6月14日に閣議決定された「男女共同参画白書」で、デート経験なしと回答した20代男性がおよそ4割にのぼったというデータが注目されていた。
それとは全然関係ない話だが、1年ほど前、イギリスのヘンリー王子が新たに就いた役職が「Chief Impact Officer」略して「CHIMPO」であることが話題になった。
話題にしていたのはもちろん我が国日本だが、イギリス、少なくともヘンリー王子からしたら「そんなことで盛り上がってんじゃねえ」の一言だろう。
それと同じように、「20代男性の4割がデート未経験」も20代男性からすれば「そんなこと話題にしてんじゃねえ」だろう。
そういえば「デート」の定義ってなんだろう
そもそも、この調査から何が割り出せるのだろうか。
少子高齢化問題や家族の問題を解決するにあたり、現代の若者の恋愛や結婚に対する意識や動向を調査するというのはわかる。
しかし、「性交経験」や「交際経験」が割とはっきり答えられるのに対し、「デート経験」と言うのはあまりに曖昧である。
確かに、交際に関してもこっちは相手のことを彼女と思っていたが、彼女は俺を「ペイペイ」と呼んでいた、など若干の認識の差は起こる。
しかし、さすがに性交は「どちらとも言えない」というケースは稀だろう。
確かに我々オタクは推しカプが同じコマにいるだけで「これはもはや性行為なのでは?」と言い出したりはするが、三次元に限って言えば性交の定義は割と明確である。
それに対し「デート」とは何なのか。交際しているカップルが出かければ確実にデートだろうが、交際していなくてもデートは成立するものである。
では二人で外出すればデートかというと、当然友人同士で出かけることぐらいあるだろう。
結局明確な線引きがないため本人が「俺の中であれはデート」とジャッジすれば、それはもうデートということになってしまう。
そうなると、抱き枕やぬいとの外出も「デート」として立ち上がってきてしまい、ますます調査の精度が鈍ってくる。
おそらく「デート未経験4割」という数字も、デートの定義が曖昧すぎるせいなのではないか。
デートの後に交際、または2時間ほどのご休憩などに発展すればそれはデートと言っても良いだろう。だが、全てのデートがそのような成果をあげられるわけではない。
別れ際におでこキッスとかしていれば交際に発展していなくてもあれはデートだったと思えるかもしれないが、中には「本当に買い物や飯だけ食って19時解散、その後特に何もない」みたいな外出もあり、それをデートに入れるかは意見が分かれるところである。
そして、恋愛経験が乏しい人間ほど「俺はデートと思っているが相手がそう思っていなかったらキツい」という謎の防衛本能が働き、「首を刎ねられるぐらいなら武士の誉を守るため切腹する」という大和魂により「デートしたことありません」という潔い回答をしてしまったりするのだ。
これは友達が少ない人間に「友達何人?」と聞いた時も同様であり、「こっちは友達と思っているが向こうは違うかもしれない」という恐れから、頭の上に輪っかを作って「ゼロです!」と威勢よく言ってしまい、かえって友人から「俺のこと友達と思ってないんだ」と誤解されてしまうのだ。
そのような自分に自信がない慎重派が「経験なし」と答えた結果、「4割」という数字になってしまった可能性はある。
実際SNSでも「今度は若者のデート離れかよ」という冷めた意見に加え、「そもそもデートとは」と、デートの定義に対する意見も多かったようだ。
リモート化で捗ること、捗らないこと
ちなみに調査では「対面」をデートの条件にしているため、リモートデートは数に入らないようだ。
もしかしたら、コロナの影響による交際形態の変化も調査したかったのかもしれない。
デジタル化によってリモートワークが急速に広まり、担当との打ち合わせを筆頭に「これ対面でやる必要あるのか」と思われていた業務が「マジで必要なかった」ことが証明された。
外出して対面で何かやろうと思ったら、まず「服を着る」という最難関が立ちはだかってくるし、移動などのタイムロスも大きい。なんでもリモート化できるものはリモート化した方が合理的である。
しかし「デート」までリモート化されるのは、国として若干悩ましいところである。
何故ならリモートデートでは真の意味での濃厚接触が行われず、何かの勢いや手違いで少子化問題解決の第一歩が踏み出される可能性が0になってしまうからだ。
リモート特需によりさまざまなものがリモート化されたが、私の知る限り「リモート繁殖行為」はまだ開発されてないはずである。
今後、万が一「若者の間で空前の恋愛結婚ブーム」が訪れても、「リモートデート」や「リモート結婚」では、そこから新しい生命的なものが生まれることは基本的にない。
しかし、それも新しい付き合い方であり、世界的に推し進められている「多様化」の一環である以上、否定することはできない。こうなったらリモート繁殖行為の実現も視野に入れて検討を重ね、情勢を注視するしかないのかもしれない。