2020年11月、渋谷にて、eスポーツを中心とした教育、産業振興、地域創生など、エコシステムとカルチャー創造を目指す「街づくり×eスポーツ」のプロジェクト「ESPORTS BEYOND SHIBUYA」が発足しました。

そのプロジェクト第1弾のイベントとして、11月7日から15日に都市フェス「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2020」を開催。今回は、その一環で11月15日に行われた、「ESPORTS BEYOND SHIBUYA CUP 2020」を取材してきました。

「ESPORTS BEYOND SHIBUYA CUP 2020」の会場は、『リーグ・オブ・レジェンド』の国内プロリーグ「League of Legends Japan League(LJL)」の開催地であるよしもと∞ホール。「トークショー」と「エキシビションマッチ」の2部構成で行われました。

  • ESPORTS BEYOND SHIBUYA

    イベントの会場は、LJLの会場でもあるよしもと∞ホール

eスポーツ×教育をテーマにトークセッションを実施

トークショーでは、LJLのメインMCを務めるよしもとピン芸人のタケトさんが司会を務め、N高等学校副校長、S高等学校校長の吉村総一郎氏と、アドビ 教育市場部マーケティングマネージャーの原渓太氏が登壇しました。

全国高校eスポーツ選手権」や「STAGE:0」など、高校生がeスポーツで活躍する場が増えてきており、さらにN高校はいずれの大会でも上位入賞を果たすなど、すでに強豪校としての風格を持ち合わせています。

アドビは『リーグ・オブ・レジェンド ワイルドリフト』とコラボレーションを行い、学生を対象としたAdobe Students-学生コンテスト-「飛び出せワイリフ」を開催して、アドビ製品を使ったグラフィックデザインやイラストなどの作品を募集しています。

どちらもeスポーツと教育・学生との関わりがあるところ。トークセッションは「eスポーツと教育の関わり」をテーマに進められました。

  • ESPORTS BEYOND SHIBUYA

    「飛び出せワイリフ」は、『リーグ・オブ・レジェンド ワイルドリフト』をモチーフに、アドビ製品でグラフィックデザインやイラストを描いて応募する学生向けコンテスト

N高校はいまや生徒数16,000人を超え、日本一の生徒数を誇る通信制高校です。高校卒業に必要なカリキュラムはもちろんのこと、好きなことをやれる環境が整っていると吉村氏。また、学校内では、「Adobe Creative Cloud」が使えるようになっているとのことです。

N高校は先述した通り、eスポーツにも力を入れていることでも有名。eスポーツ部員は、なんと850人にものぼるそうです。競技性のあるeスポーツにおいて、勝利することは重要ですが、「目的はそこにおいていない」と吉村氏は考えを表します。

「勝つこと以上に、eスポーツを通じて生徒が成長することを目的としています。活動するうえで、さまざまな目標を掲げることが重要で、それはすべての教育に通じるところがあるでしょう。自分でチームを作ったり、勝てるように考えたり、生徒ごとに目標を立ててもらうことを重視しています」(吉村氏)

  • ESPORTS BEYOND SHIBUYA

    N高等学校副校長およびS高等学校校長 吉村総一郎氏

  • ESPORTS BEYOND SHIBUYA

    N高校は「全国高校eスポーツ選手権」や「STAGE:0」において、好成績を残しており、強豪校としても知られています

また、「全国高校eスポーツ選手権」や「STAGE:0」は、すべてチーム戦のタイトルを採用しています。そのため、高校eスポーツでは、他者と関わっていくことが多く、コミュニケーションが重視されます。チーム内で対話することはもちろん、相手チームとの関わりなども重要です。

そのコミュニケーションのうち、他者に伝える手段としてアドビのツールが役立つと原氏は考えます。

「eスポーツをプレイしている生徒は、動画の配信をしていることが多い。動画編集などをするうえで、アフターエフェクトなどアドビのソフトを使用してもらうと、より多くの人に伝えやすくなると思います」(原氏)

  • ESPORTS BEYOND SHIBUYA

    アドビ 教育市場部マーケティングマネージャー 原渓太氏

「高校生eスポーツ大会の課題」というテーマでは、オンライン上でのマナーについて語られました。eスポーツというとやはりゲームで競い合うことがメインですが、教育面ではそれ以上に人間性の構築やネットマナーの向上も重視しています。

高校eスポーツでは、勝負に負けたときも相手チームのプレイを称え、お礼やGG(グッドゲーム)などの声がけをすることを教えているそう。相手に敬意を持って対戦できるように人間性を構築することで、ネット社会でのマナーが自然と身につくようになります。

通信制高校でeスポーツ部が発足する前は、高校に通っていながら、高校の代表として活動することのない生徒がほとんどでした。しかし、高校の看板を背負ってeスポーツ大会に出場することで、高校への帰属意識も高まると言います。それは、通信制高校以外の高校でも同じことが言えるのではないでしょうか。

学校への帰属意識以外にも、部活動は生徒にとって居場所となりうるもの。その意味でも、eスポーツが高校生に与える影響は小さくないでしょう。1時間の短い時間ながら、eスポーツと教育に関するセッションはかなり中身の濃いものとなりました。

エキシビジョンマッチでは高校No.1チームが登場

後半の部は、『リーグ・オブ・レジェンド』を使用したエキシビションマッチです。先だって行われた「STAGE:0」で優勝を果たしたN高校のチーム「KDG N1」と、元プロ選手、現役プロ選手、ストリーマーによる「スペシャル混成チーム」の試合が行われました。

混成チームは、プロゲーミングチーム「Burning Core」で活躍していたRoki選手と、練習生として参加しているAkabuff選手の元プロ選手、プロ候補生が参加。さらに『リーグ・オブ・レジェンド』の配信を行っているストリーマーのしゃるる氏、たぬき忍者氏、らいじん氏といったメンバー構成です。

  • ESPORTS BEYOND SHIBUYA

    KDG N1の面々。左からACCIDENT選手、rre選手、Primo選手、ShakeSpeare選手、violet選手

  • ESPORTS BEYOND SHIBUYA

    プロ&ストリーマー&混成チーム。左かららいじん氏、しゃるる氏、Roki選手、Akabuff選手、たぬき忍者氏

1試合めは、KDG N1対プロ&ストリーマー混成チームの試合です。「STAGE:0」では圧倒的な強さを誇った「KDG N1」チームですが、混成チームに苦戦。序盤からキルを重ねられ、一方的な展開に。特にRoki選手の活躍がめざましく、「KDG N1」チームは次々と倒されていきます。最後の集団戦で「KDG N1」がいいところを見せたものの、混成チームの勝利となりました。

  • ESPORTS BEYOND SHIBUYA

    1試合目で元プロの実力を見せつけたRoki選手

  • ESPORTS BEYOND SHIBUYA

    「KDG N1」で紅一点のShakespeare選手。プロゲーミングチーム「ラスカルジェスター」の練習生としてプロチームに参加している実力派です

その後、1対1、KDG N1と混成チームのシャッフルチームでの対戦などが行われ、イベントは終了しました。

今回は教育の側面が強いイベントでしたが、「ESPORTS BEYOND SHIBUYA」自体は産業振興や地域創生、福祉などの分野についてのシステム形成を目指しているプロジェクトでもあるので、これからどんな活動が行われるか、期待したいところです。