「日本人の部屋に置いてあるティッシュは事後処理のためではなく、ティッシュ自体がオカズなのだ」というジョークがあるほど、日本は紙フェチ国家として有名であった。

さすがにこのままではいかん、外国に笑われるのは事務所に置いてあるファッ○スだけで十分だ、ということで日本も急速にペーパレス化、特に「キャッシュレス化」には国も相当力を入れている。

すっかり身近になった電子決済のメリット

私も最近現金を使うことが稀になってきたが、確かに電子決済は便利である。まず、パンパンの小銭入れからひねり出した20円がよく見たら5円玉2枚だった時起こる変な間がなくて良い。ちなみに、真っ当な人間の小銭入れには、5円玉や50円玉が2枚以上存在することはないという噂を聞いたが、さすがにこれは都市伝説だと思う。

ただでさえ、プラスチックに純一郎を殺されたでお馴染みの環境大臣によるレジ袋廃止で、レジ前がもたつき気味なのだから、さらに支払いでもたついていては、ローソソマッドマックス支店だったら暴動が起こっている。

また、電子なら何らか使用履歴が残るのも良い。このおかげで、今まで知らない内に消えていた金が「俺だったのかい…いつも金を消していたのは…」ということが判明した、つまり自分を射殺すれば全部解決である。

また、チャージ方法をクレカにしておけば、今は存在しない金を未来から召喚できる点も便利である。ただし、この召喚術の触媒は「将来」時には「内臓」だったりするので、使い方によっては全く便利ではなくなる。

給与は振り込み?それとも〇〇pay?の時代が近づく

このように、使い方さえ間違えなければ便利な電子決済であり、ついに給与までデジタル化しようという案が出始めている。

現在、ほとんどの企業が給与支払いには銀行振り込みを使用していると思う。もし、うちは未だに現金手渡し、もしくは白菜による現物支給という場合、その会社はかなりろくでもないことになっていると思うので、早めにハローワークもしくは労基に行った方がいい。

しかし、給料は全額白菜にブッ込むという人からすれば、最初から白菜で貰った方が手間はないし、会社支給の白菜の方がデカかったら、逆に得するまである。

それと同じように、どうせ給与をpay系などのスマホ決済に入れて使うなら、最初からpayで支払ってしまえというのが「デジタル給与」である。

確かに結局payに入金するなら同じことであり、現金よりもそちらで支払った方がポイントなどがついて得である。

だが世の中には、まだ現金でしか支払えない物もある。町内会費の集金に「pay対応してないんすか?」などと言ったら、集落の厄介者度が一層上がってしまう。

私などは、原稿料を全額アイチューソカードで支払ってもらえれば「もうこれはガチャ以外にしか使えない金だ」と覚悟が決まって逆に良いのだが、全額payで支払われたら現金がいる時困るし、家賃などのライフラインの支払いを銀行引き落としにしている人も多いだろう。また万が一、payを運営する会社がつぶれても困る。

よってデジタル給与は「支払い当日に現金自動預払機(ATM)などから1円単位で現金化できるようにする」「アプリ運営会社が経営破綻した場合は、保証機関などが支払いを肩代わりし、数日以内に受け取れるようにする」ことを条件とするそうだ。

つまりpayで支払われた給与を現金化することも可能であり、アプリ会社がつぶれても保証はされるということだ。それでは、payから家賃などを払うために銀行口座に振り分けたりする必要が出て、結局金の反復横飛びのスタート地点が変わっただけ、と感じるかもしれない。

ただ、日本には現在外国人労働者が増えてきている。彼らは日本で銀行口座を作るのに手間がかかる場合があるため、それより手軽に利用できる電子決済アプリによる給与支払いが提言されるようになったということだ。

また、給与支払いの手数料は原則会社持ちなため、企業によっては手数料を減らすため「うちの賃金を受け取りたければここの銀行で口座を作れ」と指定してくるところもある。

それらの手間や経費がデジタル給与にすることにより削減され、経費の立替精算も、給料日を待たずに電子ですぐに受け取れるようになるかもしれない、とも言われている。

一見便利な「使い分け」にひそむ落とし穴

  • 銀行口座やpayなど、細々と使い分けて管理するのはなかなか大変です

    銀行口座やpayなど、細々と使い分けて管理するのはなかなか大変です

話は変わるが、現在政府は国民に対し「ジジョれ、カス」という要請を出している。

もはや国ではお前らの老後は保証できないので、自分で老後資金を貯めておけということだ。よって、現在「副業」が推奨されており、名だたる大企業でも副業を許可するところが増えてきている。

給与をもらう先が一か所で、それを全額電子でもらったら振り分けが面倒なだけだが、もし収入源がいくつかあれば、ここの給与は銀行振り込み、ここはpay、ここは白菜など、用途によって最初から振り分けることもできる。

一見便利そうだが、便利なツールには「ボンクラが使うと余計混乱を起こす」という特徴がある。

ところで、私は現在、銀行口座を6個ぐらい持っている。何故そうなったか、というと仕事やプライベートなど、まさに用途ごとに分けようと思ったからだ。

しかも最初は分けていたが、今は「とりあえず金がある口座から支払っている」という闇鍋状態であり、どこからどの支払いをしているかなど全く決まっていない。

自分はまだいいが、私がもし急死したら、遺族はとても困ると思う。もし給与がデジタル化したら余計「遺産相続が難解になる」ことが予想される。実際、pay系や株取引などの「デジタル遺品」は、遺族が把握しづらいことからすでに問題となっている。

古いツールにこだわるのも害だが、「使いこなせないのに使おうとする」のもそれ以上の害になり得るのだ。