大阪・関西万博のパナソニックグループパビリオン「ノモの国」の館長であり、2025年4月1日付で、パナソニック ホールディングス 執行役員 渉外担当兼ソリューションパートナー担当に就任した小川理子氏が合同取材に応じ、開幕から約2週間の「ノモの国」の状況などについて説明した。同パビリオンには、開幕から10日間で約3万人が来場。会期中には45万人の来場を目指している。

  • パナソニックグループパビリオン「ノモの国」の小川理子館長

    パナソニックグループパビリオン「ノモの国」の小川理子館長

「子供たちの来場」が目標、未来の可能性をひらくきっかけに

パナソニックグループパビリオンは、完全予約制になっているが、連日のように予約が埋まっており、満員御礼の状況が続いているという。国内外から多くの来場者がある一方で、ここ1週間は、午前中の時間帯に、小学校や中学校の団体を受け入れている。

小川執行役員は、「博覧会協会とも連携しながら、修学旅行による来場などの際には、団体予約を積極的に受け入れている。人口比の2倍、3倍の子供たちの来場比率を目標にしている。次世代を担う子供たちの笑顔と出会うことができる毎日を過ごしており、私の癒しになっている」と笑う。

  • 「ノモの国」、パビリオン内の様子

パナソニックグループパビリオンは、子供たちが持つ秘められた力を解き放ち、非日常体験ができる「Unlock体験エリア」と、研究開発中の技術を用いて未来社会のアイデアを具現化した展示エリアの「大地」で構成している。

「Unlock体験エリア」では、手のひらサイズの結晶(クリスタル)デバイスを持って、4つのZONEを巡ることになるが、ZONE2の「ノモの森」では、子供たちか結晶デバイスを持って、ZONE内を走り回りながら、光や音による不思議な体験に夢中になったり、ZONE3の「古木の谷」では、子供たちが、自分の可能性や心の持ち方に改めて気がついたりといった様子が見られているという。

「バーチャルやデジタルによって、世界中の情報を入手できる時代だからこそ、リアルに存在するモノに出会い、実際に体験することで、『なにか』を感じてもらうことができる。この『なにか』というのは人によって異なる。一人ひとりが気づく、探求型の体験が可能になっており、自らが体験し、考えて、問いかけて、創り上げることができるきっかけにしたい」と述べた。

来場した子供たちからは、「いままでにない経験ができた」、「音や映像の空間のなかにいて驚きがあった」、「また来たい」といった声もあったが、なかには暗いシーンに入る場面で「怖かった」という声もあがっていたという。

また、小川執行役員は、「ノモの国に来場する前には、オリジナルアニメを見て欲しい」とも呼び掛ける。

オリジナルアニメは、ノモの国の世界観を表現。約30分の作品となっており、パナソニックグループパビリオンでの体験は、オリジナルアニメのアナザーストーリーと位置づけている。「アニメを見てから来場すれば、より楽しんでもらえる。より多くの人にオリジナルアニメを見てもらうための施策も考えているところだ」とした。

<動画>「ノモの国」オリジナルアニメーション|大阪・関西万博2025|Panasonic Group Pavilion"The Land of NOMO"Original Anime

さらに、外観の特徴にも触れた。パナソニックグループパビリオンは、鉄製のフレームに薄いオーガンジーを張り、風に揺らぐ軽やかで自由な建築を実現。その時どきの条件で様々な見え方を楽しんでもらうことができるデザインとなっている。「同じ表情をしない新たな建築を実現している。来場した人には、心のなかに、記憶を残してもらえるだろう。将来、どこかでパナソニックグループとの接点があったときに、自分たちを楽しませてくれた企業というイメージを持ってくれると思う」と期待した。

  • 「ノモの国」パビリオンの外観。その時どきの条件で様々な見え方を楽しんでもらうことを目指したデザイン

パナソニックグループでは、万博の閉幕後も、子供たちとつながり続けるための「オンライン次世代共創プラットフォーム」を公開しており、1万人の登録を目指している。現時点では、数100人から1000人の子供が登録しており、「オンラインを通じて、社員による技術解説、リアルでの共創イベントの開催などのプログラムを検討している」という。

また、「パナソニックグループパビリオンでは、連日のようにVIPを迎え入れており、コーポレートフィロソフィーの説明ととともに、この企業姿勢をもとにしたパビリオンであることを伝え、『人の営み』と『自然の営み』の720°の循環に関わる新たな技術も紹介している。また、各国が開催するレセプションでも、パナソニックグループの代表として挨拶し、発信することができている。ここまで集中して、国内外のVIPを会う機会はなかった。これから約半年に渡る万博の開催期間中の活動を通じて、日本のプレゼンスをあげ、大阪、関西を盛り上げたい」と述べた。

万博をより楽しむために、今も改善を加えている

パナソニックグループパビリオンでは、テストランを含めて、開幕前から様々な運用の実験をしてきたという。「完全予約という方法が最適だと考えて運用しているが、抽選に外れて残念に思っている人も多い。データをもとに、余裕がある時間帯や、一定数で発生している直前のキャンセルを考慮しながら、予約枠を少し多めにするといったことも考えたい」とした。

さらに、小川執行役員は、2025日本国際博覧会協会の理事の立場から、万博の楽しみ方についても言及。「楽しみ方は、人それぞれだといえる。建築が好きな学生は外から見ているだけで楽しいというし、パビリオンを15カ所も回ったという人もいる。アプリを使うことで、事前予約ができ、抽選に外れても3日前予約ができ、当日予約もできる。アプリを何度か使えばコツがわかってくるが、最初は慣れないため、ハードルが高いと感じる人もいるのも確かである。アプリのなかから、各パビリオンの当日の混雑がわかるように改善を加えていく」としたほか、「SNSでは様々な情報が発信されている。また、万博が大好きな人たちによる情報発信もある。それらの情報を参考にしてもらいたい。関西の人はなんども来場しやすいが、東京からだと1日でどれだけ回れるかという話になる。そうした来場者に対する情報も充実させたい」などと述べた。

また、「海外の公式参加国も力を入れており、多様性を感じられる展示となっている。私自身、もっと時間を作って、海外のパビリオンを見てみたい。コモンズのハビリオンでは、アフリカや中南米の国々が出展しており、待ち時間がなく、すぐに入ることができる。面白いパビリオンをもっと勧めていきたい」と語った。

暑熱対策については、「各パビリオンに待機列をなくし、待機する場合にも日よけを作る、ミストを利用するなどの対策をお願いしている。来場者の声を聞きながら、ウォーターサーバーの数を増やしたり、大屋根リングの下で涼を取ってもらったりといった対応をしている」とした。また、帰宅時間の混雑緩和については、「サイネージなどでリアルタイムに状況を伝えて、退場時間を早めることを促すことも検討している。安全に来場してもらい、安全に退場してもらえるように改善していく」と述べた。

  • 小川氏は「関西渉外・万博推進担当をはじめとしたこれまでの経験をもとに、活動の領域を広げていきたい」と抱負を述べる

一方、小川執行役員は、4月1日から、中央省庁などと連携する渉外担当および、B2BやB2Cのパートナーとの連携を行うソリューションパートナー担当に就いた。「新たな関係を構築する仕事にワクワクしている。グループを横断したり、個社の枠を超えたりしながら、パートナーと一緒になって、ともに創り上げる、ともに課題を解決することに取り組んでいきたい。関西渉外・万博推進担当をはじめとしたこれまでの経験をもとに、活動の領域を広げていきたい」と抱負を述べた。

なお、小川執行役員は、パナソニックのテクニクスブランド事業推進室長として、テクニクス事業にも引き続き関わることになる。