前回と同様、今回もIT大国のインドを取り上げます。

先日、2024年にインドが中国を抜いて世界で人口が最も多い国になるというニュースが報じられました。しかし、インドのすごいところは人口ではなく、その技術力の高さです。インドのバンガロールには世界トップクラスのIT企業が開発拠点を置いています。拠点といってもオフショア向けではなく、自社製品やサービスの開発拠点として、各社数千人規模で優秀な技術者を雇用しています。

インドでIT企業を経営しているセラパン・センティル氏 写真:吉政忠志

今回は、日本で外国人エンジニア派遣に力を入れているヒューマンリソシアの協力を得て、インドのIT事情に精通しているセラパン・センティル氏と日本で働くインド人エンジニアのNivi氏を紹介します。

センティル氏は、1998年にインドのIT企業のプログラマーとして勤務を開始し、社内商品の開発とオフショアを担当。その後、2005年4月に和歌山YMCAで約1年間日本語の学び、大阪のIT企業でプログラマーとして勤務し、さらにインドのIT企業の大阪支店長を務めた後、2015年3月にインドで友人とIJ Corporate Solutionsという企業を設立しました。

--インドではプログラマーが人気の職業と聞きましたが、実際はどうですか?--

センティル氏: プログラマーの仕事は人気があります。インドは人口が多くても、就職率は低いためIT業界を目指す人が多いです。ご存じのとおり、インドにはカーストという身分制度がありますが、IT業界ではカースト制度に関係なく就職できますし、給与も高いです。

ITプログラマーとして就職できれば、新卒から平均給与の2倍の給与で働くことができます。さらに経験を積めば、平均給与の3倍の給与を得ることも可能なのです。

--調査データによると、インドの土木技術者や機械エンジニアの年収は60万円程度である一方、シニアプログラマーの平均年収は120万円だそうですね。そこから経験を積み、プロジェクトマネージャーになると平均年収が220万円ほどになり、さらにソフトウェアパッケージのシニア開発エンジニアになると、年収1000万円を超える方もいるそうですね--

センティル氏: はい、そうなんです。プログラマーは一般の仕事よりも給与は高いし海外勤務のチャンスもあります。ちなみに今、インドで人気の開発言語はJava, .NET, C, C++です。これらはお客さまから指定があることも多いです。また、汎用的に開発ができるのも魅力です。

ただ、最近は受託開発を行うエンジニア職だけではなく、自身でオンラインでの販売サイトや、iOSやアンドロイドアプリケーション、ゲームソフトを開発して起業する人も増えてきました。

--プログラマーは生活を向上させる手段でもあり、起業する手段としても確立されてきている感じですね--

次は、Nivi氏を紹介します。Nivi氏は南インド地方の大学でコンピューター工学を学んだ才女です。学校を卒業後、2016年から2017年にかけて、大手米IT関連企業のインド現地法人でSQL Serverデータベースアドミニストレータとして勤め、サーバとデータベース・セキュリティ管理、ユーザ管理を担当していました。その後、ヒューマンリソシアに入社してITエンジニアとして職務についています。現在は、事前調査、設計、プログラミングまでを担当しています。

--日本に行こうと思った理由、日本で働くことになった経緯を教えてください--

Nivi氏: 日本は技術的に発展している国なので、日本で働いて技術と日本のにぎやかな生活を経験したいと思いました。もちろん、仕事の文化は難しいですが、その素晴らしさも経験したいと思いました。日本で暮らすという私の夢を叶えるために日本語の勉強を始めました。その後、日本のWebサイトで就職先を探し、ITプログラマーに応募し、Skypeで面談を受けて採用が決まりました。

--日本に憧れていただき光栄です。Niviさんの行動力に敬服します。次に、今の仕事について教えてください--

Nivi氏: 現在は、派遣先の企業の情報システム部でソフトウェアデベロッパー・プログラマーとして、次世代基幹システム対応型倉庫管理システムを開発しています。このシステムではASP.NET MVC C#、SQL、Python、JavaScript、jQuery、XMLなどを用いてWebシステムを開発しています。

--今の仕事を通じて学んだことは何ですか?--

Nivi氏: 職場で日本語を使っているので、日本語の能力が上達しました。また、技術もたくさん勉強しています。さらに、日本の仕事文化を学ぶとともに効率的な働き方を学んでいます。チームリーダーとチームメンバーの指導と応援のお陰で自信を持って頑張っています。

--充実した仕事をされていますね。ちなみに、日本でのオフはどのように過ごされていますか?--

Nivi氏: 休日も充実しています。土曜日の午前は、ボランティアの日本語生活クラスに通っており、午後は日本のドラマを見ます。日曜日は、プログラミングや日本語能力試験の勉強をします。そのほか、外に出掛けて自然を眺めながら散歩したり、日本の節句を体験したり、日本の伝統的な文化を探ったりします。

--素晴らしいですね。最後に今後の目標や夢について教えてください--

Nivi氏: 進歩をもたらすのは競争です。自身と競争すればするほど、前進すると信じております。目的は持つべきであり、それを達成することが夢です。私の夢は人類に役立つものを発明することです。技術があれば、何でもできます。技術を正しい方法で利用するには、正しい方法で学ぶ必要があります。そして、AIやIoTといった発展している技術の知識と経験を得たいので、それに向けて勉強しております。特にPythonは世界にあるすべてのプログラミング言語を支配する可能性があるため、勉強しています。あと、これからもずっと日本で働きたいので、日本語もネイティブのように話せるように頑張ります。

今回はインドの若者にインタビューをしました。情熱と行動力を感じる方でした。カースト制度の下では、プログラマーが将来を拓く1つの光明なのです。国が大きくなる時は、目的意識を持って行動し、自分を高めていく若者が多く輩出されるのかもしれません。日本にもこうした若者がいないとは言いませんが、いろいろと考えさせられました。皆さまは何か感じることはありましたでしょうか。

著者プロフィール

吉政忠志


業界を代表するトップベンチャー企業でマーケティング責任者を歴任。30代前半で同年代国内トップクラスの年収を獲得し、伝説的な給与所得者と呼ばれるようになる。現在は、吉政創成株式会社 代表取締役、プライム・ストラテジー株式会社 取締役、一般社団法人PHP技術者認定機構 代表理事、一般社団法人Rails技術者認定試験運営委員会、BOSS-CON JAPAN 理事長、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会 代表理事を兼任。