人気オンラインゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』を手掛けるライアットゲームズが、満を持して2020年6月にリリースしたタクティカルFPS『VALORANT』。このVALORANTで日本初のオフライン大会「EDION VALORANT CUP」が、2020年10月2日から4日までの3日間開催されました。

オフラインとはいえ、観客は配信でのみ視聴できる無観客試合。完全なオフラインイベントではありませんでしたが、コロナ禍でオフラインイベントが抑制されていただけに、選手が一堂に介し、対戦する様子を観られたことだけでも十分な価値があったといえます。『VALORANT』のeスポーツイベントがいよいよ本格始動した印象を受けました。

「EDION VALORANT CUP」の冠スポンサーは家電量販店「EDION(エディオン)」。EDIONはここ数年、eスポーツ事業に力を入れており、プロゲーミングチーム「DetonatioN Gaming」のチームスポンサーになったり、各店舗にeスポーツコーナーを常設したり、ゲーミングスタジオを設置したりと活発的に動いています。

そこで、eスポーツに力を入れる理由や、『VALORANT』イベントのスポンサーに就任した狙いなどについて、EDIONでeスポーツ事業を統括している営業本部 商品統括部 情報家電商品部長 田坂寛氏に話を聞きました。

  • EDION VALORANT CUP

    EDIONでeスポーツ事業を統括している営業本部 商品統括部 情報家電商品部長 田坂寛氏

――EDION VALORANT CUPを開催したきっかけを教えてください。

田坂寛氏(以下、田坂):EDIONは、家電量販店としてPCの販売を行っていますが、今後PCの需要が落ちたときにどうすべきか考えたとき、eスポーツが視野に入りました。

eスポーツを支援することで、PC市場が活性化すればいいなと。そこで、まずはプロゲーミングチーム「DetonatioN Gaming」のスポンサーになることから始めました。続いて、店舗にeスポーツコーナーを設置。「DetonatioN Gaming」にも協力していただき、コラボPCなどを展開しました。

そのように、微力ながらeスポーツを支援してきたと思っていますが、それでもやはり大きな大会を開いてこそ、eスポーツの力になれるのではないかと、ずっと思っていたのです。

そこで、「DetonatioN Gaming」とeスポーツイベント運営会社のRIZeSTと大会開催についての相談をしたところ、今後伸びると思われる『VALORANT』が最適だと判断し、ライアットゲームズに話を持ちかけました。

――なぜ『VALORANT』を選ばれたのでしょうか。

田坂:大会の打診は『VALORANT』がローンチされる前から行っていました。『リーグ・オブ・レジェンド』の10周年イベントで『VALORANT』がリリースされることは知っていましたし、人気が出ると見込んでいました。あとは、PCゲームである点ですね。先ほどもお伝えした通り、eスポーツ自体を支援したい気持ちももちろんありますが、それと同じくらいPCを売っていきたいと。なので、PCゲームであることが重要でした。

――「EDION VALORANT CUP」を終えて、感想を教えてください。

田坂:個人的には、100点満点に近い内容の大会だと思っています。ゲストには手越祐也さんと伊織もえさんに来てもらいましたけど、FPSに造詣が深く、初めてのオフラインイベントで緊張しているチームを巻き込んで楽しく、盛り上げてくれました。

観ている人たちからの評判も概ね良かったので安心しています。ただ、『VALORANT』のルールがイマイチ分からない人のための説明が足りなかったかなという反省点はありました。

「EDION VALORANT CUP」は、大会名に弊社が冠として入っていますし、継続して大会をしていかないといけないと思っています。文化を広げる意味で責任があると。今後のことは未定ですが、こういった選抜されたプロチームによるトーナメント戦だけでなく、誰でも参加できるオープン大会もやってみたいですね。そのときも、できたらオフラインで開催したいです。観客も入れて。

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    「EDION VALORANT CUP」の会場

  • EDION VALORANT CUP

    選手にとっても『VALORANT』オフライン大会は初

――今回は大会のスポンサーを初めて行ったわけですが、チームスポンサーとの違いはありますか。

田坂:大会は注目度は、やはり高いですね。ただし、それ1回で終わってしまいます。チームスポンサーの場合は契約期間ずっとユニフォームにロゴを入れていただけますし、さまざまな展開もできます。豊田本店では、『リーグ・オブ・レジェンド』の世界大会から帰国したメンバーを集めて、凱旋ファンミーティングも行いました。郊外の店舗で実施したのにも関わらず、300人以上ものファンに集まっていただけて、eスポーツの力を再確認できましたね。

あと、スポンサーとしては2019年4月から東海テレビ、関西テレビ、テレビ新広島で放映している「eスポLOVE」という足立梨花さん出演のeスポーツ番組にも協賛しています。

広島では、広島出身のガチくん選手と「DetonatioN Gaming」の板橋ザンギエフ選手によるゲームイベントを行ったり、高校生向けeスポーツ大会「STAGE:0」に協賛したりしました。

コロナ禍でなければ、大型店舗に設置したゲーミングスタジオを使って、店頭イベントをもっとやりたかったですね。

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    「DetonatioN Gaming」のファンミーティングの様子

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    ファンミーティングには300人以上が参加。配信の同時動画視聴者数は3,000~4,000人を記録したという

――これだけ多くのeスポーツイベント、チームに出資しているわけですが、その結果として関連商品の売上げは伸びているのでしょうか。

田坂:お陰様で、売上げは前年比200%を推移しています。ヘッドセットやキーボード、マウスなどの売れ行きが好調。ゲーミングPCについては、都市部では対応してくれる店が多いのですが、郊外では「ゲーミングPCって何?」というお客さまも多く、対応してくれる店もほとんどありません。

EDIONは郊外店でもゲーミングPCのコーナーがあったり、ゲーミングPCに強い店員がいたりすることが認知され始めています。郊外の人で、ゲーミングPCのことを知りたいのであればEDIONというイメージが定着しつつありますし、ゲーミングスタジオやゲーミングPCの特設売り場を設置した店舗は、現在約60店舗になりました。

小売業としては売上げがないと困りますが、それでもeスポーツに関しては文化的、社会的に広めて行きたいという理念がありますので、まだ、そこまで売上げの増減でどうこういう段階ではないでしょう。

――今後もeスポーツに関わっていくと思いますが、どういった展開を予定していますでしょうか。

田坂:eスポーツはまだまだこれからの段階で、今後どうなっていくかは不透明。しかしだからこそ、eスポーツ発展のために各企業が一本化して、やっていきたいですね。

EDION単体での動きとしては、「DetonatioN Gaming」とコラボをして物販をやっていきたいと思っています。今回の「EDION VALORANT CUP」をはじめ、さまざまなeスポーツ大会を開いて、eスポーツの認知を広げていきたいと考えています。

最初は各店舗のゲーミングスタジオからだと思いますが、ゆくゆくはEDIONアリーナで大会をしてみたいと考えています。あとは、先ほどもお話ししましたが、プロ選手、プロチームだけでなく、誰でも参加できる大会も考えていきたいですね。

EDIONからでもなんでもいいのでとにかくeスポーツを知っていただきたい。EDIONのTwitterアカウントには、エディオンeスポーツがあり、そこでは、eスポーツ関連の情報を発信していますので、そちらもぜひチェックしてください。

――ありがとうございました!