モトローラ・モビリティ・ジャパンは2021年5月13日にスマートフォン新機種「moto g100」を発表した。ミドルクラスの「moto g」シリーズという位置付けながら、ハイエンド向けのチップセットを搭載し高い性能を備えたmoto g100だが、これまで価格重視のモデルを投入してきた同社が、あえてmoto g100を投入した狙いはどこにあるのだろうか。

ミドルクラスの「g」ながら高性能チップセットを搭載

各社が相次いで国内向けのスマートフォン新製品を投入している昨今だが、中でも積極的に新機種を投入しているのがレノボ傘下のモトローラ・モビリティである。実際同社の日本法人であるモトローラ・モビリティ・ジャパンは、2021年3月26日にミドルクラスの「moto g」シリーズ新機種「moto g10」「moto g30」の2機種、そして折り畳み型スマートフォン最新機種「razr 5G」を相次いで販売開始している。

そのモトローラ・モビリティ・ジャパンが2021年5月13日、新たに日本でSIMフリー市場向けの販売を打ち出したのが「moto g100」である。これは先にも触れたmoto gシリーズの新機種の1つで、同シリーズの中では最上位モデルに位置付けられ、5Gに対応していることが大きな特徴ともいえるのだが、他にも従来のmoto gシリーズとはかなり違った特徴を備えている。

  • モトローラ・モビリティ・ジャパンが2021年5月13日に発表した「moto g100」

    モトローラ・モビリティ・ジャパンが2021年5月13日に発表した「moto g100」。4眼カメラと6.7インチの大画面ディスプレイに加え、ハイエンド向けのチップセットを搭載した高性能が大きな特徴となる

中でも最大の違いはハイエンド向けのチップセットを搭載していることだ。moto gシリーズは基本的にミドルクラス向けのチップセットを搭載しており、実際moto g30はミドルクラスで一般的なクアルコム製の「Snapdragon 662」、moto g10はそれより下のクラスとなる「Snapdragon 460」を搭載しており、いずれも5G非対応だった。

だがmoto g100は、チップセットに「Snapdragon 870 5G」というクアルコム製のハイエンド向けのものを採用することで、5Gにも対応させている。これは2020年に提供されていた同社製のハイエンド向けチップセット「Snapdragon 865 Plus」の性能を向上させたもので、同社製の最新ハイエンド向けチップセット「Snapdragon 888」には及ばないが高い性能を誇ることに間違いない。

実際Snapdragon 865 Plusは、2020年9月から販売されているエイスーステック・コンピューター(ASUS)のゲーミングスマートフォン「ROG Phone 3」に搭載されているもの。それゆえある意味、moto g100は現行のゲーミングスマートフォンよりも高い性能のチップセットを搭載したとも言える訳だ。

そしてmoto g100は高性能チップセットを生かし、新たに「ReadyFor」という機能も搭載している。これはモトローラ・モビリティのハイエンドモデル「motorola edge」シリーズ(日本未発売)に搭載されている機能で、moto g100をディスプレイに接続することにより、動画やゲームを大画面で楽しむだけでなく、ビデオ電話時に顔をトラッキングしてくれたり、パソコンのようなデスクトップ画面で作業をしたりと、さまざまな使い方ができる仕組みである。

  • moto g100はディスプレイに接続することで「ReadyFor」という機能が利用でき、パソコンのようなデスクトップ画面で作業をしたり、ビデオ電話中に顔をトラッキングしてくれたりする

それゆえmoto g100の値段は、モトローラ・モビリティ・ジャパンのオンラインショップ「MOTO STORE」の価格で5万8,800円と、2~3万円台で販売されることが多かったmoto gシリーズの中ではかなり高額だ。それだけになぜ、このような位置付けの製品を、価格重視の傾向が強いSIMフリー市場向けに投入するに至ったのかは疑問がわく所でもある。

バリエーション強化で携帯大手への端末供給を加速か

そこにはモトローラ・モビリティの戦略変化が影響しているといえそうだ。モトローラ・モビリティはレノボ傘下となって以降、日本ではSIMフリー市場向けを重視した戦略を取っており、販売する端末もエントリークラスの「moto e」シリーズや、ミドルクラスの「moto g」シリーズが主体だった。

だが2021年に入るとその傾向が大きく変化しており、同社のフラッグシップモデル「razr 5G」はSIMフリー市場だけでなく、ソフトバンクからも販売されるに至っている。razr 5Gは10万円を超える非常に高額なモデルだけに、それを日本市場に、しかも携帯大手の一角からも投入したことは非常に大きな戦略変化と見て取ることができる。

  • 2021年3月より販売されている「razr 5G」はモトローラ・モビリティのフラッグシップモデルだが、それを日本市場に投入し、しかもソフトバンクからも販売されたことには意外性があった

そうしたことからmoto g100の投入もrazr 5Gと同様、従来の低価格を求める層とは異なる顧客にアピールする狙いが大きいものと考えられる。そしてそれは、携帯大手へのアピールへとつながっているのではないかと筆者は見ている。

日本のスマートフォン市場は、家電量販店などのオープン市場でSIMフリー端末を販売するよりも、多数の契約を持つ携帯大手に独占的に端末を供給した方が、販売数が多くメリットも大きい状況にある。だがモトローラ・モビリティは、razr 5Gでソフトバンクに端末供給を果たしたのが約9年ぶりとのことで、長い間携帯大手向けの端末供給を実現できていなかった。

そこには同社がフィーチャーフォンからスマートフォンへの転換がうまくいかず不振に陥り、2012年にグーグルに買収され、2014年にはさらにレノボに売却されるなど、環境が劇的に変化したことが少なからず影響しているだろう。だが同社はレノボの下でビジネスを再構築し、市場でも安定的な存在感を得られるようになったことから、現在は売れ筋のモデルだけでなく、razr 5Gのような“攻め”のモデルも投入できるようになった。

そうしたことから日本市場においても、5Gへの移行という変わり目を機として攻めの姿勢を取り、販売拡大のため携帯大手へのアピールを強めるようになったといえる。そこで重要になってくるのは携帯大手の幅広いニーズに応えられるラインアップであるだけに、moto g100の投入は低価格モデルだけでなく、ハイエンドモデルでも同社の実力があることを示す狙いが大きいと考えられる訳だ。

ただ携帯大手への端末供給を本格化する上で、避けて通れないのが国内向けのカスタマイズ、より具体的に言えばFeliCaへの対応だ。FeliCa対応はカスタマイズ要素が多くコストアップの要因となるため多くの海外メーカーにとって“鬼門”となっているが、一方で最近ではオッポやシャオミなどの新興勢力が、国内での信頼感を高め市場での足がかりを作るため、あえてFeliCa搭載端末を提供するケースが増えている。

しかもFeliCa搭載モデルが大半を占めるNTTドコモだけでなく、ソフトバンクも顧客からFeliCaの要望が多いとして、「Redmi Note 9T」や「Libero 5G」などの独占販売モデルで相次いでFeliCa対応を打ち出しているし、新興の楽天モバイルも「Rakuten Hand」「Rakuten BIG s」などのオリジナル端末でFeliCaの標準搭載を重視している。FeliCaへのこだわりが比較的弱いKDDIを除けば、携帯各社がFeliCaを重視する傾向は根強いのだ。

  • ソフトバンクから独占販売されたシャオミ製の5Gスマートフォン「Redmi Note 9T」は、税抜きで2万円を切る低価格にもかかわらず、FeliCaを搭載したことで大きな話題となった

先にも触れた通り、モトローラ・モビリティはレノボ傘下となって以降、SIMフリーの低価格モデルを重視してきたこともあってFeliCa対応モデルは提供していない。razr 5Gは折り畳み型という非常に強い個性を持っていたことからソフトバンクもFeliCa対応を重視しなかったといえるが、売れ筋モデルとなればそうもいかなくなるだけに、携帯大手への本格進出を見据える上でもFeliCaへの本気度が問われる所だ。