2019年10月22日、東京・表参道にある「スペース オー」にて、「ブロスタ日本一決定戦」が開催されました。『ブロスタ』は『クラッシュ・オブ・クラン』や『クラッシュロワイヤル』を手がけるSupercellが、eスポーツ用に開発したモバイル向けオンラインストラテジーゲーム。個性豊かなキャラクターを使って、さまざまなルールのステージで試合を行います。

『ブロスタ』は2018年末にリリースされたばかりのタイトルなので、今回の日本一決定戦が初の全国規模の公式大会。優勝者は11月に韓国で開催される「世界一決定戦」への出場権が与えられます。

大会出場チームは、北海道・東北予選、中部(東海)予選、近畿予選、中部(北陸)予選、九州・沖縄予選、中国・四国予選、関東予選の7地域を勝ち抜いた9チーム(近畿と関東のみ2チーム選出)と、オンライン予選を勝ち抜いた3チーム。4つのプールに分かれて予選を実施し、シード権を決めたうえで本選のトーナメントを行いました。

  • ブロスタ日本一決定戦の様子。1チーム3人の構成です。ちなみに、今回大会で使用された端末は「AQUOS R3」でした

  • 実況の柴田将平アナウンサー(左)、解説の百姓氏(中央)、ゲストのドズル氏(右)

  • 地方予選やオンライン予選を勝ち抜き、日本一決定戦へ進出した12チーム

大会のレギュレーションは総合力が問われる内容

トーナメントのルールは、1回戦が「賞金稼ぎステージ」のBO3、2回戦が「強奪」のBO3、準決勝が「制圧」のBO3、決勝が「ブロストライカー」のBO5です。賞金稼ぎステージは、相手プレイヤーを倒して「☆(星)」を獲得するモード。タイムアップ時に星の多いチームが勝利です。倒すと相手の持っている星をすべて獲得できるので、最後まで逆転のチャンスがあります。

強奪ステージは、お互いのエリアにある金庫の破壊を目指すルール。自陣を防衛しつつ、敵陣へ攻撃にいくMOBA的なゲームシステムです。時間内に破壊できなければ、金庫により多くのダメージを与えたチームが勝利します。

制圧ステージは、ランダムに出現するボルトを集めてロボットを生産し、そのロボットが相手エリアの金庫を破壊すると勝利というモード。これも時間内に破壊できない場合は金庫に与えたダメージで勝敗が決まります。

ブロストライカーステージは、3on3のサッカー風ゲーム。ボールを相手ゴールに叩き込むと得点が得られ、先に2点先取したチームの勝利です。時間内に決着つかない場合は、延長戦に突入。ステージ上の障害物がなくなり、先に点を取ったチームが勝利します。

  • 各ステージには複数のマップが用意されており、その選択権はじゃんけんで決定。負けたチームは1つだけ「拒否マップ」を決めます。2試合目以降は負けたチームに選択権が移り、勝ったチームは拒否するマップを選びます

  • 1回戦から決勝戦まで違うステージが採用されるため、『ブロスタ』の総合力が問われます

試合はシード権を獲得したチームが圧倒的に有利かと思われましたが、シード権を獲得した4チーム中3チームが2回戦で敗退する波乱の展開。ブロスタランキング世界1位を獲得した経験があることから、優勝候補と目されていたYouTuberのyamada選手率いる「Buddha Gaming」も2回戦で敗退してしまいます。

決勝では九州・沖縄エリアの「あにまるちゃんぷるー」と中部(北陸)エリアの「あどみらーず」の対戦でしたが、お互いに譲らず、5戦目まで突入。最終試合でも延長までもつれ込む接戦でした。最終的に優勝したのはあにまるちゃんぷるーでしたが、どこが優勝してもおかしくないほど実力は拮抗していたといえるでしょう。

  • 優勝したのは九州・沖縄エリア代表の「あにまるちゃんぷるー」

世界で唯一の共催方式を採用した日本一決定戦

eスポーツはプレイヤーもファンも若年層が多いと言われていますが、とりわけ『ブロスタ』はその傾向が顕著でした。参加した選手のほとんどが中高生で、社会人はごくわずか。2018年末にローンチされたばかりのタイトルで勝ち残れるのは、若さゆえの対応力と新しいタイトルに手を出せるフレキシブルさを兼ね備えているからかもしれません。もちろん、実力もあるので、世界一決定戦でも日本は上位に食い込むのではないかと目されています。

また、今回の大会で注目すべき点は、『ブロスタ』の公式大会でありながら、Supercellのみの運営ではなく、RAGEの冠をかかげたCyberEとの共催だったこと。これまでeスポーツの公式大会はIPホルダーの開催がほとんどでした。もちろん、IPホルダーが主催しない大会もありますが、ほとんど公式大会ではありません。

今回の大会により、いよいよ公式大会もeスポーツ専門の運営会社が開催できることを示したといえるでしょう。IPホルダーとしても、大会運営による負担が軽減しますし、運営会社も公式大会を扱うことで、大会のバリューを上げられます。選手やファンにとっても、参加や観戦の機会が増えるかもしれません。

Supercellの担当者に話を聞いたところ、『ブロスタ』の世界一決定戦へ出場する8エリアでは、「世界一決定戦出場をかけた大会」を、RAGEのようにSupercell以外と共催したところは日本以外ないそうです。「日本のeスポーツは世界から出遅れている」と言われ続けていますが、今回の『ブロスタ』の大会に関しては、1つ抜きん出たといえるのではないでしょうか。

そして、もう1つ今回の大会で気になったのが会場です。これまでのeスポーツ大会は、大きいところで幕張メッセや東京ビッグサイトなど、小さいところでは貸し会議室のイベントホールなどで開催されてきましたが、今回は表参道ヒルズのホール。若者でにぎわうこの場所でのeスポーツイベントは、数年前では考えられませんでした。

会場は立ち見を含む250名以上の観客で大盛況。その様子からは、eスポーツが世間に、特に若者に浸透しはじめていると感じました。まだまだ「定着した」といえるほどの安定感はありませんが、着実に前に進んでいると実感できる大会でした。

  • 会場となった表参道ヒルズの「スペース オー」

  • 250人の観客が訪れ、試合の様子に一喜一憂していました