KDDIは2020年12月9日、「Amazonプライム」をセットにしたauブランドの新料金プランや、指定の料金プランと「DAZN」を契約すると割引が得られる特典などを発表した。これらはいずれも従来NTTドコモとの連携を重視していたサービスだが、なぜKDDIとも連携するに至ったのだろうか。

auがAmazonプライムとのセットプランを発表

政府の料金引き下げ要請の影響からか、年末に入り料金プランに関する発表が相次いでいる。NTTドコモが月額2,980円で20GBの高速データ通信が利用できる「ahamo」を発表し大きな話題を振りまいたが、それを追うかたちでKDDIも、auブランドの新料金プランを発表している。

KDDIはauブランドで、5Gによるデータ通信の使い放題と、さまざまなネットサービスをセットにした料金プランに力を入れている。そうしたことから今回の目玉として発表されたのも、従来のセットプランを踏襲した「データMAX 5G with Amazonプライム」であった。

これはその名前の通り、米アマゾン・ドット・コムの有料会員サービス「Amazonプライム」と、auの5G対応使い放題プラン「データMAX 5G」、そして映像配信サービスの「TELASA」をセットにした料金プラン。それぞれを単体で契約するよりもお得に利用できるプランとなる。

  • KDDIはauブランドで新たなセットプラン「データMAX 5G with Amazonプライム」を発表。他にもスマートスピーカーの「Amazon Echo」シリーズを取り扱うなど、アマゾン・ドット・コムとの関係を強化している

    KDDIはauブランドで新たなセットプラン「データMAX 5G with Amazonプライム」を発表。他にもスマートスピーカーの「Amazon Echo」シリーズを取り扱うなど、アマゾン・ドット・コムとの関係を強化している

ただしこの料金プランは、家族や固定回線などにかかるさまざまな割引を全て適用できれば、6カ月間は月額3,760円で利用できるものの、本来の価格は月額9,350円と高額だ。非常にシンプルで安いプランであるahamoが発表された後に発表会を実施したこともあり、SNSではこの料金プラン、ひいてはauの料金施策全般について批判的なコメントが多数寄せられ、KDDIの評判を大きく落とす事態となってしまったようだ。

もっともKDDIはahamoの対抗策としてこの料金プランを打ち出した訳ではなく、今回の施策をスケジュール通り進めていたら直前になって突然ahamoが発表されてしまった、というのが正直な所であろう。それゆえKDDIはNTTドコモの料金戦略を一通り確認した上でahamo等への対抗策を検討するとしており、現段階で同社の姿勢を評価するのは早計だといえる。

ただNTTドコモとの関係という点で気になるのは、そもそもアマゾン・ドット・コムはNTTドコモと深い連携を図っていたはずだということ。実際NTTドコモは2019年12月より、「ギガホ」等の料金プランを契約するとAmazonプライムが1年間利用できる特典がもらえる施策を展開しており、発表当時大きな話題となっていた。

  • Amazonプライムとの連携策を先に展開していたのはNTTドコモ。2019年12月より同社指定の料金プランを契約すると、Amazonプライムを1年間無料で利用できる施策を実施している

にもかかわらず、なぜアマゾン・ドット・コムはライバルであるKDDIとも連携するに至ったのだろうか。それを読み解くポイントとなりそうなのが、今回の発表で打ち出されたもう1つのサービスとの連携である。

DAZNがNTTドコモとの連携を弱めた2つの可能性

実はKDDIは今回、スポーツ映像配信の「DAZN」との連携も新たに打ち出している。こちらは料金プランとのセットという形ではなく、「データMAX 5G」など指定の料金プラン契約者がDAZNを契約すると最初の3カ月間無料で利用できるほか、それを経過した後もDAZNの標準価格(月額1,925円。税込、以下同様)から毎月110円の値引きがなされるというものになる。

  • KDDIはDAZNとの連携強化も発表、セットプランではないがauの5G使い放題プラン契約者に向け3カ月無料で利用できるなどの特典を提供するという

そしてDAZNといえば、やはりNTTドコモとの連携に非常に力を入れていたサービスでもある。実際NTTドコモは、自社回線契約者限定の「DAZN for docomo」を提供しており、サービス開始当初はDAZNの通常料金より大幅に安い、月額1,078円(税抜きで月額980円)で提供されていた。

  • DAZNは2017年よりNTTドコモと強力な連携を実施しており、NTTドコモ回線利用者向けの「DAZN for docomo」は、かつて通常契約より大幅に安い値段でDAZNを利用できた

だが2020年8月27日、NTTドコモはDAZN for docomoの料金を、2020年10月1日よりDAZNの標準価格と同額にすることを発表。特例として2020年9月30日までにDAZN for docomoを契約した人は従来と同水準の料金で利用できるとしていたが、それ以降にDAZN for docomoを契約するメリットはかなり少なくなっている。

なぜNTTドコモと強力なタッグを組んできたDAZNが、それを止めてしまったのか。その理由を推測するに、1つ大きな可能性として浮上してくるのが、ahamoで見せたNTTドコモの戦略変化である。

NTTドコモは政府の料金引き下げ要請を強く意識したこともあり、ahamoではシンプルな料金プランを志向して大きな評判を得た。それゆえ2020年12月中に発表される予定の「ギガホ」「ギガライト」など既存プランの見直し策に関しても、複雑なセット契約や割引などを排し、シンプルかつ安価であることを重視した内容に変更してくる可能性が高い。

だがそのためには提供するサービスをそぎ落としコストを減らす必要があるため、NTTドコモ側がこれまで優遇策を提供してきたサービス事業者との関係を打ち切った、あるいは縮小した可能性は十分あり得るだろう。その結果有力なパートナーを失ったDAZNやアマゾン・ドット・コムが、新たなパートナーを求めてサービス事業者との連携に積極的なKDDIと接触するに至った、というシナリオが考えられる訳だ。

無論これは筆者の推測に過ぎず、その真偽はNTTドコモが発表する新たな料金施策の内容次第ということになる。携帯電話会社同士の競争だけでなく、携帯電話会社とサービス事業者との関係性を見る上でもNTTドコモが打ち出す次の一手は大いに注目されることとなりそうだ。