この連載では、デスクトップ型のPCを自作するうえで必要最低限の知識やテクニック、応用として自作したPCの簡単なカスタマイズ方法などを、実際に自作する際の手順に沿って紹介していく。連載を参考にパーツを入手、組み立てていけば、初めての人でも問題なく自作PCを完成させられるだろう。

前回に引き続き、まずは基礎知識編としてパーツごとの最新トレンドを紹介したい。

グラフィックスカード : ハイエンドモデルと統合型チップセットの躍進

2個のGPUを1枚のグラフィックスカードに搭載することで性能を高めた、AMDの「Radeon HD 4870 X2」

1個のGPUで高い性能を持たせる思想で設計されている、NVIDIAの「GeForce GTX 280」

ハイエンドモデルの価格帯を引き下げるきっかけを作った、AMDの「Radeon HD 4850」

PCで表示すべき画面を作り出し、それをディスプレイに出力する役割を持つグラフィックスカード。グラフィックスカードは、GPUと呼ばれるチップを中心に構成されており、このGPUの性能が、グラフィックスカードの性能や価格を大きく左右する。

現在においてグラフィックスカードの性能といえば、多くは3Dグラフィックスの描画性能を表しており、とくに3Dゲームの処理能力に大きな影響力を持つと考えて良い。つまり、3Dゲームを積極的にやるならば高価で性能の良いグラフィックスカードが必要になるが、そうでないなら、投資額を抑えることができるパーツでもあるわけだ。

グラフィックスカードもCPUと同じように、価格や性能に応じてセグメントが分かれている。AMDとNVIDIAという二社が競争を繰り広げており、それぞれ、大きく四つに分けられている。

■NVIDIA
・超ハイエンド : GeForce GTX 280/260
・ハイエンド : GeForce 9800シリーズ
・ミッドレンジ : GeForce 9600シリーズ
・バリュー : GeForce 9500/9400シリーズ

■AMD
・超ハイエンド : Radeon HD 4870 X2
・ハイエンド : Radeon HD 4870/4850
・ミッドレンジ : Radeon HD 4670/4650、Radeon HD 3600シリーズ
・バリュー : Radeon HD 3400シリーズ

超ハイエンドは価格が5万円を超えるような3Dゲーマーに特化した製品である。その下のセグメントは、ハイエンドということになるが、以前は超ハイエンドとハイエンドの境界はわりと曖昧だった。しかし、AMDが投入したRadeon HD 4870/4850によって、その価格帯は大きく低下。以前は4~5万円程度がハイエンドグラフィックスカードの価格帯があったものが、いまでは2~3万円台にまで下がっている。とくに強烈な存在となったのが、参考価格199ドルとされたRadeon HD 4850で、この製品に引きずられるようにNVIDIAのGeForce 9800シリーズも2万円前後の価格帯まで下がったのである。

従来、この価格帯を支配していたミッドレンジの製品は1万円台にまで下がっているが、ハイエンドの価格が下がってきたこともあって、その差は小さくなった。2万円前後をベース価格としたハイエンドモデルが、現在、もっとも狙い目の製品といえるだろう。

一方、存在が薄くなっているのはバリューセグメントの製品だ。ミッドレンジが1万円台にまで下がってくると、バリューセグメントは最大でも1万円程度という価格帯になる。一方で、コスト重視ユーザーの強い味方であるグラフィックス機能を内蔵した統合型チップセットの性能も向上している。

とくにAMD 790GXやAMD 780Gなどは、わざわざバリューグラフィックスカードを増設しなくても十分な性能を持っているし、インテル製統合型チップセットにしても3D性能こそ弱いが、それ以外の動画再生支援機能などは充実させてきている。バリューグラフィックスカードを買うぐらいなら統合型チップセットでコスト節約、という考え方も当たり前になっていきそうな雰囲気になっている。

メモリ : 依然としてDDR2 SDRAMが人気。価格は暴落

主流の地位を堅持しているDDR2 SDRAM。価格が低下し、32ビットOSの限界である2GB×2枚での利用も現実的になっている

切り欠きの位置がDDR2とは異なるDDR3 SDRAM。かなり価格は下がっているが、依然として一部パワーユーザーが採用するに留まってしまっている

DDR2 SDRAM(左)とDDR3 SDRAM(右)の中には、写真のように金属製のヒートシンクでチップが覆われているものもある。高速動作に伴う発熱に対応したり、冷却効率を上げて信頼性を高めたりする効果を狙ったものだ。特にハイエンドメモリなどはこういった製品が多い

PC処理における作業領域として利用されるメインメモリ。長らくDDR2 SDRAMが主流になっており、この傾向は今も変わらない。インテルのチップセットは多くがDDR3 SDRAMに対応したものの、依然としてDDR2 SDRAMの人気が高く、マザーボードもDDR2 SDRAMに対応した製品のほうが多いほどだ。

この理由は明白で、DDR2 SDRAMのほうが安いからである。とくに、Windows Vistaではメモリ容量が多いほうが望ましい。Vista以前は1GBでも十分、と言われていたのが、登場以後、ライトな使い方しかしない人でも2GBを超えるメモリを搭載する人が増えた。

こうしたニーズと並行して、昨年末辺りからDDR2 SDRAMの価格が急落したのも大きな要因になっている。イメージとしては、従来の倍の容量が同じ価格で購入できる、といった具合の価格低下が発生したのである。DDR3 SDRAMも価格が下がっているのだが、DDR2 SDRAMの下がり方は極端で、安価に大容量のメモリを搭載できることから、継続した人気を維持しているのである。

ちなみに、メモリを制御するコントローラは、インテル製品はチップセット側、AMD製品はCPU本体に、それぞれ搭載している。こうした違いはあるものの、一度に2枚のメモリへアクセスして高速化を図る技術を採用しているので、2枚単位で搭載するのが一般的だ。例えば、2GBを搭載するのであれば、2GB×1枚ではなく、1GB×2枚を搭載するのがセオリーである。

その容量面だが、32ビット版Windowsの制限である4GB一杯まで搭載する人が増えているようだ。さらに、4GB以上のメモリを搭載して、Windowsが利用できない部分をRAMディスクとして使う方法も確立されている。これはややイレギュラーな使い方ではあるが、ともかく、1万程度で2GB×2枚セットが購入できる現実を考えると、4GBという容量は現在もっともコスト効果が高い選択肢といえるだろう。

HDD : テラバイトも現実的。SSDも注目度アップ

現在、おそらく市場でもっとも安価に入手できる1TBドライブであるWesternDigitalの「WD Caviar GP」。特価では1万円を切ることも

ディスクの代わりに半導体へ記録するSSDも採用するユーザーが増えている。割高にはなるがメリットは小さくない

データやアプリケーションファイルなどを格納しておくHDD。HDDの選択においては、やはりコストと容量の関係が重視される。とくに今年は、500GBモデルの1万円切りという出来事があった。その後も価格は下がり続けており、最近では1TBモデルが1万円台前半で入手することもできるほど。ときには、特価品として1万円未満で1TBモデルを購入できることもある。

技術的な面では、相変わらずシリアルATAインタフェースの製品が主流となっている。特別な理由がない限り、シリアルATA以外のインタフェースは検討から外していいだろう。

また、プラッタ容量が向上した点も留意しておく必要がある。プラッタとは、HDD内部のディスク(円盤)のことで、HDDはプラッタ1枚当たりの容量向上により、大容量なHDDを実現してきた。一方で、プラッタ容量の向上は、同じ容量ならばディスク枚数が減るので故障する確立が下がるし、性能面でも有利になるというメリットにあふれている。このプラッタ容量は昨年まで200GB台が主流だった。しかし、今年に入って300GB超のプラッタを持つHDDが一般化。同じ容量であっても新しいモデルを積極的に選択していくのがお勧めだ。

さらに、HDDに関しては、新しい選択肢も生まれている。それがSSD(Solid State Drive)だ。HDDは磁気を使ってディスクに記録するが、その記録や読み出しのためにヘッドと呼ばれる部品を操作するという機械的な動作を内部的に行っている。SSDは半導体であるフラッシュメモリを利用したもので、電気的な信号のみでデータの読み書きを行う。分かりやすくいえば、デジカメのメモリーカードをHDDのようにして使うようなイメージだ。

SSDのメリットは、ヘッドやディスクの物理的な動きがないことである。これは、振動などを原因とした故障が一切発生しないことを意味するほか、物理的な動きを待つための時間がゼロになるということで、パフォーマンス面でも意味がある。フラッシュメモリがHDDよりも速いというわけではないのだが、最近ではSSDの高速化も進んでおり、HDDよりも安定して高速なドライブが増えてきた。

一方で、価格面や容量面でHDDに分があるのも事実。SSDは現在、PCショップなどで購入できる製品では、128GBの容量を持つものが最大容量であるうえ、その価格は安くても5万円を超える。SSDも安価なモデルが登場し始めているが、それはパフォーマンスに難があったりする。そのため、まだまだ一部ユーザーのものという印象に留まっている。

とはいえ、SSDも高速化と低価格化という流れで進んでおり、近い将来には積極的にHDDと比較検討できる存在になっていく可能性はある。気に留めておきたい存在だ。

さて、今回はここまで。次回は基礎知識編~PCパーツ最新トレンド紹介の最終回だ。以降は実際の組み立て作業に入って行く予定なので、もう少々お付き合いいただきたい。

(機材協力 : ASUSTeK Computer)