なんかの間違いでオバマ(元米大統領)が俺の本を褒めてくれないだろうか。

何故オバマかというと、世界一ツイッターのフォロワーが多く、日本の人口ぐらいいるらしい。

しかし、オバマがつぶやくとしたらおそらく英語だろうから日本人への訴求力は低いし、そのツイートを読んでも、自分のことなのに「curry-zawa」以外は読めないと思う。

ならば(前澤)友作でもいい。「友作に褒められる」というのはまた別の問題を引き起こしそうな気もするが、私と自著の名前が多くの人間の目に触れることだけは確かである。

このように、発言が大きな影響力を持つ人のことを「インフルエンサー」と呼ぶ。そして、最近はインフルエンサーを自社製品のPRに起用する企業が増えてきている。

テレビCMだって、山村正蔵広報部長(42)がバーカウンターから「ウィスキーは好きかね?」と尋ねてくるより、美人女優に同じことをやらせたほうが消費者は買う気になるので、高い契約料を払って依頼しているのだ。

商品は品質も大事だが、「誰がそれを勧めているか」も重要なのである。

昔はインフルエンサーと言えば芸能人であったが、最近はユーチューバーやブロガー、SNSでフォロワーが多い人など、インフルエンサーの枠は一般人にまで広がっており、企業も影響力があればプロアマ問わずPRを依頼する時代になってきている。

繰り返すSNS炎上、なくならない「ステマ」

そして企業PRと言えば「炎上」がつきものである。

企業広告の炎上と言えば、差別的表現があったり、消費者と感覚があまりにも違い過ぎたり、ポスターのJKが全裸に服の絵を描いているようにしか見えなかったりと、「企業の広告として不適切な内容」だった場合に起こる。

そしてもう一つ、大きな炎上につながりやすいのが「ステマ」である。ステマとは「ステルスマーケティング」の略だ。

私も、自分の本が発売されるたびに「これからどんどんステマしていきますんで、読者のみなさんもステマの方よろしくお願いします!」と、「バカ」ということ以外は何も宣伝していないつぶやきをしてしまうのだが、もちろんステマと言ってしまっている時点でステマではない。ステマとは、「宣伝である」ということを隠して特定の商品を勧めることである。

つまり、私が「この本の作者ですが、買ってもらえないと餓死するので買ってください」というのはただの宣伝、もしくは命乞いだが、第三者を装い「この漫画マジで面白いから読んでみ?」と言うのはステマだ。

また、企業から依頼されたPRであることを隠して「このファンデ、たまたま買ったんだけど神すぎる!」と、あたかも一消費者として商品を推しているように見せるのもステマといえる。

もし親戚の子どもに最近習い始めたというダンスを見せられたら、どんなに「痙攣(けいれん)」にしか見えなくても「エグザイル系列のどれかに入れる」と言ってしまうだろう。ステマの何が悪いかというと、先の例のように、関係者だったり、金を貰っていたりしたら、その商品を公平に評価出来ているとは言えないからである。

公平でない評価をあたかも公平であるかのように流布するのは、消費者をあざむく行為であり、業界全体の信頼性を欠くことになる。ゆえにステマ行為はやってはいけないこととされ、悪質だと景表法に引っかかる恐れもある。

化粧品会社がSNSで炎上、インフルエンサーが「燃えた」背景

  • 化粧品のように人気のジャンルは専門のインフルエンサーに頼むことが多く、今回の炎上もその延長線上にありました

    化粧品のように人気のジャンルは専門のインフルエンサーに頼むことが多く、今回の炎上もその延長線上にありました

先日、化粧品会社「オルビス」の社員が、個人のツイッターアカウントで社員であることを明かさずに、自社の製品を紹介。のちにオルビス社員であることが発覚して炎上したそうだ。オルビスは社員に対するSNS指導が甘かったということは認めつつも、その社員にステマの指示はしていないと釈明している。

当該社員はオルビスに入社する前からその美容情報アカウントを運営しており、フォロワーも38,000人と、美容界ではインフルエンサーと言ってもいい存在であった。ゆえに「元々インフルエンサーということを知っていて採用したのでは」という疑惑も上がっているようである。

若者がテレビから離れ、YouTubeやSNSから情報を得るようになった今、その界隈のインフルエンサーを使わないという手はない。だが、やり方を間違うと企業はもちろん、インフルエンサー個人もダメージを負いかねない。

日本人は基本的に「金の臭い」を嫌うので、一銭の得にもならないのに時間と労力をかけて俺たちを楽しませてくれる愛すべきバカが、その人気に目をつけた企業と組んでPRを始めた途端に「結局金かよ」と、ホットハンドターンを見せることはよくある。

インフルエンサーには企業PRの依頼が来るだけではなく、自社の商品を推して欲しい企業からサンプルなどがタダで送られてくることもあるため、それに対するやっかみも、インフルエンサーの企業PRに対する目を厳しくさせているともいえる。

さらに言うと、企業PRというのはどうしても「無難」にならざるを得ない。股間を大麻に似た植物で隠していることで人気のユーチューバーも、企業PRになると「もみじで隠してください」と指示されるなど、そっちの方が違う事故が起きそうな気もするが、どうしても企業側の意向に従わざるを得なくなってしまう。

そうなると、「おもしろくなくなった」とファンが離れてしまうケースもある。

また、それがやってはいけない行為と知らずに「ステマ」に加担してしまうこともある。企業から「わが社から依頼があったということは書かずに宣伝してください」と言われ、そんなもんかと思って言われた通りにしたら炎上し、「ステマに加担した奴」として一緒に荼毘にふされてしまう場合もある。

有名企業からPR依頼があると、色めき立ってしまい、つい条件もろくに読まずにOKしてしまいがちになる。だが、企業だって、自分で広報するよりインフルエンサーの方が影響力は上と判断して依頼しているのだ。

数万の単発PR料より、長い間かけて得た数万のフォロワーの方がずっと価値がある。そのことを理解してPR依頼は選んだ方がいい。