前回までに完全に動作する状態となった自作PC。このあとは、利用するアプリケーションなどをインストールするなどして、普通にPCとして使っていくことになる。しかし、単に組み上げただけだと、いくつか気になるポイントが出てくることだろう。その一つが騒音だ。今回は、この騒音を解消するための手段について紹介していきたい。

騒音(ノイズ)を生む最大の原因はファン

PCにおける騒音の原因は、主にモーターの回転によって生み出される音である。例えば、HDDや光学ドライブ、ファンといったパーツが原因として挙げられる。この中でもっとも大きな騒音の原因となっているのがファンの存在である。CPUやGPUのクーラー、ケースや電源に使われているファンは、モーターを覆うものが少ないうえ風切り音なども付加されるため、とくにファンの回転数が高くなると騒音は凄まじいものとなる。

かといって、単にファンを取ってしまえばOKというわけでもない。PCの各パーツの発熱をケース外へ逃がすためにファンの存在は不可欠だからだ。もちろん、ファンレスというアプローチもあるのだが、これはパーツを選ぶしケース内の空気の流れを考えるなど難易度の高い作業になるため、この連載の主題である"初めての自作"で積極的にお勧めできる手法とはいえない。

そのため、もっとも正統なアプローチはファンを静かなものに変える手法となるだろう。ファンの騒音には複数の要因が絡むため一概にまとめることは難しいが、大雑把に覚えておきたいポイントは、

  • 同じファンであれば回転数が下がると騒音は減る
  • 同じ口径(サイズ)のファンの場合回転数が下がると風量が減る
  • 回転数が同じであれば口径が大きいほうが風量が多い

の3点である。この3点のポイントから静音化を目指すことになり、回転数が低いファンを用いることで騒音を減らし、大口径のファンを用いることで風量が減らないように工夫するのが目標となる。

とはいえ、ケースファンなどは取り付け可能な大きさなどが制限される。そのため、大きなファンに交換するといっても一筋縄ではいかない。そこで、まずはCPUなどのPCパーツの温度が適切に維持される程度へ、回転数の低いファンへと交換するのが簡単だ。

交換するファンは、自作ショップなどにいくと多数販売されている。"静音タイプ"などをアピールする製品も非常に多い。このファンを選ぶときにはスペックを参考にすることになり、騒音という項が参考になるだろう。一般にdB(デシベル)値で表記されることが多いこの数値は、ファンの騒音を明示したものだ。この数字の小さなものを選ぶのがもっとも分かりやすい選択方法となる。

ただ、この数値では音質までは分からない。ファンによっては耳障りな高音が目立つ製品もあれば、なんとなく不快な気持ちになる低音が目立つ製品もある。デシベル値は低いが好みに合わない、といったこともあり得るので、このあたりは多少投資をしてトライ&エラーを繰り返す作業になるだろう。

ちなみに、回転数を落としたからといってPCパーツの温度が上昇しすぎる事態は避けなければならない。PCパーツの温度を監視する場合は、マザーボードに付属するツールなどを利用するといい。マザーボードに付属していない場合はフリーソフトを探してみるといいだろう。こうしたツールの多くは温度が上昇しすぎたときのアラーム機能も持っているので、警告が頻繁に出るようなら、もう少し回転数の高いファンへ交換するなどの判断の材料にしたい。

なお、CPUクーラーに関しては、とくにインテル製CPUに付属する純正クーラーのファンは独特の形状をしているため交換が非常に難しく、CPUクーラー自体を交換することになる。CPUクーラーの場合は、CPUの熱を奪うヒートシンクの存在が大きく絡むため、ファンの回転数云々だけで性能が決まらない。ただ、大型ヒートシンクと大口径ファンを組み合わせたCPUクーラーは概して性能が高く、騒音も抑えられている。ケースの容積が許すならば、こうした製品への交換がお勧めだ。

単体のファン製品は自作パーツを扱うショップで販売している。静音タイプをアピールされている製品が分かりやすい

スペック面では風量とノイズレベルに要注意。騒音に直接影響する数値はノイズレベルであるが、風量が下がりすぎないよう配慮することも重要だ

ケースファンは前面下部や背面に備わっているのが一般的。今回利用しているASUSTeKの「TA-211」では、背面に80mm角サイズのファンが2個搭載されている

ファンのサイズが分からない場合は、外して型番を確認。型番にそれらしい数字が書かれている(この場合、825の数字により80mm角/25mm厚のファンであることが分かる)。判断に迷う場合はインターネットを利用して型番で検索してみよう

静音化において各種パーツの温度監視は必須。ASUSTeKのマザーボードなら、「PC ProbeII」というツールを利用してCPUやマザーボードの温度を監視できる

温度を監視するツールはフリーソフトでも存在する。SpeedFanは対応するマザーボードも多く、使い方も手軽で人気のあるツールだ

CPUクーラーは一般に大型のものがベター。静音性を高めつつ冷却性能も高い。写真のASUSTeKの「Arctic Square」は92mm角ファンを中央に埋め込んでいる大型クーラーだ

ソフトウェアを利用してタダで対処する

さて、ここまでに紹介した手法はパーツを交換するという、一定の投資を必要とするものであるが、とりあえず少しでも静かになるといいな、ぐらいの要望であれば、タダで対処することができる場合もある。それが、BIOSやソフトウェアを用いたファン回転数の制御だ。ファンコントロールとも言われるこの手法は、CPUなどのパーツの温度が低いときにはファンへ供給する電圧を下げて回転数を落とし、熱くなってきたときにのみ回転数を上げるものである。

今回利用しているマザーボードはASUSTeKのP5K-Eであるが、これにはQ-Fan2と呼ばれるファンコントロール機能が搭載されている。これは、BIOSからファンコントロールを行うもので、マザーボードに付随する機能の一つである。こうした機能があるマザーボードであれば、積極的に活用していくといいだろう。

ちなみに、ファンコントロールを行うパーツも売られてはいる。こうしたパーツを利用するのも手ではあるが、これらの温度監視はセンサーを自分で取り付けたりする必要があったり、手動コントロールしか行えないなど難易度は若干高め。まずはBIOSでの制御を試し、それで不満であればファン自体を交換するのが手軽な手法といえる。

もう一つ、無料で行える手法として、フリーソフトを利用したファンコントロールも紹介しておきたい。こちらもサポートがない点でやや難易度は高い。しかしながら、マザーボードの機能としてファンコントロールがされていない場合でも利用できる場合があるので、多くのユーザーが利用できるのが魅力といえる。

いずれにしても、静音化は非常に奥が深い。ここではシンプルに行える手法のみを紹介しているが、これは静音化を行う最初の一歩を紹介しただけといっても過言ではない。また、静音化と冷却能力は単純に作業しただけではトレードオフの関係になり得るものであり、リスクの伴う作業であることも認識しておく必要がある。こうしたことを踏まえたうえで、いろいろな静音化手法にチャレンジしてみてほしい。

ASUSTeKのマザーボードに搭載されている「Q-Fan2」機能。CPUクーラーのファンやケースファンを温度に応じて自動的に制御する機能で、CPUクーラーについては静音重視設定とパフォーマンス重視(つまり冷却重視)設定、中間の設定から動作を選択できる

Q-Fanの設定はBIOSからだけではなく、Windows上で動作する同社独自ソフト「AI Suite」からも設定が可能

SpeedFanでも温度に応じたファンコントロールが行える。制御するファンが接続されているセンサーを選び、回転範囲を%で指定。Automatically~にチェックを入れておく。センサーとファンの関係は先に掲載したSpeedFanのトップ画面で設定できる数値を変更し、実際のファンの動きをチェックすると分かる

温度監視対象のパーツを選び、その温度と、どのファンの制御を関連付けるかを設定。ここで対象パーツの目標温度(Desired)を設定しておくことで、SpeedFanは目標温度に近づくよう自動的にファンへ供給する電圧を調整して回転数を変えてくれるようになる

(機材協力 : ASUSTeK Computer)