米アップルは日本時間の9月10日未明に新製品発表イベントを実施し、薄さ5.6mmという新機軸の「iPhone Air」など4つのiPhone新機種を発表した。だがその発表イベントの中で、昨今のスマートフォン新機種で大々的にアピールされることが多い「AI」の姿をあまり見ることはできなかった。一体なぜだろうか。
新機軸の「iPhone Air」などが話題だが……
日本時間で2025年9月10日に実施された、アップルの新製品発表イベント。その中では「AirPods」の上位モデル「AirPods Pro 3」や、「Apple Watch Ultra 3」など「Apple Watch」の3つの新機種が発表されたが、目玉となったのはやはり「iPhone」の新機種であろう。
その内容については既に多くのメディアで取り上げられている通りだが、簡単に振り返ると今回の新機種は、スタンダードモデルの「iPhone 17」と上位モデルの「iPhone 17 Pro」、その大画面モデルとなる「iPhone 17 Pro Max」、そして両機種の中間というべき新機軸のモデル「iPhone Air」の4機種となる。
iPhone Airは5.6mmというスマートフォンでは驚異的な薄さを実現し、それでいてチップセットに「A19 Pro」を搭載し、iPhone 17より高い性能を実現していることで、大きな注目を集めた。またiPhone 17 Pro/Pro Maxは、よりプロユースに特化し性能重視でデザインや素材を大幅に刷新しており、こちらも話題となったようだ。
その一方で、iPhone 17に大画面の「Plus」モデルが用意されないなど、ラインアップ自体にも大きな変化が生じている。iPhoneはここ最近、デザインやラインアップに大きな変化があまりなかっただけに、多くの変化があった今回の新機種が話題となったことは間違いない。
ただその一方で、昨今の競合他社のスマートフォン新機種発表イベントと比べ、欠けていると感じたものがあった。それは「AI」である。ここ1、2年のスマートフォン発表は、ハードウェアよりもAIを活用した機能の説明に多くの時間を割くなど、AIをアピールポイントとして力を入れる傾向にある。
もちろん今回のアップルの新製品発表でも、AirPods Pro 3とiPhoneを連携して異なる言語間のコミュニケーションを可能にする「ライブ翻訳」への対応など、AI技術を活用した機能のアピールがいくつかなされていた。だがAIを前面に打ち出す競合のプロモーションと比べると、AIの存在感がかなり弱いと感じたのもまた確かである。
「Siri」の新機能開発に苦戦、AI競争で不利な立場に
一体なぜ、アップルは新しいiPhoneでAIをアピールしなかったのか。考えられる理由の1つは、同社の開発者向けイベント「WWDC」で既にAI関連の新機能を打ち出しているからだろう。
アップルはiOSをはじめ、ソフトウェアに関する新機能はWWDCで発表する傾向にある。2025年のWWDCでも「ライブ翻訳」や、写真やスクリーンショットの被写体をAIで検索できる「ビジュアルインテリジェンス」など、Apple Intelligenceに関連する新機能のアピールがいくつかなされている。
それらの新機能は、新iPhoneにも搭載される新しい「iOS 26」にも反映されるので、既にアピールしている機能を改めて説明する必要はないとアップルは判断した。その結果、AIのアピールが弱い印象を与えたのではないだろうか。
だがもう1つ、今回のiPhone新機種でアップルがAI関連のアピールを控えたのには、「Siri」の開発遅れも大きく影響したのではないかと筆者は見ている。アップルは2024年のWWDCでApple Intelligenceを発表した際、SiriをパーソナルなAIエージェントにするためのアップデートを発表し、大きな期待を集めていたのだが、2025年のWWDCではその開発が遅れ、アップデートに関する情報を今後1年のうちに伝えることを明らかにしている。
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アップルは2024年のWWDCでApple IntelligenceによるSiriのアップデートを発表、複数のアプリを横断したアクションを実行できる「パーソナルコンテクスト」などを提供するとしていたが、その開発は1年以上遅れているようだ
だが、スマートフォンのパーソナルAIエージェントに関する機能進化はここ最近急速に進んでいる。例えばアップルの競合となるグーグルも2025年の新機種「Pixel 10」シリーズで、シーンに応じてユーザーが必要とする情報や機能を先回りして提示する「マジックサジェスト」など、パーソナルAIエージェントを実現するための新機能を積極的に導入し、強化を図っている。
一方で、Siriの新機能開発が遅れているアップルは、スマートフォンでのAIエージェント実現に向けた技術開発競争では競合に大きな後れを取ってしまっている。それがAIのアピールを弱める大きな要因となり、優位性の低いAIよりもハード面の特徴を前面に打ち出すべきと判断したのではないだろうか。
そのハードウェアが話題となっていることを考えれば、アップルの狙いはうまくいったといえる。ただそれでもアップルのAI分野における出遅れ感が大きく変わる訳ではなく、苦悩の時期がまだ続くといえそうだ。



