パナソニックは、独自のナノイー(帯電微粒子水)技術が、花粉症状を改善する有用性があることを実証した。福井大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教授の藤枝重治氏との共同研究により、約20畳の大空間で、自然飛散花粉を用いた検証を行い、室内花粉の抑制と、花粉症状の改善に効果があることがわかった。ヒト臨床試験での効果の実証は、世界で初めてだという。
パナソニック くらしアプライアンス社くらしプロダクトイノベーション本部の九津見洋本部長は、「花粉は屋外で発生、飛散するが、室内の花粉対策も重要である。室内に侵入した花粉は、一定期間残存する傾向があり、スギ花粉の飛散シーズンは、一般的に6月頃までであるのに対して、室内ではシーズン終了後の10月頃まで、症状を確認することができる。また、花粉は、布団やカーテン、ソファなどの布類に付着したり、カーペットに落ちて存在したりする。花粉を踏むと粉砕花粉化し、人の動きで簡単に舞ってしまう」という室内花粉の特徴について説明。「今回の臨床試験では、一般的なリビングより広い約20畳の空間で、負担をかけずに、花粉症状を有意に改善することを実証した。ナノイーが、花粉症対策のひとつとして新たな可能性を示すことができた」と述べた。
また、共同研究を行った福井大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教授の藤枝重治氏は、「マスクによる予防は、室内での着用は息苦しさがあり、飲み薬は購入する手間や、人によっては副作用が生まれる可能性がある。また、掃除でもすべての花粉は除去できない。ナノイーではこうした不便さなどを解決できる。ナノイーは、人に不便さを感じさせずに花粉症状を有意に改善することを実証した。ナノイーは、花粉症対策の新たな選択肢として期待できる技術だと考えている」と述べた。
なお、実証には、市販のナノイー搭載空気清浄機とは異なる試験機を利用している。そのため、同社が販売している商品の効果を証明するものではないが、「実使用に近い環境を想定して実証を行っている」(九津見本部長)という点を強調してみせた。
今回の検証は、被験者や評価者の双方が、ナノイー技術の有無を認識しない二重盲検法によって、心理的バイアスの影響を排除。臨床研究や医療分野で広く用いられるVAS(Visual Analogue Scale)評価を用い、被験者の主観評価をもとに検証している。
スギ花粉による鼻症状に自覚がある18歳~65歳の男女101人を対象に実施。スギ花粉が多い3月に、約75m3(約20畳)の会議室になかに、30分間の換気により、屋外の自然飛散花粉を取り込んだのち、被験者が入室し、ナノイー搭載試験機と、ナノイー非搭載試験機をそれぞれの部屋で約3時間稼働させて検証を行った。
1部屋あたり、3~5人の被験者が入室しているため、自分や他人が持ち運んだ花粉も室内には残ることになる。3時間の間、被験者は本を読んだり、YouTubeを見たりして、試験時間を過ごしていたという。
被験者および分析者は、ナノイー技術の有無を認識しない状態で実施。鼻づまりやくしゃみなどの症状をVAS評価で検証した。
その結果、ナノイー搭載の試験機が稼働している部屋では、症状が有意に改善したことが実証できたという。
「ナノイー搭載試験機を稼働している部屋は、花粉がかなり減っているものと予想している」(福井大学医学部の藤枝教授)とも述べた。
ナノイーの発生原理は、霧化電極をペルチェ素子で冷却し、空気中の水分を結露させて水をつくり、霧化電極と向き合う対向電極の間に高電圧を印加することで、OHラジカルを大量に含んだ約5~20nmというナノサイズの清潔イオンを作り上げるというものだ。髪の毛の1万分の1サイズであり、布類の繊維の奥まで浸透しながら、有害物質を化学的に変性させ、有害物質を抑制することができる。
また、OHラジカルは水に含まれているため、イオンよりも寿命が長く、広範囲に拡散できるという特徴も持つ。さらに、ナノイーは、空気中から原料となる水を自動的に収集するため、水や薬剤などの供給が不要であり、水が電極の磨耗を保護することで、デバイスの交換が不要であり、運用にも手間がかからないという強みがある。
ナノイーは、これまでに、17種類の花粉に対して、花粉アレルゲンの抑制、アレルギー反応の抑制などで効果を実証している。
「ナノイーは、人が花粉を吸い込む時点で、花粉アレルゲンを抑制できる。炎症性物質が発生されないため、花粉症状の抑制と改善が可能になる」(パナソニックの久津見本部長)としている。
花粉症は、日本人の約42.5%が悩まされており、いまでは「国民病」ともいわれているほどだ。花粉を室内に侵入させないためには、換気をしない、洗濯物を部屋干しする、外出先を控えるといった方法があり、いずれも3割前後の人が対策をとっているというが、同時に日常生活に不便さが伴うことになる。
また、室内での花粉症対策としては、マスクや飲み薬、掃除、フィルター、スプレーなどがあるが、息苦しさや副作用、交換/補充、手間などの課題があり、ここでも不便さが伴うことになる。
花粉は、室内に入り込んでから数カ月残留することもあり、朝起きた直後に症状が強まるモーニングアタックなど、生活環境によって症状が悪化するケースも少なくないという。
モーニングアタックは、寝具に付着したアレルゲンの影響と、起床時に人の自律神経バランスが崩れるタイミングが重なり、平時よりも強いアレルギー症状が出ることを指す。調査によると、花粉症の人の約6割が、モーニングアタックの影響で悩んでいるという。
パナソニックでは、今回の実証の結果をもとに、ナノイーを花粉対策に活用することで、不便を伴わずに、しかも空間全体を抑制できるメリットがあるとした。
なお、2月上旬から、九州などで花粉の飛散が始まっており、東日本や北日本では、例年を上回る飛散量が予測されているという。
「住空間におけるお役立ちに加えて、空気の関心が高まる鉄道などの移動空間、病院やホテルなどの公共空間など、あらゆる空間に広げ、グローバルにも領域拡大を目指す」(パナソニックの久津見本部長)としている。
ナノイーは、世界12カ国47機関と連携し、50種類の菌やウイルスをはじめとした100種類以上の有害物質に対して抑制効果があることを実証している。
パナソニックの久津見本部長は、「これまでは、有害物質というモノに対する効果を重点的に検証してきたが、今後は、モノに対して作用させることで、人に与える効果のほか、人そのものに作用させることで得られる効果など、人における研究を充実させたい。抑制されていない花粉を吸いこんだとしても、ナノイーが免疫系に強い影響を与えることで症状を改善するといったことも視野に入れた検証を行っていく」と述べた。















