・ホームプリンティングおよびビジュアル&ライフスタイルは、安定的なキャッシュ創出基盤と位置づける」と述べた。

  • 成長領域を再定義し、事業セグメントを再編

    成長領域を再定義し、事業セグメントを再編

また、長期ビジョンの策定においては、「2035年に向けた次の10年を検討するにあたり、エプソンが、何を変えるのか、どのように成長するのかを考えた。様々な条件が劇的に変化しているが、エプソンは、83年前に創業して以来、精密微細加工、MEMS、材料・プロセス技術、光学・センシング制御のほか、これらの技術を統合設計し、社会実装する力を持ち、それによって成長を続けており、その基盤は、2035年に向けた成長の源泉になるのは間違いない。エプソンの強みである『省・小・精』という独自の技術や思想を基盤に、テクノロジーイノベーションとエンジニアリングで、継続的な企業価値の向上と、持続可能な社会の実現に取り組んでいくことが、世の中に貢献できるポイントだと考えている」と、前提条件について説明。その一方で、「エプソンは、『省・小・精』の技術基盤を用いて、インクジェットプリンターやプロジェクターなどを生み出してきた。こうした完成品のイメージが強い企業ではあるが、これからは進化させたテクノロジーをエンジニアリング力で社会実装することにより、世の中の役に立ち、社会の進化とともに、成長していくエプソンになる」と、目指す新たな姿にいて言及。長期ビジョン「ENGINEERED FUTURE 2035」においては、「省・小・精を核にして、最適解を設計し、確実に実装すること」、「産業の競争力を高めると同時に、社会の可能性を広げていくこと」、「社会価値と経済価値の両立を実現しながら、持続的な成長を積み重ねていくこと」を掲げた。

  • 83年前に創業して以来、世の中が様々に変わる中、技術を価値に転換し社会課題を解決してきた。その基盤は、2035年に向けた成長の源泉になる

    83年前に創業して以来、世の中が様々に変わる中、技術を価値に転換し社会課題を解決してきた。その基盤は、2035年に向けた成長の源泉になる

長期ビジョン「ENGINEERED FUTURE 2035」とは

2035年を目標とする「ENGINEERED FUTURE」では、4つの領域において、価値を提供するという。

具体的には、インクジェット技術やMEMS技術、金属資源や再生技術による「エネルギー・資源の効率化を支えていくこと」、タイミングデバイスや高機能金属粉末によって「精密技術でテクノロジーの進化を支えていくこと」、ロボティクスやインクジェットを通じて「生産性と信頼性で人手不足に応えていくこと」、プリンティングやプロジェクションによる「学び・働き・暮らしを支えていくこと」である。

「これらの領域に関連したサービスや製品市場は急速に成長している。エプソンにとって、大きな事業機会となる。すべてを支えているのは、『省・小・精』の技術基盤。技術進化とエンジニアリングによる現場の力で、持続的な価値提供の実現を進める。技術を点で価値に変えるのではなく、立体的に展開し、横断的に社会に実装する。それが再構築しようとしている成長モデルである」とした。

  • 「ENGINEERED FUTURE 2035」では、4つの領域において、価値を提供する

    「ENGINEERED FUTURE 2035」では、4つの領域において、価値を提供する

エプソンでは、紙への印刷需要に応えるプリンティングを中心とした事業が、売上収益の約7割を占めている。これを安定した収益基盤として維持する一方、インクジェットソリューションズ、マイクロデバイス、高機能材料、ロボティクスなどを活用した産業分野を成長領域に位置づけ、産業領域の売上比率を現在の33%から、2035年度には50%に引き上げ、事業利益比率を45%から70%に高める計画だ。

「長期ビジョンの実現に向けては、基礎的な収益基盤、収益構造を作り、資本効率を改善し、稼げる体質を作ることを最優先する。生み出したキャッシュで、成長に向けた積極投資を行う」との基本方針を示した。

「ENGINEERED FUTURE」では、10年間を3つのPhaseにわけ、実行計画と位置づける中期経営計画を推進することになる。これは、これまでの長期ビジョンと、基本的には同じ考え方だ。

Phase1は、2026年度から2028年度までの3カ年を対象とし、「TRANSFORM」の段階と位置づけ、成長に向けた事業基盤の変革および構築を進める。また、2029年度から2031年度までのPhase2では、Phase1で構築した基盤をもとに、成長モデルへの転換を加速し、完了させる。そして、2032年度から2035年度までをPhase3として、成長を生み続ける事業構造の確立を目指す。

2028年度を最終年度とする3カ年の「中期経営計画Phase1」では、ROICで8%を目標に掲げた。𠮷田社長は、「経営判断の基軸をROICに置く。投下資本に対して、どれだけ価値を生み出すかを重視する。資本効率にこだわり、経営を変革する」と述べた。

収益基盤の変革と、成長領域への資源集中投下を実行。固定費構造、在庫、ポートフォリオ、資本配分を見直すことで、成長に向けた土台づくりを目指す。

  • Phase1では、ROICで8%を目標に掲げる。𠮷田社長は「経営判断の基軸をROICに置く。投下資本に対して、どれだけ価値を生み出すかを重視する。資本効率にこだわり、経営を変革する」と述べた

    Phase1では、ROICで8%を目標に掲げる。𠮷田社長は「経営判断の基軸をROICに置く。投下資本に対して、どれだけ価値を生み出すかを重視する。資本効率にこだわり、経営を変革する」と述べた

また、資産効率の改善により、3年間累計で260億円の収益改善を目指す計画も発表した。組織や拠点、オペレーションの再設計を進め、製造拠点やグローバル本社機能の効率化、調達およびサプライチェーンマネジメントの高度化などにより、在庫回転を0.5回転改善することで、投下資本を圧縮する。

具体的には、セグメント見直しによる投資規律によって100億円減、グローバルでのIT基盤の共通化で20億円減、主要海外工場での間接費用で40億円減、海外バックオフィス機能の集約で30億円減を想定。すでに実施済みの削減効果として、人員最適化で70億円減、製造拠点を17拠点から14拠点に統合、削減したことをあげた。

「拠点の最適配置は守りの削減ではなく、成長投資の原資を生む構造改革である」と説明した。

  • 資産効率の改善により、3年間累計で260億円の収益改善を目指す計画

    資産効率の改善により、3年間累計で260億円の収益改善を目指す計画

また、収益の85%を占める海外での取り組みについては、「エプソンは、新興市場を中心とした大容量インクタンクモデルで事業拡大を図ってきた。これからも新興市場などでの需要は大きく伸長すると見込んでいる。販売網の拡大に向けて、それらの地域への投資を積極化すると同時に、地域でのお客様要求に応えるソリューション提供機能の強化、継続的に利用してもらうためのビジネスモデルの転換をさらに進める。信頼されるブランドとして、販売およびサービスの質を大きく変えていく」とした。

エプソンが定めた新たな事業セグメント

エプソンが、「中期経営計画Phase1」で定めた新たな事業セグメントについて、𠮷田社長は次のように説明する。

「プレシジョンイノベーションは、インクジェット応用や発振器、高機能材料といった付加価値の高い産業用途の急成長市場に向き合っている事業群を成長エンジンとする。インダストリアル&ロボティクスは、エプソンが競争優位にある商業・産業印刷やロボティクス応用をさらに強化し、需要創出を行いながら、次の本格成長領域と定めた。また、オフィス・ホームプリンティングは膨大な市場稼働台数と顧客基盤をベースに、ビジネスモデルを変え、さらに拡大。規模の経済を生かした安定的な収益基盤の中心として位置づけている。そして、ビジュアル&ライフスタイルは、プロジェクションやウエアラブルなどのお客様との信頼関係をさらに強化し、収益貢献する事業群と位置づけている」

「プレシジョンイノベーション」は、中期経営計画Phase1で、最も高い売上げ成長、利益成長を計画。2028年度の売上収益は2100億円(2025年度見込みは1670億円)とし、年平均成長率は8%。ROICは17%(同12%)を目指す。また、3年間で1300億円の投資を行う。

「プレシジョンイノベーションは、売上げ成長により、キャッシュ創出力を大きく高め、エプソンの成長エンジンとなる。省電力や省資源のデバイスや、生産手段のニーズが拡大するなかで、エプソンが持つ精密加工、材料プロセス、MEMS設計を活用できる」とする。

独自のマイクロピエゾによるインクジェット技術により、電子部品や太陽光発電装置、バイオなどの幅広い産業プロセスに応用。プリントヘッドの提供だけでなく、駆動制御、インク、画像処理といった周辺技術もソリューションとして提供。応用領域の拡大に向けて、出資や共同開発なども積極的に活用するという。

  • プレシジョンイノベーションは、Phase1で、最も高い売上げ成長、利益成長を計画

    プレシジョンイノベーションは、Phase1で、最も高い売上げ成長、利益成長を計画

マイクロデバイス事業では、水晶の製造技術と半導体のロジック設計を組み合わせた高精度なタイミングデバイスを作り出せる特徴を生かして、AIや自動運転などのモビリティを中心にビジネス機会が生まれるとみている。

「マイクロデバイス事業では、エプソンが持つ価値を再定義しなおした。AIやデータセンター、高速通信といったこれからの社会ニーズを捉えたときに、これまでの中心だったスマホなどのハードウェア以外への供給が大きくなる。材料を加工し、ロジックで制御することで、精度と省電力化を高めることが、今後10年は必要とされる。重要な成長事業のひとつに位置づけている」と述べた。

  • マイクロデバイス事業も重要な成長事業のひとつに位置づけ

    マイクロデバイス事業も重要な成長事業のひとつに位置づけ

「インダストリアル&ロボティクス」セグメントは、Phase2に向けて、さらなる成長を期待する領域としており、「Phase1では、戦略的な資本投下により、収益性を向上させ、収益を生み出す体質への転換を最優先する。ハードウェア、ソフトウェア、サービスを組み合わせたソリューションラインアップを徹底拡充していく」とした。

2028年度までの売上収益の年平均成長率は4%とし、3300億円(2025年度見込みは2930億円)を計画。ROICで8%(同2%)を目指す。3年間で500億円の投資を計画している。

  • インダストリアル&ロボティクスについて。Phase1では戦略的な資本投下。Phase2に向けて、さらなる成長を期待する領域とした

    インダストリアル&ロボティクスについて。Phase1では戦略的な資本投下。Phase2に向けて、さらなる成長を期待する領域とした

商業・産業プリンティングでは、完成品として高生産機を中心にラインアップを揃え、買収したFieryと連携したソリューションを拡充。市場におけるアナログからデジタルへの転換を強力に後押しするという。アパレル領域における成長も計画しており、2028年度の収益確保を目指す。昇華転写やサイネージ分野での年平均売上成長率は、セグメント全体の2倍を見込む計画を掲げている。

ロボティクスでは、製造業に留まらない展開を加速。センシングと制御技術に、AIなどを統合することで、各種サービス領域や、省人化需要に対しても、長く利用してもらうためのビジネスモデルの実装に取り組む。「中国市場での価格競争力で課題があったが、ラインアップの拡充で対応してきた。量および質の面で対抗していく」と述べた。

「オフィス・ホームプリンティング」は、2028年度の売上収益で7000億円 (2025年度見込みは6850億円)を計画。ROICでは7%(同6%)を目指す。また、新興市場における大容量インクタンクモデルの市場シェアを、現在の53%から、55%超に高める。

この分野の強みとして、「全世界の膨大な市場稼働台数をベースにしたB2C、B2Bのお客様基盤」、「新興市場での成長とお客様からの強いブランドへの信頼」、「圧倒的な量産を背景にしたグローバルサプライチェーンの競争力」の3点をあげ、オフィスやバーチカル業種においても、インクジェットへのテクノロジーシフトを進める。

さらに、新興市場では、市場全体を上回る成長を計画。現地での企画設計力、ソリューション提案力、継続的な需要充足のためのビジネスモデルを構築する。

「成長スピードは遅いが、大きな規模の事業である。先進市場の落ち込みを新興市場の成長でカバーし、収益力の中身を変えていく。効率化や販売改革を実施するなど、構造変革を成し遂げ、安定収益基盤として、成長セグメントへの投資を支える役割を担うことになる」とした。

  • オフィス・ホームプリンティングは成長セグメントへの投資を支える役割を担う。新興市場では、市場拡大機会を確実に獲得していく方針

    オフィス・ホームプリンティングは成長セグメントへの投資を支える役割を担う。新興市場では、市場拡大機会を確実に獲得していく方針

「ビジュアル&ライフスタイル」は、2028年度の売上収益で2600億円 (2025年度見込みは2430億円)を計画。ROICでは6%(同2%)を目指す。

𠮷田社長は、「技術の強みを生かせる事業セグメントである。構造改革完遂によりROICを改善する」と述べた。

世界トップシェアを持つプロジェクターでは、市場全体の成長は見込めないが、教育やプロジェクションマッピング、イマーシブなどの領域に特化。構造改革により、安定的な利益創出を目指す。

エプソンの祖業となるウオッチを含むウエアラブルでは、商品力やモノづくり力を磨き上げるとともに、オペレーションを効率化。収益性の向上に取り組むとした。

  • ビジュアル&ライフスタイル。エプソンの祖業となるウオッチを含むウエアラブルでは、高品質な腕時計などオリエントの高収益化の施策も盛り込んだ

    ビジュアル&ライフスタイル。エプソンの祖業となるウオッチを含むウエアラブルでは、高品質な腕時計などオリエントの高収益化の施策も盛り込んだ

2025年度まで取り組んだ「Epson25 Renewed」の成果

一方、2021年度から2025年度まで取り組んできた「Epson25 Renewed」についても総括した。

Epson25 Renewedは、2024年4月に修正目標を発表し、ROICで7.0%以上、ROEで8.0%以上、ROSで7.0%以上としていたが、いずれも未達の見通しだ。

  • 「Epson25 Renewed」を総括。目標数値はいずれも未達

    「Epson25 Renewed」を総括。目標数値はいずれも未達

𠮷田社長は、「様々な外部要因があったが、持続的な成長と、資本効率向上への対応は大きな課題であると認識している。売上げは伸びたが、十分な資本効率が伴っていない。さらに、成長領域の立ち上げの遅れがあり、成長を加速させるべき事業領域のスピードが不十分だった」と反省する一方、「インクジェット技術により、中国のプリントヘッド外販が大幅に成長した。また、新興市場を中心に大容量インクタンクモデルで市場を形成し、インクジェットではトップシェアを取り合うまでになった。収益性に課題のあった事業の構造転換のほか、ソフトウェア領域での大型買収による資源強化も行った。新興市場の中でも未開拓だった地域への販売網整備に着手した」と成果を強調。さらに、環境への取り組みでは、日本の製造業では初となるグローバル全拠点での再エネ100%を達成したことも示した。

世界の変容、『省・小・精』の思想と技術はより価値を生む

今後のセイコーエプソンの事業の方向性として、𠮷田社長は、「世界が変容するなか、問題解決を必要としている領域において、『省・小・精』の思想と技術が、より一層求められるだろう」とし、「エネルギー・資源制約の時代に、より少ない資源で、価値を生み出す社会を支えること」、「テクノロジーの進化を、精密技術で支えること」、「人手不足が進む世界で、生産性と信頼性を高めること」、「学び・働き・暮らしの質を向上させること」という領域において、エプソンが貢献できるとする。

  • 「世界が変容するなか、問題解決を必要としている領域において、『省・小・精』の思想と技術が、より一層求められるだろう」(𠮷田社長)

    「世界が変容するなか、問題解決を必要としている領域において、『省・小・精』の思想と技術が、より一層求められるだろう」(𠮷田社長)

「幸いなことに、エプソンには、こうしたニーズに応えられる技術資産と経営基盤があり、それらを活用し、社会課題を解決していくことが、エプソンの持続的な成長につながる。常に変化を見通し、自ら進化しながら、社会のニーズ、産業の需要に応えていくことが使命である。変化を前提に経営を進め、『省・小・精』を核に、最適解を設計し、確実に実装する。社会価値と経済価値の両立を実現しながら、持続的な成長を積み重ねていくことが、ENGINEERED FUTURE 2035において目指す姿になる」と位置づけた。

𠮷田社長が示すように、長期ビジョン「ENGINEERED FUTURE 2035」において、エプソンが目指しているのは、「プリンターのエプソン」からの変革である。だが、これは、プリンター事業からの脱却を意味するのではなく、プリンター事業を、エプソンが持つ技術の出口のひとつに捉えながらも、より幅の広い「出口」を模索することで、事業成長を加速する狙いがある。

  • 「プリンターのエプソン」から「テクノロジーイノベーション×エンジニアリング」への変革。だが、これは、プリンター事業からの脱却を意味するものではないようだ

    「プリンターのエプソン」から「テクノロジーイノベーション×エンジニアリング」への変革。だが、これは、プリンター事業からの脱却を意味するものではないようだ

𠮷田社長は、「エプソンのブランドを代表する完成品として、プリンターのプレゼンスが高いと認識している。だが、これは、もともとエプソンの技術を実装するための完成品事業として発展させてきた経緯がある。これを維持しながらも、核となる技術を、完成品、デバイス、材料という形で、産業領域に応用していくことで、成長を加速させる。実装力が高めることが、これからのエプソンの姿になる」と語る。

長期ビジョンの「ENGINEERED FUTURE 2035」の名称や、「テクノロジーイノベーション×エンジニアリング」という目指す姿に込めた意味もそこにある。

技術に強みを持つエプソンが、その技術を実装する力を拡大することで、積極的にマネタイズや事業化を図り、成長にシフトするのが、長期ビジョンの狙いとなる。それが、「プリンターのエプソン」から、「テクノロジーイノベーション×エンジニアリングのエプソン」への進化という言葉の意味だ。