3月12日、13日に、対戦格闘ゲーム『ストリートファイターV』のeスポーツイベント「ストリートファイターV チャンピオンエディション ジャパンオープン2022(ジャパンオープン2022)」がオンラインで開催されました。
ジャパンオープン2022は、カプコンプロツアーと同様にプロ・アマ問わず、誰でも参加できるオープン大会。上位2名が2022年9月に中国・杭州で開催される第19回アジア競技大会の『ストリートファイターV』部門の日本代表内定選手として選出されます。
大会自体は優勝賞金100万円、準優勝賞金50万円、3位25万円が獲得できる単体のトーナメントとしての側面もあります。優勝し、日本代表としてアジア競技大会の出場権を獲得したのは、カワノ選手、準優勝はマゴ選手でした。
ファイナルからの参加でも死角なし。CPT優勝組が上位に
大会は、予選大会がBO3(2勝勝ち抜け)のダブルエリミネーション方式で、決勝大会がBO5(3勝勝ち抜け)のダブルエリミネーション方式。初日が予選大会で、4つのトーナメントから1人ずつ決勝大会進出者を決めます。
カプコンプロツアー(CPT)では1つのトーナメントでウイナーズ4名、ルーザーズ4名の合計8名のファイナリストを決め、決勝大会を行いますが、今大会は4つのトーナメントごとにウイナーズファイナル、ルーザーズファイナル、グランドファイナルまで行い、最後の1名になるまで争われます。
CPTは、同時にすべての試合が行われるので、参加人数の割には大会終了時間が短いのですが、今回は4つのトーナメントをすべて個別に開催したため、長丁場の大会となりました。その分、多くの注目選手の試合模様を配信できたので、大会の流れが見やすくなっていたように感じます。
初日の予選大会を勝ち抜いたのは、ときど選手、ふ~ど選手、りゅうせい選手、藤村選手の4名でした。
決勝大会は、予選を勝ち抜いた4名に加え、カプコンプロツアー2021の日本大会1~4で優勝したマゴ選手、ひぐち選手、ウメハラ選手、カワノ選手の4名が加わります。
予選大会の結果はリセットされ、すべての選手がウイナーズトーナメントからの参戦。つまり、今大会の予選の4つのトーナメントは、カプコンプロツアーと同じ扱いとして、決勝大会に臨むことになります。
「CPTの優勝者がいきなりファイナリストに名を連ねるのはちょっと優遇しすぎなのでは?」という意見もありますが、フィジカルスポーツの日本代表選手選考も1つの大会の結果のみを見るのではなく、一定期間で安定した成績を残した選手だったり、選考大会自体が複数あったり、さまざまです。
そういう意味では、カプコンプロツアー優勝者から1名、今回の大会から1名みたいな選考方法もあったはず。そう考えると、ファイナリストからのスタートとはいえ、その中から上位2名に入らないと代表内定選手になれないのは、フェアな選考とも言えます。
さらに今回は1位から8位まですべての順位を確定させるので、7位8位決定戦、5位6位決定戦も行われます。
決勝大会の1回戦目はカワノ選手、ウメハラ選手、マゴ選手のCPT優勝組の3人が勝ち抜け、ウイナーズファイナルはカワノ選手とウメハラ選手の対決に。これに勝利したカワノ選手が、ルーザーズから勝ち上がったマゴ選手を下し、優勝を果たしました。マゴ選手はカワノ選手に敗れたものの、2位となり、アジア競技大会の日本代表内定選手として日本オリンピック委員会(JOC)に推薦されます。
終わってみれば、3位まではCPT優勝組。前日に厳しいトーナメントを勝ち上がって身体が温まっているうえ、大会告知時点から出場が確定しているCPT優勝組の対策ができるトーナメント勝ち抜き組に対して、いきなり決勝大会から戦わなくてはならないCPT優勝組は不利な面もあると思われました。しかし、さすがに日々の鍛錬といくつもの大きな大会をこなしてきたトッププレイヤーに死角はなく、結果を残しています。
特に、優勝したカワノ選手は優勝インタビューでだいぶ前から大会の準備をしてきたと言っており、どんな相手、どんな状況でも勝ちきるだけのやり込みをみせていました。
もちろん、勝ち抜き組も万全の体勢で、ファイナリスト8名は誰が優勝してもおかしくない状態だったと言えます。
ついにメダル種目になったeスポーツ、コロナ禍で海外の成長は未知数
さて、今大会は、先述したとおり、アジア競技大会の代表選手選考会も兼ねているわけですが、アジア競技大会についても気になるところです。
前回大会の第18回ジャカルタ・パレンバンからeスポーツが、デモンストレーション競技ながら初めて競技として認められました。第19回アジア競技大会では、いよいよ正式競技としてメダルを争う種目となります。特に『ストリートファイターV』は前回大会で競技タイトルになっていなかっただけに、その注目度も高いでしょう。
ここ2年はコロナ禍により、多くの国際大会は中止を余儀なくされています。CPTも各地域に居住している人のみ参加ができるオンライン大会となり、カプコンカップは2年連続で中止になりました。
アジア競技大会は、eスポーツ単体のイベントではなく、東京オリンピックや北京オリンピックなどの国際スポーツイベントとしての立ち位置なので、それらの開催状況を見る限りでは、コロナ禍が継続していても無観客やバブル方式などの対策をしたうえで開催されると予測されます。
eスポーツは、国際大会に日本人選手があまり参加できなかった分、国内大会、国内リーグが盛り上がった1年でした。「ストリートファイターリーグ」や「トパンガチャンピオンシップ」など国内のリーグが活況となり、日本人選手同士の戦いが激化。互いが切磋琢磨した結果、実力はかなり上がっているとみられています。
ただ、国際大会で各国の猛者との対戦が行われていない状況においては、他国がどれだけ強くなっているのかわかりません。韓国にInfiltration選手、NL選手、台湾にGamerBee選手、OIL King選手、シンガポールにXian選手など、アジア各国には『ストリートファイターV』の強豪選手が多いので、アジア競技大会の結果は楽観視できないところでもあります。
それでも、日本の高い実力を示せる場に期待せずにはいられません。そして、その期待に、マゴ選手とカワノ選手は十分に応えてくれることでしょう。
日本代表を決めるイベントなので、もっとアピールしてほしいところ
アジア競技大会はアジアのオリンピックと言われており、アジア・オリンピック評議会が主催しています。先述した通り、日本代表内定選手はJOCより派遣されます。言わばフィジカルスポーツの選手と同じ扱いで参加するわけです。
その割には、今回のジャパンオープン2022が代表内定選手選考会であることがあまり周知されておらず、JOCに推薦するJeSUのサイトでも今大会の情報はありませんでした。
前回はアジア競技大会でのeスポーツ競技の参加が初めてのこともあり、選考会どころか本大会がいつ行われたかもわからないまま、いつのまにか『ウイニングイレブン』部門で日本チームが優勝した報を聞いた人も少なくはないのではないでしょうか。
それに比べればだいぶ認知されたとは思いますが、もう少し日本代表としてeスポーツ選手が参加することをアピールすべきだと考えます。
杭州大会の次のアジア競技大会は、日本の愛知・名古屋で2026年に開催されます。名古屋大会で、現状よりもeスポーツが周知され、アジア競技大会の注目競技となるために、今大会から知ってもらう動きは必要でしょう。
杭州大会でのeスポーツ競技タイトルは『ストリートファイターV』以外に『Dota2』や『League of Legends』、『Hearthstone』『PUBG Mobile』など、まだまだあります。これらの代表内定選手選考会では、『ストリートファイターV』以上に喧伝し、アジア競技大会におけるeスポーツの注目を集めてほしいところです。
プロゲーマーとよくマッチングする筆者。今回はボンちゃん選手と対戦
さて、『ストリートファイターV』の大会と言えば、筆者の参加ですが、今回も参加してきました。ランクがダイヤモンドに上がってからの初の大会でしたが、初戦は同じくダイヤモンドランクのサガット使い。しかしながら敗北してしまい、ルーザーズではまさかのプロゲーマーであるボンちゃん選手との対戦でした。
ボンちゃん選手はこれまで使っていたサガットやかりん、ナッシュではなく、新キャラのルークを使用。手も足も出ず負けましたが、プロ選手との対戦は記念参加勢としては楽しみの1つです。とはいえ、高確率でプロ選手を引きすぎている気がします。そろそろときど選手と当たる予感がしてきたジャパンオープン2022でした。