パーツ選びでパソコンの性格が変わる

前回までにPC自作に必要なパーツは一通り紹介した。これらのパーツから、具体的な製品を選択して購入していくわけだが、選択した製品の性格が最終的なPCの性格を決めることになるので、慎重に選択しなければならない。

この製品選びにおいて、現実的にもっとも考慮されるファクターは製品の「価格」であろう。より安く、より良いPCを作り上げたいと思うのは当然。まして保証という面で自作PCはメーカー製PCに劣るわけで、具体的な数値にはしづらいものの、そのぶんだけでも(気分的に)取り返したいところだ。ただ、この連載はお買いもの上手になるための指南を目的としたものではないため、"より安く"購入する方法については読者各位の努力にお任せしたい。

ただ、一般的には、パフォーマンスや機能に対しては対価として返ってくるわけで、高い性能を得ようと思うならば、それなりの投資が必要になるし、価格を抑えようと思うならば、ある程度の犠牲は必要になると考えたほうがよいわけだ。こうした価格対パフォーマンスの話は、連載の第1~2回目でも少し触れているとおり、メーカー側も価格帯別に製品をラインナップしており、ユーザーはこれを参考にパフォーマンスの優劣をある程度は測ることができる。

さて、パーツ選びでは重視するパーツも決めておくといいだろう。自作PCの魅力は何といっても自分の好みのPCを作り上げられることにあるが、好みというのを言い換えれば自分のニーズに合ったPCを作り上げられるということである。例えば、ゲーム、AV関連、ビジネスソフトなど、主に利用するアプリケーションに傾向があるのであれば、それが快適に動くようにパーツを選んでいけばいいわけだ。

例えば、典型的な例を挙げるとゲーム用途に向けたPCを作るのであればCPUとビデオカードは高いパフォーマンスが要求される。またAV用途であれば、録画用スペースとなるHDDや次世代メディア対応の光学ドライブなどに投資するべきだろう。また、ビジネス用途であれば、多くのデータを開くことを考えてメモリ容量を増やしたり、セキュリティを強化するためにTPMチップを搭載したマザーボードを選択するといった考え方も必要になる。

パーツ選択はバランスを心掛けたい

ただし、決して頭デッカチな仕様にはしないことには心掛けるようにしたい。例を挙げると、ゲームで3D性能を上げたいからハイエンドビデオカードを買ったがCPUはバリューセグメントのCeleronやSempronを選択するといったものが、頭デッカチなシステムといえる。これは、アプリケーション実行中にCPU性能のほうが先に頭打ちになってしまい、せっかくのハイエンドビデオカードの性能をフルに引き出せなくなる。

PCの性能は一番遅いものに足を引っ張られやすい。ボトルネックという表現がよく用いられるが、この例ではCPUがボトルネックになってビデオカードの性能がフルに引き出せないわけだ。これはCPUとビデオカードに限った話ではなく、メモリやHDDなども同様である。つまり、自作PCのパーツ選びにおいては、ある程度バランスよくスペックを整えることが必要になるわけだ。

逆にいえば、上記のような明確なニーズを持たずに自作PCへと踏み切る場合、投資できる金額を決めて、バランスよく各パーツに配分していくようなスタイルにすれば価格相応にバランスの良いパフォーマンスを持ったPCになるだろう。

PCの基盤となるマザーボード

さて、パーツ選択における二つのポイントを挙げたが、もう一つ重視したいのはマザーボードの選択である。第1回で述べたとおり、マザーボードはほぼすべてのPCパーツを接続される、いわばハブ的な存在となる。それだけに、マザーボード次第で利用できるパーツも制限されPCの性格が大きく変わるし、最近ではマザーボードにオンボード搭載されたサウンドやLANなどをデバイスをそのまま利用するスタイルが一般化している。そのため、後から変更するのが非常に面倒なパーツでもある。それだけに慎重な製品選びが必要となるのだ。

マザーボードの選択でまず注目すべきは基本スペックである。チップセットや対応メモリ、搭載されているデバイス、接続可能なデバイスなどを理解し、自分の求めるスペックを網羅しているか、また拡張デバイスなどでそれを補えるかを、じっくり検討しよう。

ちなみに今回は、第1回目のマザーボードの項でも紹介したASUSTeKの「P5K-E」を利用する。この製品は、Intel P35チップセットを利用したメインストリーム向けの製品となるが、メインストリームCPUのCore 2 Duoはもちろん、ハイエンドCPUのCore 2 ExtremeからバリューCPUのCeleron、旧世代製品のPentium Dなど幅広く対応できる。また、Intel P35という新しい世代のチップセットを利用していることから、次世代のCPUへの対応が果たせるのも大きなポイントだ。

また、オンボード機能も8chサウンド、ギガビットイーサ、SATA+eSATA、IEEE1394など、現在のPCにおいて拡張カードを装着せずに実現するのが一般化しているデバイスは網羅されている。さらにいえば、PCI Express x16スロット×2基の構成によって、AMD(ATI)のマルチGPU技術であるCrossFireを利用できることにもなる。高いスケーラビリティと豊富なデバイスにより、インテル製CPUを利用する基盤としては多様なニーズに対応できる仕様といえるだろう。

パーツ選びの基本はスペックの把握にある。これはマザーボードも同様なので、パッケージやメーカーWebサイトでの情報収集は欠かせない

IOリアパネルで提供されるインタフェースも要チェック。マザーボードに搭載された機能によって、ここのレイアウトも異なる

そして、本製品はASUSTeK独自の機能が数多いのも特徴だ。マザーボードメーカー独自の工夫や機能は、PCそのものの性能には影響しないものが多い。しかし、導入時の組み立てやすさや、目には見えにくいファクターである信頼性、カスタマイズ・チューンナップ・メンテナンスのしやすさ、といった導入前~導入後にいたるさまざまな場面でメリットを感じることが多い部分でもある。

今回利用するP5K-Eを例にとって特徴的な部分を挙げてみると、

導入時

  • AI Slot Detector : 拡張スロットへのカード装着が中途半端なときにLEDが点灯
  • Q-Connector : マザーボード上のヘッダピン接続補助コネクタ
  • AI Net 2 : LANケーブルの断線などをチェックする機能

信頼性

  • コンデンサ : 電気特性と耐熱性に優れたコンデンサを使用
  • Stack Cool 2 : マザーボード裏面に設けられた放熱基板
  • 8フェーズ電源回路 : CPUへの電力供給を安定させる電源回路
  • CrashFree BIOS 3 : BIOS破損時に復旧できる機能

カスタマイズ・チューンナップ・メンテナンス

  • Super Memspeedテクノロジ : BIOSのメモリ設定項目を強化したもの
  • O.C. Profile : BIOS設定内容を複数保持。切り替えて使用する機能
  • EZ Flash 2 : BIOS画面からBIOSアップデートを行える機能。USBメモリにも対応
  • Q-Fan 2 : 自動ファンコントロール機能

といった機能が盛り込まれている。

このほか他メーカーでは、BIOS起動プロセスのPOSTコードを表示するLEDが用意されていたり、付属CD-ROMへマザーボード関連ドライバを一括インストールできる機能が盛り込まれているものなどが魅力ある独自機能といえるだろうか。なくてはならないものではないが、あると便利なのものであることは間違いなく、こうした付加価値にも着目して後悔のない慎重なマザーボード選びをするようにしたい。

CPUへ電力を供給する回路の強化や信頼性の高いコンデンサの利用はハイエンドマザーを中心に施されることが多い。またチップセットクーラーはファンレスのものを選んでおくのが無難だ

ASUSTeK独自機能のQ-Connector。USBやIEEE1394、電源スイッチ/LEDなどのヘッダピンを取り付けやすくする補助パーツ

BIOSアップデート機能のEZ Flash 2やO.C. Profileなど、メンテナンスやチューンナップに便利な機能もBIOS上で提供されている

さて、次回からはいよいよPCの組み立て方法の紹介へと移りたい。

(機材協力 : ASUSTeK Computer)