連載「Google Earthで世界を巡る」、せっかくスタートしたというのに、諸事情によりなかなか第2回をお送りできず申し訳ございませんでした。本日復活しますので、またよろしくお願いいたします。前回はアルハンブラ宮殿を訪問しました。第2回は、まずグラナダ(Granada)の街歩きから始めます。
グラナダのあるアンダルシア州は、スペインの最南部に位置しています。アンダルシアと聞くとどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。ブルーハーツの真島昌利のソロデビュー曲、それをカバーした近藤真彦の曲……を思い出す人もいますよね、きっと、中には。私はというと、アンダルシアといえばとにかく“強い陽射し”というイメージでしたね。アンダルシア州はセビリア、コルドバ、マラガといった8つの県で構成されているのですが、そのひとつであるグラナダ県の県都がグラナダです。アンダルシア州の南は、狭いジブラルタル海峡をはさんで、もうそこはアフリカ大陸です。
今回、グラナダで宿をとったのは、ナバス(Navas)通りという小さな路地でした。前回も書きましたが、スペイン語ではBとVの区別が事実上ないに等しいため、ナヴァスではなくナバスと表記するほうが適当でしょう。
ここはバルやレストラン、小さめのホテルなどがたくさん集まっていて、夜も遅くまで賑やかなところです。日本人観光客もこの通り沿いに宿をとる人が多く、安心して泊まり、食べ、飲むことができる通りだといえるでしょう。下で紹介する大聖堂が近く、アルハンブラ宮殿へのアクセスにも便利なので、拠点としておすすめの地域です。
ナバス通りを端まで歩くとグラナダ市庁舎の姿が目に飛び込んできます。市庁舎の前の広場を突っ切って向こう側の路地に入ると、木々に囲まれた大きな広場に出ます。
このビブランブラ広場の周辺には多くのレストランやカフェ、お花屋さん、土産物屋などが並んでいて、朝から夜まで楽しむことができます。ビブランブラ広場からさらに細い道を入って行くと、大聖堂(カテドラル)の威容が迫ってきます。
市庁舎前の広場から大きな道を渡ってふたたび路地に入る。少し歩くとまた広場が見えてきた。手前の角にはその名も「Alhambra」というカフェがあり、ここのチョコラテ・コン・チュロス(チュロスを濃いチョコレートに浸して食べるスペインの名物)がなかなか美味しかった |
グラナダ=アルハンブラ宮殿と思っている人も多いでしょうが、この大聖堂も観光スポットとしてははずせません。グラナダの街中のシンボル的建築物です。多彩なショップが並ぶ表通り、グラン・ビア・デ・コロン通りからも路地を入らねばならず、ちょっと目立たないところにあります。
この大聖堂は、16世紀、当初はゴシック様式で建設が始まりましたが、のちにルネサンス様式となりました。賑やかな表通りから少し引っ込んだところにあるため、外見はやや謙虚というかおとなしげに感じますが、中に入るとその壮麗ぶりは感動もの。堂内は白亜で統一されています。
隣にある王室礼拝堂には、「カトリック両王」と呼ばれるアラゴン王フェルディナンド2世とカスティーリャ女王イサベル1世の棺が納められています。1469年、二人の王の結婚によってスペインは統一され、スペイン王国が成立しました。
前回も説明しましたが、スペインを含むイベリア半島は8世紀の初めからイスラム勢力に支配されていました。この支配に対抗し、キリスト教の国々による「レコンキスタ」(再征服活動)が繰り広げられたのです。最終的には、カトリック両王によるスペイン王国の成立から23年、1492年にイスラム勢力の最後の砦であるここグラナダが陥落して、イベリア半島はキリスト教徒たちの手に戻ったのです。
つまりグラナダは、その歴史の証人ともいえる街なのです。 大聖堂はレコンキスタが完了した後の16世紀に、それまでモスクがあった土地に建てられたものでした。キリスト教徒たちにしてみれば、イスラム支配を覆した記念碑的意味合いが、この大聖堂の建築には込められていたのかもしれないですね。
余談ですが、世界各地の教会を見ているとさまざまな建築様式の名前が登場します。グラナダ大聖堂のゴシック様式やルネサンス様式もそうですし、ほかにもロマネスク様式、バロック様式などがあります。よく登場するこの4つの様式についてごく大ざっぱに説明しておきましょう(実際には地域により違いがある場合もあります)。古い順に並べると、ロマネスク(10~12世紀頃)→ゴシック(12~15世紀頃)→ルネサンス(15~16世紀頃)→バロック(17~18世紀頃)となります。それぞれの特徴を簡潔に表すと、「ロマネスク=重厚でやや暗い雰囲気」「ゴシック=高い尖塔とステンドグラス」「ルネサンス=壮麗でバランスがよい」「バロック=派手で複雑」となるでしょうか。もちろん異なった性質を持つものもありますが、大きく分けるとこのように言っていいかと思います。
さて、グラナダはスペイン南部の端っこのほうにある街です。グラナダ観光はセビリアやコルドバ、ウベダやバエサといった周辺のアンダルシアの世界遺産の街や、シェリーで有名なヘレスなどと組み合わせるのがおすすめですが、実は今回は先にそれらの街々を訪れてからグラナダにやってきました。
そこで、グラナダからスペインの別の地域へ移動しようと考えたわけですが、ありがたいことにこのスペイン南端に近いグラナダから、北端のフランス国境に近いバルセロナまで、レンフェ(Renfe、スペイン国鉄)の寝台列車が出ています。これに乗ってみましょうか。
この列車には、Gran Clase(特等寝台)、Preferente(1等寝台)、Turista(2等寝台)などがあります。特等のGran Claseはシャワー・トイレ付きの個室で、豪華な夕食と朝食も付いています。今回はちょっと贅沢して、このGran Claseで移動することにしてみました。ちなみにこの列車、料金は日によってかなりの幅で変わります。1日違うだけでガラッと変わったりするので、あまり無責任なことは書けません。参考までに、私のときはGran Claseが1人1万7000円程度でした。気になる方はRenfeのウェブサイトをチェックしてみてください。
グラナダの中心街から少し離れたグラナダ駅にタクシーで乗り付け、22時15分発の寝台列車に乗り込みます。列車が定刻通り動き出してしばらくすると、食堂車でのディナー。フランス料理のミニコースで、メインは肉類・魚類からチョイスできます。Gran Claseはこの食事だけでなく、ワインなどドリンク類も料金に含まれているのです。私はメインにウサギ肉を注文し、まず白ワイン、続いて赤ワインで堪能しました。
列車は地中海沿岸を疾走。早朝5時頃にバレンシアを通りますが、まだ冬の季節なので外は真っ暗です。やがて地中海が赤く染まり、朝日が昇ってきました。朝日に照らされながら食堂車で朝食をとり、コーヒーでくつろぐと、しばらくして列車はバルセロナの街に入ります。グラナダを出て10時間45分、午前9時半に、バルセロナへ到着しました。次回はバルセロナ編をお送りします。