今回は、前回までとはちょっと話の傾向が変わるのだが、スタンドの明るさ表記について話を進めたい。もともと光源が組み込まれている照明器具ではその明るさを示す際、器具光束や使われている光源の全光束を示す「lm(ルーメン)」を用いるケースが多い。ただし、カタログなどでの表示が、メーカーごとにバラバラな分野もある。それがデスクスタンドやクリップスタンドといった製品群だ。そのため、あるメーカーの製品と、別のメーカーの製品とを、そのスペックだけを見てどちらが明るいのかを判断することが難しくなっている。もちろん、スタンドの性能は単純な明るさだけでは決まらない。光の均一性や配光なども重要だ。さらに、性能には直接関係しないが、そのデザインも製品選択の際には大きな要素になる。それでも、どのくらいの明るさなのかという点は一番基本的な部分であり、それについてダイレクトに比較できないというのは困った問題だ。

デスクスタンドやクリップスタンドでは、一般的な照明器具のようにlmで明るさを表しているものもあるが、一定の距離で点灯した場合の照度(lx:ルクス)や、JIS規格照度標準のクラスを示しているだけといったものもある。例えば、パナソニックや日立アプライアンス、NECライティングなどはlm表示だが、山田照明やコイズミ、ツインバード工業などは、実際に使用する距離でのlxで、興和はlmとlxの両方で明るさを表示している。

パナソニックのLEDデスクスタンド「SQ-LD500」。明るさの表記は全光束で340lm

山田照明の代表的なブランド「Z-LIGHT」のLEDモデル「Z-6600」。バッテリー内蔵で、50%の明るさなら約5時間連続使用できる。明るさは照度で表記されており、30cmの距離では340~366lx、50cmの距離では118~120lx

lmで表した場合、その照明器具に使用されている光源の明るさの絶対値が分かることになる。それに対して、lxは距離や配光によって、その値が変わる。スタンドの明るさを示すのに、lxが使用されるのには理由がある。デスクスタンドやクリップスタンドは、部屋全体を照らすのではなく、おもに手元を照らすための照明だ。そのため、実際に使用する距離での照度を示すほうが現実的な指標になるという考えである。JIS規格照度標準でのクラスを示している場合もこれとほぼ同様だ。JIS規格照度標準では、AA型が30cmの距離で500lx以上/50cmの距離で250lx以上で、A型が30cmの距離で300lx以上/50cmの距離で150lx以上、それ以下が一般型となっている。

LEDスタンドが主流になるにつれて、照度で明るさを表記するメーカーが増えてきているようだ。白熱電球や蛍光ランプが全方向にほぼ均等に光を出すのに対して、LEDは一定方向に強い光を出す。そのためLEDスタンドでは、白熱電球や蛍光ランプを光源としたスタンドよりも少ない全光束で同じ照度を得ることが可能だ。同じ照度のスタンドを全光束や器具光束で表示した場合、LEDスタンドは、白熱電球や蛍光ランプを使用したスタンドに比べて、小さい値となる。カタログなどを見る側が光源の特性の違いを意識していれば問題はないが、そうでない場合、LEDスタンドのほうが暗いと判断されてしまうことになりかねない。見かけ上の数値の差で、暗いという印象を持たれることを避けているというのも、lx表示を行っている理由のひとつだろう。

ところが、測定した距離は明記されていないがlxだけがカタログに表示されているケース、そもそも明るさに関する記述がカタログなどに存在しないケースもある。距離が明記されていない場合はおそらく、そのスタンドを置いて点灯させている机の上の照度ということだと考えたいが、時々、とんでもなく高い照度を表記しているケースもあるので、確証は持てない。また、LEDを光源として使用する照明器具で、明るさに関する表記がないのはさすがに問題だ。白熱電球を使用したスタンドならば、光源の定格から、そのおおよその明るさを知ることができる。蛍光ランプを使用しているスタンドでも同様だ。しかし、LEDを光源としたスタンドでは、なかなか推測は行えない。例えば、「定格消費電力が8Wだから多分60W形の白熱電球と同じぐらいの明るさだろう」という概算は、「排気量が1,400ccの車だから最高出力は80PSぐらいだろう」という推測と同じように、あまり当てにはならない。

具体的なメーカー名を挙げると角が立つので一般論になってしまうが、照明器具を以前から扱っているメーカーの製品では、カタログなどに何らかの指標になる数値が記載されているケースが多い。それに対して、LEDが低価格化してから雑貨の一カテゴリーとして、取り扱いを始めたというようなメーカーでは、あまりそういったことに気をかけていないケースが多いようだ。

いずれにせよ、一般ユーザーとしては、基本的な基準になる値は、カタログなどに表記してほしいところだ。さらに表記は、全光束か照度か、どちらかに統一してもらえば便利である。だが、こういった表記を行っているメーカーの多くは、長年、照明器具を取り扱ってきている老舗でもあったりする。なかなか、そういった動きにはならないだろう。