一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)は、ビジネスにおけるプリンターの認知、選定、利用に関する調査結果を発表した。
同調査では、ビジネスインクジェットプリンターは、国内外ともに出荷台数は増加傾向にあるものの、レーザープリンターからの顕著なシフトが見られないという結果が明らかになった。
環境貢献、働き方変化でインクジェットシフトを期待したが……
同協会ビジネスインクジェットプリンター部会の茂木亨部会長 (=ブラザー工業)は、「ビジネスインクジェットプリンターの認知度は高いという結果が出た。だが、レーザープリンターからビジネスインクジェットプリンターへのスイッチは低く、むしろ、インクジェットプリンターからレーザープリンターへの移行が高いという結果が出ている。また、ビジネス用途でのインクジェットプリンター使用者の80%超が家庭向けモデルを使用していることもわかった」と報告した。
ビジネスインクジェットプリンターで市場をリードするセイコーエプソンが、2026年までに、同社が新規に販売するオフィス向けプリンターを、すべてインクジェット方式とし、レーザープリンターの本体販売を終了する方針を打ち出していたが、先ごろ、この方針を撤回。高速印刷に優れたモノクロレーザープリンタに対する根強いニーズに対応するために、A3およびA4モノクロレーザープリンタの複数機種を継続的に販売する考えを示している。
同社では、「レーザープリンターをインクジェットプリンターに置き換えることで、環境に貢献していくという方針および戦略には変更はない」としているが、ビジネスインクジェットプリンターからレーザープリンターへの移行は、計画通りには進んでいないのは明らかだ。
今回の調査でも、そうした実態が浮き彫りになったといえる。
今回の調査は、2020年4月に、同協会内に発足したビジネスインクジェットプリンター部会が実施したもので、働き方の変化に伴い、ビジネスにおけるプリンターの使われ方に変化が生じていると想定。レーザープリンターから、インクジェットプリンターへのスイッチが起きているという仮説を検証することを目的としている。
ここで対象としているビジネスインクジェットプリンターとは、大容量の給紙トレイや、にじみの少ない顔料インクを採用するなど、オフィス業務やビジネス文書印刷における生産性向上機能を強化したインクジェットプリンターと定義している。
調査は、2025年4月に実施し、職場および家庭で、ビジネス用途でインクジェットプリンターおよびレーザープリンターを利用している620人(インクジェットプリンターユーザーが310人、レーザープリンターユーザーが310人)を対象に実施した。
ビジネスインクジェットプリンターの認知度については、「詳細な知識を持っている」、「よく知っている」、「知っている」をあわせて84.0%に達しており、家庭向けインクジェットプリンターとの違いが理解されていることがわかった。
「従業員規模が大きいほど、ビジネスインクジェットプリンターに対する認知率が高い傾向がある」という。
レーザープリンターの購入者を対象にした調査では、80.1%のユーザーが、ビジネスインクジェットプリンターを比較検討したという。その一方で、検討しなかった19.9%のユーザーからは、「インクジェットプリンターは、レーザープリンターの代わりにはならないと思っている」、「インクジェットは印刷コストが高い」、「インクジェットは家庭用のイメージがある」、「以前インクジェットのノズルがつまり大変な思いをしたことがある」などの理由があがった。
また、インクジェットプリンターユーザーがビジネスで使用しているプリンターを分析したところ、ビジネスインクジェットプリンターに定義される機種は18.7%に留まり、81.3%が家庭向けインクジェットプリンターであることがわかった。
用途はビジネスであり、ビジネスインクジェットプリンターに対する認知度が高いにも関わらず、家庭用インクジェットプリンターを利用している比率が高いという、いびつな構造が浮き彫りになった。
さらに、ユーザーの購入状況をみると、レーザープリンターからビジネスインクジェットプリンターへのスイッチは8.1%と低く、インクジェットプリンターからレーザープリンターへの移行は18.7%と高い結果が出た。
レーザープリンターからインクジェットプリンターにシフトしたユーザーが理由にあげたのが、「印刷コストが安いから」、「管理やカートリッジ交換が簡単だったから」、「大容量消耗品に対応しているから」という点であり、「消耗品関連の部分を理由にあげている」と分析した。
なお、購入時の重視点としては、インクジェットプリンターの購入者は「本体価格」を重視しており、複数回答で45.8%に達したのに対して、レーザープリンターの購入者は「印刷コスト」を最も重視し、44.5%に達している。だが、「レーザープリンターの購入者は、重視する項目が分散しており、複数のポイントから、総合的に判断して購入する傾向が感じられた」とも指摘している。
一方で、ビジネスインクジェットプリンターの購入時の不満点では、最も多いのが「ランニングコストのわかりにくさ」で36.2%となっており、次いで、「各社での表現の違いがわかりにくい」が29.3%、「各モデルの機能の違いがわかりにくい」が25.9%となった。これらがビジネスインクジェットプリンターの導入検討時において、大きなハードルになっているようだ。
また、ビジネスインクジェットプリンターが、非ビジネスインクジェットプリンターと比較して、購入時に満足度を感じている点は、「本体の耐久性」、「ランニングコスト」であるが、不満点として「消耗品交換の簡単さ」や「消費電力の少なさ」があがっている。
「インクジェットプリンターは、レーザープリンターに比べて環境性能が高いとされているが、消費電力や省資源については、購入時の重視点としては下位にある」とも指摘した。
さらに、再生プリンターに対する質問も行っており、「購入意向は70%強であり、高い結果が出ている。環境にいい、コストパフォーマンスが高いという声がある一方で、購入しないと回答したユーザーからは、、機械の中古は怖い、再生品は故障が多く、品質が悪い、新品ほど耐久性が望めないといったように、耐久性や品質に対する懸念の声があがっている」とした。
ビジネスインクジェットプリンターの訴求方法は見直しが必要
調査結果からもわかるように、「インクジェットプリンターは、レーザープリンターの代わりにはならない」、「インクジェットは家庭用のイメージがある」といった誤解や、実際には、ビジネス用途の8割以上で家庭向けインクジェットプリンターが使用され、ビジネスインクジェットプリンターの特徴が伝わっていないこと、コストなどのわかりづらさが指摘されているといったように、訴求に課題があることが浮き彫りになった。
JBMIAビジネスインクジェットプリンター部会の茂木部会長は、「ビジネスインクジェットプリンターの認知度は高いが、その一方で、本体価格を重視して、家庭用インクジェットプリンターを利用するといった動きが見られている。また、それに伴い、インク価格などのランニングコストが課題になっている。これらがビジネスインクジェットプリンターの普及の障害になっている」と指摘した。
その上で、「ビジネステンクジェットプリンターのベネフィットをしっかりと訴求することが必要であり、そのためのコンテンツを作成することを検討している。さらに、購入判断に必要な情報が不足しているという反省もある。ランニングコストを比較検討できるように、TCO算出方法の標準化にも取り組んでいく。業界団体として、メーカーごとに異なる表現の違いを標準化していくほか、インクジェットプリンターの優位点である低消費電力や省資源などの環境性能の高さに関する認知度を高めるための活動も検討していく。今回の調査結果を、部会やタスクフォースの活動につなげ、業界としてビジネスインクジェットプリンターの普及活動を推進する」と語った。









