英国の進行スマートフォンメーカー、Nothing Technologyは2025年7月22日、エントリークラスのスマートフォン新機種「CMF Phone 2 Pro」の国内投入を発表した。デザインとコストパフォーマンスに重きを置いたモデルとなるが、2024年に日本で発売された前機種「CMF Phone 1」と比べると、プラチナバンドやFeliCaへの対応など、日本向けローカライズにかなり力が入れられている。一体なぜなのか。
デザイン性と低価格を両立した「CMF」ブランドの新機種
デザインに特徴のあるIT製品を提供している、英国の新興スマートフォンメーカーであるNothing Technology。同社は日本にもオフィスを立ち上げ製品投入を積極化しており、2025年4月にもミドルクラスの新機種「Nothing Phone(3a)」を投入している。
そのNothing Technologyが2025年7月22日、新たに発表したのが「CMF Phone 2 Pro」だ。「CMF」は同社のサブブランドというべきもので、デザイン性に力を入れながらも低価格であることに重きを置いている。
そして日本でも2024年10月に、CMFブランドのスマートフォン「CMF Phone 1」が発売されており、背面のパネルを交換できる特徴的なデザインなどで話題となった。
それだけにCMF Phone 2 Proも、やはりデザインと価格が大きな特徴となっている。CMF Phone 1とは違い背面パネルの交換はできなくなったが、ネジを用いた独特のデザインや、ストラップやスタンドなどの専用アクセサリを装着できるアクセサリポイントは継続して用意がなされている。
一方、今回のモデルは「Pro」が付くこともあって性能面の強化がなされており、その代表的な部分の1つがカメラだ。CMF Phone 1は背面カメラが広角、超広角の2眼構成であったのに対し、CMF Phone 2 Proは広角、超広角、そして望遠の3眼構成に進化。広角カメラと望遠カメラには5000万画素のイメージセンサーを搭載し、性能向上を図っている。
またチップセットも、CMF Phone 1に搭載されていた「Dimensity 7300 5G」を強化した「Dimensity 7300 Pro 5G」を採用。「Nothing Phone(3a)」で初めて対応した、画面や音声を記録してAIで管理できる「Essential Space」を利用するための「Essential Key」も新たに搭載されるなど、さまざまな部分で強化が図られている。
それでいて低価格は維持しており、RAM8GB、ストレージ128GBのモデルで4万2800円。RAM8GB、ストレージ256GBのモデルは4万7800円で販売されるとのことだ。
FeliCaに加えプラチナバンドにも対応、その意図は
だが実は、CMF Phone 2 ProがCMF Phone 1から劇的に変わった要素があり、それはローカライズがなされていることだ。実はCMF Phone 1は、低価格を実現するため元々機能がかなり絞られていたのに加え、国内向けのローカライズをせずに販売したことから、日本で利用する上では不便な部分が少なからずあった。
その1つがFeliCaに対応していないことで、CMF Phone 1は背面を交換できるという構造上の都合もあって、FeliCaはおろかNFCも搭載されていなかった。そしてもう1つが周波数帯の問題で、日本ではNTTドコモとKDDIが4Gの基幹周波数帯として用い、全国を最も広くカバーしている800MHz帯(バンド18、バンド19)に対応していなかったのである。
それゆえNTTドコモとKDDI、そしてKDDIの800MHz帯を一部ローミングで使用している楽天モバイルの回線では、800MHz帯のみでカバーしている地方や都市部の入り組んだ場所などでつながらない、あるいはつながりにくくなることがあった。CMF Phone 1が対応するプラチナバンドを使用しているソフトバンク回線以外での利用には難があったのだ。
だがCMF Phone 2 Proは、NFCに対応しFeliCaも搭載しただけでなく、800MHz帯にも対応しソフトバンク回線以外でも安心して使えるようになった。それに加えてCMF Phone 1では対応していなかったeSIMにも対応し、国内での利用は格段にしやすくなったといえるだろう。
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CMF Phone 2 ProはCMF Phone 1で非対応だったFeliCaやeSIMに対応したほか、NTTドコモとKDDIのプラチナバンドである800MHz帯にもついに対応し、携帯4社のネットワークで安心して使えるようになった
ただローカライズにはコストがかかるため、CMFのような低価格ブランドにとっては不利に働く部分も多い。それにもかかわらずNothing Technologyがここまでローカライズ重視の判断を下したのかといえば、携帯電話会社との取引を本格化させ、販売を増やしたい狙いが大きいだろう。
実際、CMF Phone 1は基本的に自社販路と一部MVNOのみでの販売となっていたが、CMF Phone 2 Proではそれに加えて携帯電話会社の1つ、楽天モバイルからの販売も実現している。Nothing Technologyは2025年に入って楽天モバイルとの関係を強化しており、Nothing Phone(3a)も楽天モバイルからの販売を実現していた。
同社はソニー出身の黒住吉郎氏が2024年に参画して以降、国内市場開拓に向けた取り組みを大幅に強化。楽天モバイルを皮切りとして、今後より販売数が見込める携帯電話会社への販路を拡大していく可能性が高い。
携帯電話会社に端末を供給する上では、各社のネットワークで動作する性能が求められるし、国内で根強いニーズがあるFeliCaへの対応も求められる。それだけにNothing Technologyは、国内販路拡大のためにもローカライズ重視の方針へ転換するに至ったのではないだろうか。
ただスマートフォン市場が既に飽和状態にあり、新興メーカーにとって開拓が難しい状況にあることもまた確かだ。Nothing Technologyは製品に関しては非常に強い個性と特徴を持つとはいえ、新興メーカーだけに日本の多くの消費者に選んでもらう上では認知など多くの面で課題があるだけに、販路開拓だけにとどまらないローカルでの取り組みが求められる所だろう。