• ソニーグループが株主総会を開催

    ソニーグループが株主総会を開催

ソニーグループは、2025年6月24日午前10時から、東京・品川のソニーグループ本社で、第108回定時株主総会を開催した。会場には500人(前年は451人)が出席し、インターネットでは173人が参加。所要時間は78分間となり、すべての議案を可決した。

  • 今後の事業方針への注目は高く、多くの株主が直接足を運んでいた

ソニーグループの十時裕樹社長 CEOは、事業報告のなかで、中長期的な事業の方向性について説明。「ソニーは、この数年、ゲーム、音楽、映画など、各分野でのコンテンツ拡充や、事業を横断した形でのIPの拡大、成長領域であるアニメへの投資、クリエイションを支える革新的技術の活用などに注力してきた。これらの取り組みがソニーグループの変革に寄与し、好調な実績につながっている。今後も方針には変更がない。ソニーグループは、エンタテインメント3事業(ゲーム、音楽、映画)と、イメージセンサー事業を軸とした成長領域に資本を集中し、クリエイションに特化していくことを目指す」とコメント。

「事業間連携がもたらす価値や可能性は、この数年で、より顕在化してきた。2024年に発表したCreative Entertainment Visionは、クリエイティビティとテクノロジーによる感動を届けることを目指している。キーメッセージは、Create Infinite Realitiesであり、クリエイター、パートナー、社員とともに、多様な事業間のシナジーによって、これを実現する。ソニー独自の競争優位性の源泉であり、今後も進化を続け、感動が生まれる世界の実現に尽力する」と述べた。

  • ソニーグループの十時裕樹社長 CEO

その上で、エンタテインメント事業の方向性を示した。

「非常に好調」と位置づけるゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野は、「今後も安定した利益をもたらす。この好調な勢いを生かして、収益性の高い成長を推進するとともに、戦略投資を実行していく。PlayStation 5の収益拡大と、PlayStation Storeにおける1人あたりの平均売上高の最大化を図る」とした。

また、音楽分野では、「音楽市場におけるポジションの強化に努める」とし、「収益機会の拡大と、資産価値向上に向けた投資機会の探索、インディーズレーベルやアーティストとの関係構築および強化を通じたプレゼンスの拡大に注力する」と語った。

さらに、映画分野では、「映画業界全体では、コロナ禍や、ハリウッドでのストライキの影響で、作品制作本数の減少が見られていたが、それが回復しつつある。ソニーの映画事業も立て直しの最中ではあるが、大型制作タイトルの公開も控えている」とした。

ここでは、アニメがソニーグループの成長戦略において、重要な役割を担っていることを改めて強調した。

「アニメ専門配信サービスのCrunchyrollは、会員数を順調に拡大しており、アニメが映画分野の成長を牽引する見込みである。アニメは、今後もソニーグループの複数の事業において成長を牽引する重要な領域である」とし、「アニメ市場は今後も成長が続くと予想されており、とくにアニメ配信市場の成長には大きな期待が寄せられている。ソニーグループでは、Crunchyrollの成長をさらに加速させるために、サービスの拡充、ユーザーの獲得に向けた施策を強化していく」と述べた。

  • ソニーの屋台骨となったPlayStation 5とその関連サービス。ゲーム事業と映画事業のシナジーにも触れているが、目下のところゲーム原作の映画の制作が進んでいる

さらに、ゲーム事業と映画事業が協力して、ゲームIPの映像作品を手掛けており、現在、10本以上の作品が制作過程にあることを示したほか、ソニーミュージックのアーティストと他のビジネスとのコラボレーションなど、様々な実績が生まれていることを示しながら、「今後もアニメによって、より広範な協業を進め、ソニー内外のファンコミュニティをつなぎ、エンゲージメントプラットフォームを通じた取り組みに注力する」と語った。

株主からの質問では、任天堂のSwitch 2の影響について問われ、十時社長 CEOは、「競争環境にもたらす影響には注視しているが、ユーザーにはPlayStation 5を選んでもらえると考えている。PlayStation 5の機能を十分に生かした魅力的なゲーム体験を提供する自社のAAA(トリプルエー)タイトルは、差異化要因になる。多くのサードパーティタイトルが、PlayStation 5以外のハードウェアでプレイできるようになることでの悪影響を懸念する声もあるが、より多くのユーザーがAAAタイトルを体験できることは、ゲーム業界にとってポジティブであり、結果としてPlayStation 5のメリットを消費者が実感できるきっかけにもなる。PlayStation 5が、最高の遊び場であることを目指す。お互いに、家庭用ゲーム業界を盛り上げていきたい」と語った。

また、コンテンツにおける差別的表現をなくすポリティカルコレクトネスの考え方については、「エンタテインメント事業を本業としているソニーグループにとって、コンテンツにおける表現の自由と、多様な価値観への配慮のバランスが重要であり、数10年間に渡って取り組んできた課題である。世の中の趨勢や時代の要請に基づくものであり、一意の回答があるわけではない。配慮しながら、魅力的なコンテンツ制作に注力する」と回答した。

Xperiaによるスマホ事業に対する基本姿勢についても説明した。

十時社長 CEOは、「スマホ事業で最も大事にしているのは、ここで培っている通信技術である。クリエイションにとって不可欠な技術であり、撮影した映像をデータ伝送し、編集を行うといったように、放送やコンテンツの配信において活用されることになる技術だ。ソニーグループが目指すクリエイションの方向とも親和性が深い。スマホ事業そのものは、必ずしも大きな事業ではない。だが、培った技術や、テレコムキャリアとの関係は重要である。スマホ事業のリスクはあるが、これらの技術を磨いていき、将来のために役立たせる」と語った。

  • スマホ事業にリスクはあるといいつつも、ここで培っている通信技術がクリエイションにとって不可欠だと説明

一方、EVに関する質問については、「ソニーのEVへの取り組みは、移動空間を感動空間にすることを目指したものになる。AFEELAは、ソニーのテクノロジーと、ホンダが有する車体製造技術およびモビリティの開発力を生かすことで新たな時代のモビリティとサービスの実現を目指している」と前置きし、「プレミアムブランドにふさわしい性能、質感、品質、安心安全を提供する先進運転支援システムと、空間上で享受できる感動体験が差別化になる。独自のサウンドシステムとディスプレイが最適に配置されており、映画、アニメ、音楽、ゲームなどを通じて、没入感がある感動体験を提供できる」とした。

AFEELA 1は、2025年1月から、米カリフォルニア州で、オンラインでの購入予約受付を開始。2026年半ばから出荷を開始する予定である。「順調な立ち上がりであり、好評である」と語ったが、「実績を出すには、かなり時間がかかる。長期の目線で取り組んでいる事業である」と位置づけた。

  • EVのAFEELA 1は2026年半ばから出荷を開始する予定

ロボットへの取り組みに関しては、「今後、ヒューマノイドロボット(人型ロボット)が飛躍していくことは十分考えられる。ソニーグループでは、aiboの販売を続けているが、これはエンタテインメントロボットであり、ヒューマノイドロボットが目指すような人の役に立つロボットとは一線を画している。だが、使う技術には親和性がある。我々が持つ技術を磨いて、将来のヒューマノイドロボットの時代にどんな貢献ができるか、どんな利用が考えられるといった点については引き続き考慮していく」と回答した。

  • 現在手掛けるエンタテインメントロボットのaibo。今後はヒューマノイドロボットを視野に入れている?

なお、トランプ関税の影響については、「日々変化しており、先行きが不透明だが、4月時点で想定した関税率のもとでは、2025年度の営業利益見通しに対して、1割未満のマイナス成長となる1000億円程度の範囲でマネージできる。米国内での戦略在庫の積み上げや、生産・出荷ロケーションの調整、一定の価格転嫁などの施策を行う」と回答した。