今回のテーマは「保育所不足問題」である。

「保育所ガチャ」が実装されている国、日本 保育所不足と言えば2016年の「保育園落ちた日本死ね」騒動が記憶に新しいのではないだろうか。言葉のチョイスが若干ロックすぎて賛否両論を引き起こしてしまったが、そんなオブラートに包まなさすぎな文章だったからこそ切実さが伝わり、大きな話題になったとも言える。

もし私みたいなのに書かせたら、「日本おタヒりになられた方がよろしいのではないかと思わなくもないような気がする」等のフニャフニャ文章になって、何にも伝わらなかっただろう。

今までのコラムでも再三言ってきたが、日本は深刻な少子高齢化により、年金問題や労働力不足などの問題を抱えている。それを打開するために、国はまず少子化の改善をめざしており、そして働ける奴は老いも若きも全員働いてくれと言っているのだ。

しかし「保育所不足」というのは、その両方を頓挫させる話である。

まず、子どもを産んだは良いが預けられる保育所が見つかるかどうかわからないという「保育所ガチャ」が実装されていて、それに挑むのが常識になっているのがすごい。いきなりギャンブルである。この時点で、慎重な人は「やめておこう」となってもおかしくない。

それを押して「大博打の始まりじゃあ!」と「真田丸」の草刈正雄並の気合いで子どもを産み、「保育所落ちた、頼る実家などもない、困った」という状況になると、「なぜそうなる可能性があるとわかっていたのに、ちゃんと準備をせず子どもを産んだのか、自己責任だ」と、少子化に直接的貢献をした人に対し、まるで貧乏人が無計画にぜいたく品を買ったかのような責め方をするのがこの国である。これは「半分、青い」級の「死んでくれ」が出てもおかしくない。

「子どもを持つと生きづらくなる国」というイメージ

少子化の一番の原因は、価値観と選択肢が多様化したためであろう。よって、どう頑張っても「大人になったら結婚して子供を産むこと」が当たり前だった時代まで出生率が戻ることはないだろうが、それとは別に、上記のような「この国で子どもを作ったらひでえ目に遭う」というイメージがあるのも問題な気がする。

日本というのは、保育所はないわ、ベビーカーは舌打ちされるわ、育休取ろうとしたら机に花置かれるわ、妊婦が外に出ようものなら、腹にローリングソバットを食らう国なのだ。

もちろんこれは、私がインターネットの中でも地獄中の地獄であるツイッターに一日64時間張り付いているが故の偏見なのだが、こういった「子どもを持つと生きづらくなる国」というイメージが日本にあるのは確かなのである。

イメージ、というのは大事だ。世の中、「絶対子ども作る勢」と「作らない勢」だけではできていない。「どっちでもいい勢」からすれば、「良さそうな方」を取りたいものだ。

そこに「子どもを持つとこんな嫌なことがありますよ」と地獄のモデルケースばかりを見せられたら、「やめておこう」となってしまうだろう。今の日本は子どもを持つことによる良い例より、悪い例の方が目立っているのだ。

そんな地獄例の一つが、冒頭の「保育所不足問題」である。何故そんなに子どもを保育所に預けて働きたいか、というと理由はさまざまにあるだろうが、多くが「生活のため」。つまり、保育所が見つからない=働けない=貧困という、凄まじくわかりやすい地獄が展開されてしまうのだ。

「やってられるか」と言わせてしまう保育士の現状

先述の通り、「少子化解消と労働力の確保」に対しこの「保育所不足」は相反しすぎなため、国も保育所不足解消には乗り出しているようだ。施設自体の不足も原因のひとつだが、「保育士の不足」が大きな問題になっているという。

だが保育士の資格を持っている人が少ないのか、というとそうではなく、資格は持っているが保育士の仕事をしていない「潜在保育士」が76万人もいるという。

何故、資格を持っていながら保育士をやっていないか、というと理由は諸般あるだろうが、「やってられるか」となってしまった人が多いのでは、と目されている。

何故なら、保育士という仕事は、アレルギー、発達の遅れ、身体・精神障害など広範な医療的ケア、長時間保育など、昔よりも求められることが格段に増えているのである。しかし、給料は変わらない。つまり「給料が安くてきつい仕事」になっているのだ。そのため、一度保育士になっても、その割の合わなさから保育士業界から離れてしまう人が多いのではと言われている。

単純に、保育士にその業務に見合った給料を支払えば、状況は改善するだろう。だが、これから子どもの数は確実に減ると言われているのだ。保育所の運営自体、景気が良い状態とは言いがたいだろう。少なくとも、個々の園の力で保育士の待遇を改善する、というのは不可能な気がする。何にせよ「保育所不足問題」は、国の施策なしでは解決しない問題だ。

ともかく、生まれた瞬間、一世一代の大博打が始まったり、「運よく近くに面倒を見てくれる親がいる」などの“選ばれし者”にしか余裕を持って育てられないというイメージが日本にあるうちは、少子化改善は難しいだろう。

あの地獄のツイッターさんで、連日「まだ子供持つのが大変とか言ってるの?」などという煽りが見られる国にならなければいけない。