Google Earthがこの世に登場して、旅好き・地理好きには本当に素敵な時代になりましたね!Google Earthで奇妙な光景を探すのが以前かなり流行りましたが、一般的なツールとして浸透したいま、あらためてGoogle Earthで世界を旅してしまおうという企画です。世界遺産の観光地から話題の土地、歴史的にちょっとおもしろい場所、なんでもない裏通りまで、Google Earthと実際の写真を通じて巡ってみたいと思います。

第1回の今回は、勝手ながら今年訪れたスペインのグラナダ(Granada)から始めることにします。グラナダはスペイン南部アンダルシア州の街で、世界遺産でもあるアルハンブラ宮殿がよく知られていますね。スペインは誰もが知っているとおりイベリア半島の大部分を占めるヨーロッパの国ですが、歴史をひもとくと、実はイスラム教の影響を多大に受けた国でもあります。中世のヨーロッパの雰囲気を色濃く残す街並みに、アクセントとしてイスラムをベースとするさまざまな意匠が加えられ、南欧の強い陽射しと相まって独自の美しさを放っています。これがたまりません。

とりわけグラナダは、8世紀にイスラム教徒に占領され、13世紀からはナスル朝グラナダ王国の中心として栄えます。イベリア半島をイスラム教徒の手から奪回しようというキリスト教徒の戦い(レコンキスタ)によって15世紀末にナスル朝は滅亡しますが、いまでもグラナダには他のスペインの都市よりもさらに濃厚にイスラムの香りが残されています。

グラナダへのアクセスルートとしては、日本からの直行便はないので、マドリード(Madrid。スペイン語での発音は語尾のDをほとんど発音せず「マドリー」に近い)からの飛行機や鉄道というのがよく使われる方法です。ほかには、同じく世界遺産の街として知られるセビリア(Sevilla。スペイン語ではセビージャ、セビーリャといった発音が一般的。ちなみに英語ではSevilleと表記してセヴィルと発音します)やコルドバ(Cordoba。英語ではCordova)からバスや鉄道を利用する方法もあります。

参考までに、スペイン語ではBとVの発音のちがいが事実上ありません。だからSevillaのVも、日本風のBで発音してしまって問題ないのです。V音がニガテな日本人にはありがたい言葉ですね。隣国の同じラテン系言語であるフランス語、イタリア語、ポルトガル語ではBとVをきっちり区別するので、なぜスペイン語だけこうなったのかを調べてみるのもおもしろいかもしれません(私はそこまでは知りませんが)。

私は2012年の2月、コルドバからバスでアプローチしました。コルドバもイスラム教の影響が濃く、イスラム教のモスクがキリスト教会に転用されたメスキータという建物は息を呑む美しさなのですが、それはまた機会があったら、ということで……。ともあれそのコルドバから、アンダルシアの壮大な景色の中を2時間半ほど走るとグラナダのバスターミナルに到着します。グラナダといえば、なんといってもアルハンブラ宮殿でしょう。名前を聞くだけで名曲「アルハンブラの想い出」が頭の中に流れてきます。このアルハンブラ(Alhambra)も、Hを発音しないスペイン語では「アランブラ」と読みます。

まずはグラナダの街の全体像から。Google Earthの画像を見てもわかるように山がそばまで迫っている。「スペイン グラナダ」と表記されている場所の右側にあるV字形の部分がアルハンブラ宮殿だ

さすがに世界的な観光地で、いつ行っても多くの観光客が詰めかけています。実際にいらっしゃるときは、あらかじめネットなどで入場券を購入しておくとスムーズに入場できるので、オススメです。なお、後述しますがアルハンブラ宮殿の建造物の中でも「ライオンの中庭」があることで人気があるナスル宮は、予約がないと入れません。当日券がある場合もあるようですが、予約がベターでしょう。グラナダ市内からアルハンブラ宮殿まではバスで簡単にアクセスできます。ただ、歩いて行くことも可能な距離なので(20~30分ほどでしょうか)、それも一興かもしれませんね。

アルハンブラ宮殿の世界遺産登録名は「グラナダのアルハンブラ宮殿とヘネラリーフェ離宮、アルバイシン地区」です。このうちアルハンブラ宮殿とヘネラリーフェ離宮はちょうどV字を描くように、狭い谷を挟んだ丘の上に広がっています。つまり高台にあるので、入場ゲートを入って少し歩くと、やはり世界遺産に登録されているアルバイシン地区をはじめ、グラナダの街並みを見晴らすことができます。アルハンブラの建物を前景にしたこの光景を眺めるためだけにここへ来てもいい……というのは言いすぎですが、それほど素晴らしい景色なのです。

アルハンブラ宮殿・ヘネラリーフェ離宮をアップ。右上がヘネラリーフェ離宮、左がナスル宮やカルロス5世宮殿などが並ぶアルハンブラ宮殿のメインエリアだ。V字形の丘の上に広がっているのがわかるだろう

先ほど、ナスル宮へ入るには予約が必要だと書きました。これは予約の時点で集合時間が定められますので、その時間までは他の建物を見学して回りましょう。きっちりと見ると、ナスル宮以外の建物だけでも数時間はかかります。急ぎ足で回るなら1時間かそこらでも可能なのですが、せっかくならゆっくりしたいですよね。素晴らしい眺めを前にひたすらボーッと過ごす時間も織り込んでおいたほうがいいと思います。

ナスル宮以外の建物で特筆すべきなのは、世界遺産登録名にも入っているヘネラリーフェ離宮でしょう。アルハンブラ宮殿の名があまりに知られていてかすんで聞こえるかもしれませんが、このヘネラリーフェ離宮も立派な建造物です。ヘネラリーフェ離宮のほうが好きだという人もいるくらいです。ナスル宮の予約を午後に入れたなら午前、午前に入れたなら午後は、ヘネラリーフェ離宮をゆっくりと楽しみたいものです。

アルハンブラの建造物群は、写真や映像で見たことがあるという人が多いでしょう。Google Earthでは、普段見慣れた姿ではなく、空から見下ろすビューを楽しめるのがポイントですね。とくに歴史的な建造物の場合、すぐそばから、あるいは中から見るのとはまたひと味ちがった眺めから、新たな魅力を発見することもできます。

アルハンブラ宮殿の入場ゲート。ここを入ると道は左右に分かれる。右に進めばヘネラリーフェ離宮、左に進めばナスル宮やカルロス5世宮殿へとつながる

入場ゲートを入って右側の道を取ると、この庭園のエリアを経てヘネラリーフェ離宮に至る

この辺りから見たアルバイシン地区の眺めもなかなか素晴らしい

ヘネラリーフェ離宮をGoogle Earthでチェック

世界遺産登録名にも含まれているだけあって、建物はもちろん、噴水のある中庭もとても美しい

中央にデンと構える円形の穴が開いた建物はカルロス5世宮殿。その真上から右上にかけて広がっているのがアルハンブラ宮殿観光の目玉・ナスル宮だ。

カルロス5世宮殿は華やかな外観と

円形の空間が印象的

カルロス5世宮殿(中央)とナスル宮(右上)、アルカサバと呼ばれる砦の跡(左上)は3D画像でも眺めることができる。

ナスル宮はイスラムの影響を色濃く受けた建造物と数々の庭が実に美しい。観光ポイントに満ちているが、とりわけ知られるのがライオンの中庭。筆者が訪れた2012年2月時点では修復中だった

アルカサバはアルハンブラ宮殿の端っこ、丘の突端に位置している。ここから見るグラナダ市街とその周辺の眺めにはため息が出る。その写真は次回にお載せする予定

アルハンブラ宮殿やヘネラリーフェ離宮の観光を終えたら、次はアルバイシン地区を訪れてみましょう。ここは古くからのイスラム教徒居住区として知られ、その街並みが世界遺産に登録されています。入り組んだ細い道の両側に建ち並ぶ白い家々が旅情をかき立ててくれることでしょう。やや治安がよくないという話もありますが、明るい時間ならさほど問題はないと思います。ここもバスが出ているので、それを利用するのもいいかもしれません。

アルバイシン地区も世界遺産に含まれている。狭い道を覆うようにイスラム風の白壁の家々が並ぶ町中は、そぞろ歩きが楽しい

写真はナスル宮から見たアルバイシン地区。Google Earthの画像と見比べてほしい

図10 ストリートビューでアルバイシン地区を歩いてみたところ。残念ながらあまり細かな道についてはストリートビューが用意されていない

もし夕暮れ時にアルバイシンへ行くなら、ぜひともサン・ニコラス展望台へ登ってみてください。ここから見る、夕陽に映えるアルハンブラ宮殿の姿は、まさにこの世の絶品です。ただし帰りは暗くなるので、タクシーなど何らかの交通機関を利用するほうが安全でしょう。

次回はグラナダの街中散策から始めて、寝台列車でバルセロナまで向かいます!