エムエスアイコンピュータージャパンが「Big Bang-Fuzion」で世に放った、異なるメーカー間での混載マルチGPUを可能とする"MSI Fuzion"技術。従来は同社の最上位マザーボードで展開されていたが、ついに、これを実売2万円程度の普及クラスのマザーボードでも利用できる時が来た。今回紹介するのは、LGA1156プラットフォーム向けにIntel P55 Expressを搭載する「MSI P55A Fuzion」だ。

MSI P55A Fuzion

メーカー MSI
製品名 P55A Fuzion
フォームファクタ ATX
対応ソケット LGA1156
対応CPU Intel Core i7/i5/i3、Pentium G6000シリーズ
チップセット Intel P55 Express + Lucid LT22102
対応メモリ DDR3 SDRAMスロット×4基(最大容量16GB)、アンバッファードDDR3 2133(OC)/2000(OC)/1600(OC)/1333/1066/800MHz対応
拡張スロット PCI Express (2.0) x16×2、PCI Express x1×2、PCI×2
マルチグラフィックス Lucid Hydra A/N/Xモード
ストレージ SATA 6Gbps×2ポート(Marvell SE9128)、SATA II×6ポート(Intel P55)
RAID機能 RAID 0/1(SE9128)、RAID 0/1/0+1/5/AHCI(P55)
ネットワーク 10/100/1000BASE-T×1(Realtek RTL8111E)
オーディオ機能 8ch HDオーディオ(Realtek ALC892)
インタフェース USB 3.0×1ポート(+内部接続用×1ポート)、USB 2.0×6ポート(+ピンヘッダにより6ポートの拡張が可能)、IEEE1394×1ポート(+ピンヘッダにより1ポートの拡張が可能)

「Big Bang」との違いは? 進化したポイントも

P55A Fuzionで最も気になるのは、やはりBig Bang-Fuzionからの変更点だろう。価格が下がっているわけだから、当然コストダウンのための機能削減があると考えるべきだ。とは言え、ベースとなるチップセットでは大きな変更は見られず、Big Bang-Fuzionと同等のIntel P55とLucid Hydraという組み合わせとなっている。

「Lucid LT22102」チップを搭載

タッチセンサー化されたボタン類や、独自オーバークロック機能のための「OC Genie」チップなどは健在だ

拡張スロットの構成も目立つ違いだろう。PCI Express x16は2本となった

主な違いとして挙げられるのは、拡張スロットの構成、そして高性能電源回路「DrMOS」で、Big Bang-Fuzionが15フェーズであるのに対し、P55A Fuzionでは8フェーズ。サウンドカードやダッシュボードの付属の有無や、ボード上のヒートシンクの簡素化もポイントだろう。ほか、コンデンサ類は長寿命なタンタルコンデンサ「Hi-c CAP」と固体コンデンサの組み合わせ、フィライトコアは低温かつ全面シールドされた「Icy Choke」で、Big Bang-Fuzionとの違いはHi-c CAPが100%採用ではないというあたりだ。

CPUソケット周り。DrMOS、Hi-c CAP、シールチョークはBig-Bangでも見られるウルトラハイエンド仕様。このあたりの分かりやすい違いとしては、通常の固体コンデンサ化されている部分の存在だろう

一方で、実は進化した部分もいくつか存在する。代表的な例が最新インタフェースへの対応で、P55A Fuzionでは新たにUSB 3.0とSATA 6Gbpsが実装されている。USB 3.0は未だ将来への備えだとしても、SATA 6Gbpsは、高速SSDを利用する際などで、現時点でも明確にメリットを見出せるインタフェースである。コンポーネントの構成次第ではあるが、システムの総合性能では、P55A Fuzionの方が有利になるシチュエーションも少なくないと考えられる。

USB 3.0のチップはおなじみのNEC印

SATA 6GbpsはMarvell SE9128だった

USB 3.0ポートの配置が少し変わっていて、1ポートはバックパネルにあるのだが(青いUSBポート)、もう1ポートはボード上に直立している。内部接続用としての利用を想定しており、例えばフロントパネル側にUSB 3.0を引き出す時などには便利だろう

ところで、Fuzionシリーズの目玉機能であるマルチGPU機能「MSI Fuzion」であるが、登場以来、こまめにアップデートが行なわれており、当初に比べると動作可能なGPUの組み合わせや、動作の安定化などもだいぶ進んできているようだ。このP55A FuzionのLucid Hydraの動作テストについては、2010年8月28日発売の、雑誌「PCfan 10月号」(毎日コミュニケーションズ)で紹介予定となっているので、よろしければご覧いただきたい。

余談だが、左は従来のFuzionの設定画面。2010年8月3日付のドライバからは、右の用に見た目も変更されていた。ドライバは頻繁に改定されているので、色々試してみよう

先鋭機能を扱いやすいスペックと現実的な価格で実現

P55A Fuzionは、Big-Bangの廉価版という側面もあるのだが、あえて"進化版"という位置付けで評価しても良いと思えるマザーボードだ。Big Bang-Fuzionはたしかに高性能マザーボードなのだが、そのハイエンドな仕様を限界まで使いこなせるユーザーと言えば、例えばトップクラスのオーバークロッカーであったりなど、それなりに限られてしまうだろう。

そういった一部のセグメント向けにのみ、混載マルチGPUのFuzion技術を閉じ込めてしまうのは、少し勿体無い。Fuzionは、不慣れな自作ユーザーには確かに難解だが、先鋭的だし、なにより遊べる楽しさのある機能だけに、幅広い層が試せた方が良いという気持ちがある。その答えとなる一枚が、コストパフォーマンスのバランスを整えたスペックを実現し、最新のインタフェースへの対応も果たすなど、より万人向けとなった、このP55A Fuzionであると言えよう。